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第10話 転生用トラック
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僕は自転車で家を出た。
先週と同じ様な夕日は、その赤さを失いかけている。人が憂い、物思いに沈むにはうってつけな時間だろう。
待っててくれ姫嶋さん、早まるなよ。
「おーーーーい、天成くーーーーん」
どうやら取り越し苦労だったようだ、姫嶋さんは元気そうに手を振っている。
今からトラックに飛び込む様な元気さではないのは確かだ。
嘘か? 嘘をついて僕を呼び出したのか?
それはそれで嬉しいが。
「おーい、じゃないですよ、なにやってるんですか姫嶋さん」
「大発見だよ天成くん、商業複合施設であるここルルポートの配送トラックがね、転生用トラックだったんだ」
転生用トラック? 凄いワードが来たぞ、こんなの僕には思いつかない、さっそく投稿小説に使わせてもらおう。て言ってる場合じゃない。
「姫嶋さん、もしかしてそのトラックに轢かれれば異世界転生できるって言いたい訳じゃないないよね」
「さすが転生博士、いや天成博士!」
微妙なイントネーションの言い直しは止めてもらいたい。
「絶対に無理ですから、変なことで呼び出さないで下さい」
「変じゃないよ、私は大真面目だから」
姫嶋さんが真面目なのは知っているさ。友達との会話も、授業中も、給食時間だって、いつも一生懸命だ。
だけどこれは真面目じゃない。
「僕をからかうのが楽しいのは知ってるけど、ちょっと意味が分からないです」
根暗だし友達いないし無口だし、そんな僕をからかって楽しんでいる奴なんて五万とみてきたし、五万は言い過ぎだけど、そんなのは慣れっこだ。けど流石にこれは応えるかな。
「からかってないもん」
口を尖らせる姫嶋さん、怒っているのか? 怒りたいのはこっちなのだけども。
「これ見てよ」
姫嶋さんは携帯の画面を見せてきた。
そこにはトラックの絵がある。どうやらアニメの一場面をカメラで撮った様だ。
「で、あれ見て」
姫嶋さんが指差した方向には、ルルポートって大きなステッカーが貼られたトラックが荷下ろしをしていた。
「完全に一致ね」
自慢げな姫嶋さんだが、どう見てもヒノノニトンである。
トラックなんてどれもヒノノニトンだろうと思っている僕には写真のトラック絵もヒノノニトンに見える。
「完全に一致だね」
「でしょう、やっぱりなー、良かったよやっぱり天成くん呼んで正解だった」
すごく嬉しそうな姫嶋さんを見ていると、なんだか僕も嬉しい。
「それで、そのアニメのトラックと同じだから、それに轢かれれば転生できるのでは? って答えを出したの?」
「うん」
「うん、って」
おかしいな、姫嶋さんは勉強もできて成績も上位だぞ、やっぱり僕はからかわれているんじゃないのか?
「前にも言ったけど、トラックに轢かれたからって転生できるとは限らないですよ? ちょっと考えれば分かると思いますけど」
「前にも言ったけど、転生できない保証はないからね、やってみないと分からないでしょ」
「なんで……」
なんでそんなに転生したいのかと聞こうと思ったが、同じ轍は踏まない。これはなんで死にたいのか聞くことと同義だ。
「なんでそんなに異世界が好きなの?」
だから趣向を変えて聞くことにした。
姫嶋さんは水を得た魚の様に、表情が明るくなった。
僕はなにかのスイッチを押したのかもしれない。
先週と同じ様な夕日は、その赤さを失いかけている。人が憂い、物思いに沈むにはうってつけな時間だろう。
待っててくれ姫嶋さん、早まるなよ。
「おーーーーい、天成くーーーーん」
どうやら取り越し苦労だったようだ、姫嶋さんは元気そうに手を振っている。
今からトラックに飛び込む様な元気さではないのは確かだ。
嘘か? 嘘をついて僕を呼び出したのか?
それはそれで嬉しいが。
「おーい、じゃないですよ、なにやってるんですか姫嶋さん」
「大発見だよ天成くん、商業複合施設であるここルルポートの配送トラックがね、転生用トラックだったんだ」
転生用トラック? 凄いワードが来たぞ、こんなの僕には思いつかない、さっそく投稿小説に使わせてもらおう。て言ってる場合じゃない。
「姫嶋さん、もしかしてそのトラックに轢かれれば異世界転生できるって言いたい訳じゃないないよね」
「さすが転生博士、いや天成博士!」
微妙なイントネーションの言い直しは止めてもらいたい。
「絶対に無理ですから、変なことで呼び出さないで下さい」
「変じゃないよ、私は大真面目だから」
姫嶋さんが真面目なのは知っているさ。友達との会話も、授業中も、給食時間だって、いつも一生懸命だ。
だけどこれは真面目じゃない。
「僕をからかうのが楽しいのは知ってるけど、ちょっと意味が分からないです」
根暗だし友達いないし無口だし、そんな僕をからかって楽しんでいる奴なんて五万とみてきたし、五万は言い過ぎだけど、そんなのは慣れっこだ。けど流石にこれは応えるかな。
「からかってないもん」
口を尖らせる姫嶋さん、怒っているのか? 怒りたいのはこっちなのだけども。
「これ見てよ」
姫嶋さんは携帯の画面を見せてきた。
そこにはトラックの絵がある。どうやらアニメの一場面をカメラで撮った様だ。
「で、あれ見て」
姫嶋さんが指差した方向には、ルルポートって大きなステッカーが貼られたトラックが荷下ろしをしていた。
「完全に一致ね」
自慢げな姫嶋さんだが、どう見てもヒノノニトンである。
トラックなんてどれもヒノノニトンだろうと思っている僕には写真のトラック絵もヒノノニトンに見える。
「完全に一致だね」
「でしょう、やっぱりなー、良かったよやっぱり天成くん呼んで正解だった」
すごく嬉しそうな姫嶋さんを見ていると、なんだか僕も嬉しい。
「それで、そのアニメのトラックと同じだから、それに轢かれれば転生できるのでは? って答えを出したの?」
「うん」
「うん、って」
おかしいな、姫嶋さんは勉強もできて成績も上位だぞ、やっぱり僕はからかわれているんじゃないのか?
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「前にも言ったけど、転生できない保証はないからね、やってみないと分からないでしょ」
「なんで……」
なんでそんなに転生したいのかと聞こうと思ったが、同じ轍は踏まない。これはなんで死にたいのか聞くことと同義だ。
「なんでそんなに異世界が好きなの?」
だから趣向を変えて聞くことにした。
姫嶋さんは水を得た魚の様に、表情が明るくなった。
僕はなにかのスイッチを押したのかもしれない。
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