56 / 81
ネット遠足は終わらない④
しおりを挟む
「我、欲する、厳酷なる地維より出づる生命の息吹を。我、問う、我が手に添えられた供物への移管を。我が冀求こそ全て、我が冀望こそ起源、今此処に撥弦せよ、セラフィックヒールッ」
どこからともなく響いたその声の後、淡い光がトウカのアバターを包み、赤く点滅していた体力ゲージが5分の1程回復し、緑に変わった。
「これは回復弾、初期装備だけど助かったわ、でも一体誰が」
ゲームだから別に体力ゲージがミリになっても普通に動けてはいたが、ハレオの悲壮感たっぷりのボイチャに乗っかって動けないフリをしていたトウカ、辺りを見回し再び剣を握る。
「我、欲する、厳酷なる地維より出づる生命の息吹を。我、問う、我が手に添えられた供物への移管を。我が冀求こそ全て、我が冀望こそ起源、今此処に撥弦せよ、セラフィックヒールッ」
再び聞こえた言葉と光で、トウカの体力は半分近く回復。
「ちょっとスミレちゃん、回復弾撃つだけなのに、そんなセリフ必要?」
「なに言ってるのよボタンちゃん、これはBL転生ボーイジャー魔法学校の有名な魔法詠唱セリフよ、こういうのは雰囲気が大事なの」
「魔法って言ってるけど、その手に持ってる武器、完全に銃じゃん近代兵器じゃん、まぁ弾を当てて体力回復させる時点で意味不明だけど」
スミレの胸の大きな女のアバターと、ボタンの小人女のアバターが、ハレオの方へ近付く。
「スミレさん、ボタンさん、来てくれたのですね」
「その可愛らしいアバターは、スミレとボタンか助かったよ、でもどうして助けに?」
スミレとボタンのアバターは、決めポーズのエモートを駆使してハレオのアバターの正面に立った。ハレオに可愛らしいと言われたことが嬉しいらしい。
「“トウカー”って、VRヘッドセット越し、いや、あんなに離れた部屋からでも聞こえるくらいの叫び声だもん、ピンチだって分かるよ」
「……すまん、あまりにもゲーム画面がリアルなもんだから、つい没入してしまった」
「あはは、ハレオくんらしいね」
スミレの声に、ハレオのアバターは微動だにしなかった。だがボタンには、聞こえてくるハレオの声色から、照れて頭を掻いている様子が手に取るように分かった。
「スミレさんとボタンさんは、もうレベル上がったんですね」
「私のジョブは遠隔得意なガンナーだからね、低レベル帯なら余裕だわ。盾ジョブのボタンちゃんとの相性もバッチシだったし」
「スミレちゃん、私を囮にして後ろから撃ってるだけなんだもん」
「流石ですね2人とも」
「トウカちゃん、いえトウカ師匠のアドバイスのお陰ですよ」
「このまま私ら2人は援護に回るから、ちゃちゃっとレベル上げちゃってよ」
「助かるよ」
ハレオは、再び剣を握ると、背中を向けてモンスターに切りかかった。
「トウカちゃん、ハレオくん、なんか元気そうだね」
「はい、脈ありです。レベルが上がったらトレインの巻き添えを回避する為に、あの丘まで行きましょう、そうすればモンスター群のターゲットも切れるハズです」
「了解です師匠、さぁガンガン撃つわよ~ガンナーだけにねっ」
「ボタンちゃん、はり切るのはいいけどギャグ寒いし、あと私たちがモンスター倒しちゃったらハレオくんに経験値入らないからね」
「し、知ってるし、援護するし」
メンター達により、次々に送り込まれるモンスターは、このゲームを初めてプレイする生徒のアバターを蹂躙していった。
後に【血の遠足】と呼ばれることになるネット遠足は、こうして始まったのである。
どこからともなく響いたその声の後、淡い光がトウカのアバターを包み、赤く点滅していた体力ゲージが5分の1程回復し、緑に変わった。
「これは回復弾、初期装備だけど助かったわ、でも一体誰が」
ゲームだから別に体力ゲージがミリになっても普通に動けてはいたが、ハレオの悲壮感たっぷりのボイチャに乗っかって動けないフリをしていたトウカ、辺りを見回し再び剣を握る。
「我、欲する、厳酷なる地維より出づる生命の息吹を。我、問う、我が手に添えられた供物への移管を。我が冀求こそ全て、我が冀望こそ起源、今此処に撥弦せよ、セラフィックヒールッ」
再び聞こえた言葉と光で、トウカの体力は半分近く回復。
「ちょっとスミレちゃん、回復弾撃つだけなのに、そんなセリフ必要?」
「なに言ってるのよボタンちゃん、これはBL転生ボーイジャー魔法学校の有名な魔法詠唱セリフよ、こういうのは雰囲気が大事なの」
「魔法って言ってるけど、その手に持ってる武器、完全に銃じゃん近代兵器じゃん、まぁ弾を当てて体力回復させる時点で意味不明だけど」
スミレの胸の大きな女のアバターと、ボタンの小人女のアバターが、ハレオの方へ近付く。
「スミレさん、ボタンさん、来てくれたのですね」
「その可愛らしいアバターは、スミレとボタンか助かったよ、でもどうして助けに?」
スミレとボタンのアバターは、決めポーズのエモートを駆使してハレオのアバターの正面に立った。ハレオに可愛らしいと言われたことが嬉しいらしい。
「“トウカー”って、VRヘッドセット越し、いや、あんなに離れた部屋からでも聞こえるくらいの叫び声だもん、ピンチだって分かるよ」
「……すまん、あまりにもゲーム画面がリアルなもんだから、つい没入してしまった」
「あはは、ハレオくんらしいね」
スミレの声に、ハレオのアバターは微動だにしなかった。だがボタンには、聞こえてくるハレオの声色から、照れて頭を掻いている様子が手に取るように分かった。
「スミレさんとボタンさんは、もうレベル上がったんですね」
「私のジョブは遠隔得意なガンナーだからね、低レベル帯なら余裕だわ。盾ジョブのボタンちゃんとの相性もバッチシだったし」
「スミレちゃん、私を囮にして後ろから撃ってるだけなんだもん」
「流石ですね2人とも」
「トウカちゃん、いえトウカ師匠のアドバイスのお陰ですよ」
「このまま私ら2人は援護に回るから、ちゃちゃっとレベル上げちゃってよ」
「助かるよ」
ハレオは、再び剣を握ると、背中を向けてモンスターに切りかかった。
「トウカちゃん、ハレオくん、なんか元気そうだね」
「はい、脈ありです。レベルが上がったらトレインの巻き添えを回避する為に、あの丘まで行きましょう、そうすればモンスター群のターゲットも切れるハズです」
「了解です師匠、さぁガンガン撃つわよ~ガンナーだけにねっ」
「ボタンちゃん、はり切るのはいいけどギャグ寒いし、あと私たちがモンスター倒しちゃったらハレオくんに経験値入らないからね」
「し、知ってるし、援護するし」
メンター達により、次々に送り込まれるモンスターは、このゲームを初めてプレイする生徒のアバターを蹂躙していった。
後に【血の遠足】と呼ばれることになるネット遠足は、こうして始まったのである。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
校長先生の話が長い、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。
学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。
とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。
寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ?
なぜ女子だけが前列に集められるのか?
そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。
新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。
あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。
新訳 軽装歩兵アランR(Re:boot)
たくp
キャラ文芸
1918年、第一次世界大戦終戦前のフランス・ソンム地方の駐屯地で最新兵器『機械人形(マシンドール)』がUE(アンノウンエネミー)によって強奪されてしまう。
それから1年後の1919年、第一次大戦終結後のヴェルサイユ条約締結とは程遠い荒野を、軽装歩兵アラン・バイエルは駆け抜ける。
アラン・バイエル
元ジャン・クロード軽装歩兵小隊の一等兵、右肩の軽傷により戦後に除隊、表向きはマモー商会の商人を務めつつ、裏では軽装歩兵としてUEを追う。
武装は対戦車ライフル、手りゅう弾、ガトリングガン『ジョワユーズ』
デスカ
貴族院出身の情報将校で大佐、アランを雇い、対UE同盟を締結する。
貴族にしては軽いノリの人物で、誰にでも分け隔てなく接する珍しい人物。
エンフィールドリボルバーを携帯している。
ハバナイスデイズ~きっと完璧には勝てない~
415
ファンタジー
「ゆりかごから墓場まで。この世にあるものなんでもござれの『岩戸屋』店主、平坂ナギヨシです。冷やかしですか?それとも……ご依頼でしょうか?」
普遍と異変が交差する混沌都市『露希』 。
何でも屋『岩戸屋』を構える三十路の男、平坂ナギヨシは、武市ケンスケ、ニィナと今日も奔走する。
死にたがりの男が織り成すドタバタバトルコメディ。素敵な日々が今始まる……かもしれない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる