46 / 72
第46話 涙の理由
しおりを挟む
「秋川さんが泣いてるって言ってたし」
姫嶋さんが泣いてないって言ってるんだから、これ以上追求しちゃだめですよ。
「泣いてないもん」
「嘘だぁ、泣いてたろ。天成は騙せても俺は騙されないぜ」
バカ仁君、それ以上何も言わないで頂きたい。
「バカ仁君、泣いてないってば。天成君が勘違いするじゃない」
「そ、そうですよ、本人が泣いていないって言うのなら、それは涙の跡じゃないです」
「え? 涙のあとなんか付いてないよ」
姫嶋さんは慌ててハンカチを取り出し、目元を拭いた。僕もやってしまったかもしれない。デリカシーの無い男はイケメンでもモテないって聞いた。僕にはまったく関係ない話だけど、姫嶋さんの味方でいたいから言葉選びを間違えた。
「やっぱり泣いてんじゃん」
「泣いてないし、天成君も変なこと言わないでよ」
「で、でも、泣きたいなら泣いてもいいと思います。泣きたいときに泣けないとダメだと思います。じ、仁君も人の涙をからかったらダメだと思います。涙は心のデトックスです」
僕は何を言っているのだろうか、姫嶋さんに嫌われたくない一心で出た言葉だけど、自分でも理解不能だ。恥ずかしい。
「天成君……」
気のせいだろうか、姫嶋さんの瞳がキラキラと輝いているように見える。
「なかなか良いことを言ったな天成、すまないアクア、お前は泣いてなんかいない。俺が悪かった、勘違いだ。許してくれ」
「そんな謝られても、泣いてないから。もう、からかうのは止めてよ2人とも」
「か、からかってはいないです」
「俺もだ」
「そう? じゃあ、なんか知らないけど心配して来てくれたみたいだから。許してあげるとしますか」
「許すってことは、やっぱり泣いてたんじゃん」
「もう、怒るよ?」
「姫嶋さん、仁君が今度からかったら退部させちゃいましょう」
「いいねぇ、そうしよう」
「お、なんだよ。俺だけ悪者かよ」
「追放だー追放だー」
「なんだよ追放って」
姫嶋さん、追放系のアニメ観たんだな。
「ダメですよ姫嶋さん、仁君を追放しちゃったら僕らが、ザマぁされますから」
「あっ、そっか、そっか」
「何をコソコソ言ってんだー。追放とかザマぁとか意味が分からん」
「仁君、異世界のことに興味を持てば、いづれ分かります。ねぇ天成君」
「はい」
「クソー仲間外れは気に食わないぜ。さっさと教室戻ってRIA部の活動しようぜ、異世界のなんたらを教えてくれるんだろ?」
「さんせー」
姫嶋さんはとても楽しそうだ。
良かった。
涙の理由は気になるけど、本人が話したくないならそれでいいと思う。それよりも楽しい時間を作れればいいんだ。嫌なことは捨ててしまえばいい。
僕らは秋川の待っていた教室に戻り、コデックス・アナザーワールドを開きながら、異世界の色々な妄想を語り合った。
姫嶋さんが泣いてないって言ってるんだから、これ以上追求しちゃだめですよ。
「泣いてないもん」
「嘘だぁ、泣いてたろ。天成は騙せても俺は騙されないぜ」
バカ仁君、それ以上何も言わないで頂きたい。
「バカ仁君、泣いてないってば。天成君が勘違いするじゃない」
「そ、そうですよ、本人が泣いていないって言うのなら、それは涙の跡じゃないです」
「え? 涙のあとなんか付いてないよ」
姫嶋さんは慌ててハンカチを取り出し、目元を拭いた。僕もやってしまったかもしれない。デリカシーの無い男はイケメンでもモテないって聞いた。僕にはまったく関係ない話だけど、姫嶋さんの味方でいたいから言葉選びを間違えた。
「やっぱり泣いてんじゃん」
「泣いてないし、天成君も変なこと言わないでよ」
「で、でも、泣きたいなら泣いてもいいと思います。泣きたいときに泣けないとダメだと思います。じ、仁君も人の涙をからかったらダメだと思います。涙は心のデトックスです」
僕は何を言っているのだろうか、姫嶋さんに嫌われたくない一心で出た言葉だけど、自分でも理解不能だ。恥ずかしい。
「天成君……」
気のせいだろうか、姫嶋さんの瞳がキラキラと輝いているように見える。
「なかなか良いことを言ったな天成、すまないアクア、お前は泣いてなんかいない。俺が悪かった、勘違いだ。許してくれ」
「そんな謝られても、泣いてないから。もう、からかうのは止めてよ2人とも」
「か、からかってはいないです」
「俺もだ」
「そう? じゃあ、なんか知らないけど心配して来てくれたみたいだから。許してあげるとしますか」
「許すってことは、やっぱり泣いてたんじゃん」
「もう、怒るよ?」
「姫嶋さん、仁君が今度からかったら退部させちゃいましょう」
「いいねぇ、そうしよう」
「お、なんだよ。俺だけ悪者かよ」
「追放だー追放だー」
「なんだよ追放って」
姫嶋さん、追放系のアニメ観たんだな。
「ダメですよ姫嶋さん、仁君を追放しちゃったら僕らが、ザマぁされますから」
「あっ、そっか、そっか」
「何をコソコソ言ってんだー。追放とかザマぁとか意味が分からん」
「仁君、異世界のことに興味を持てば、いづれ分かります。ねぇ天成君」
「はい」
「クソー仲間外れは気に食わないぜ。さっさと教室戻ってRIA部の活動しようぜ、異世界のなんたらを教えてくれるんだろ?」
「さんせー」
姫嶋さんはとても楽しそうだ。
良かった。
涙の理由は気になるけど、本人が話したくないならそれでいいと思う。それよりも楽しい時間を作れればいいんだ。嫌なことは捨ててしまえばいい。
僕らは秋川の待っていた教室に戻り、コデックス・アナザーワールドを開きながら、異世界の色々な妄想を語り合った。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
病弱が転生 ~やっぱり体力は無いけれど知識だけは豊富です~
於田縫紀
ファンタジー
ここは魔法がある世界。ただし各人がそれぞれ遺伝で受け継いだ魔法や日常生活に使える魔法を持っている。商家の次男に生まれた俺が受け継いだのは鑑定魔法、商売で使うにはいいが今一つさえない魔法だ。
しかし流行風邪で寝込んだ俺は前世の記憶を思い出す。病弱で病院からほとんど出る事無く日々を送っていた頃の記憶と、動けないかわりにネットや読書で知識を詰め込んだ知識を。
そしてある日、白い花を見て鑑定した事で、俺は前世の知識を使ってお金を稼げそうな事に気付いた。ならば今のぱっとしない暮らしをもっと豊かにしよう。俺は親友のシンハ君と挑戦を開始した。
対人戦闘ほぼ無し、知識チート系学園ものです。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
魔境に捨てられたけどめげずに生きていきます
ツバキ
ファンタジー
貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう
どんどん更新していきます。
ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。
しっかり者のエルフ妻と行く、三十路半オッサン勇者の成り上がり冒険記
スィグトーネ
ファンタジー
ワンルームの安アパートに住み、非正規で給料は少なく、彼女いない歴35年=実年齢。
そんな負け組を絵にかいたような青年【海渡麒喜(かいときき)】は、仕事を終えてぐっすりと眠っていた。
まどろみの中を意識が彷徨うなか、女性の声が聞こえてくる。
全身からは、滝のような汗が流れていたが、彼はまだ自分の身に起こっている危機を知らない。
間もなく彼は金縛りに遭うと……その後の人生を大きく変えようとしていた。
※この物語の挿絵は【AIイラスト】さんで作成したモノを使っています
※この物語は、暴力的・性的な表現が含まれています。特に外出先等でご覧になる場合は、ご注意頂きますようお願い致します。
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる