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アイドル声優は気付いてる⑦
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もっともらしいことを口にする大人なんて必要ない。
自分達の居場所は自分達で守る。
ハレオの家は私達の楽園なのだから。
トウカ、スミレ、ボタンの意見は一致していた。
ならば、目的も同じ、あとは手段。
どうやってユウをハレオの家から追い出すか。
トウカは「お兄ちゃんは疲れているみたいだから家で休んでて」と、帰宅を促す。
ハレオは少し抵抗したが、宝くじの事を知っているトウカの、その自信に満ちた表情に安堵し帰路に就く。
「で?どうするの?」
食後のコーヒーを囲みながらスミレが切り出す。
「あの感じだと、すぐには出て行かないと思います。ここはジワジワと追い込んで自然に私達の家から出たくなる様な作戦を練りましょう」
トウカは前回の教訓からミルクとシロップを多めに入れ、チビチビと苦手なコーヒーを飲みながら言った。
「私達の家って……」
蚊帳の外のボタンは、納得がいかなかったが、ゆくゆくは自分もと、思う気持ちが強く出て続ける。
「じゃあ、最初は無視しましょう。何を言われても無視、悔しいけど、あの話術には敵わない、だったら呆れるほど無視するの」
「「小学生かっ」」とボタンに突っ込みたくなったトウカとスミレだったが、あながち間違っていない気がして口を開かなかった。
「そうだね、肉親でもないし知り合いでもないから無視するのは簡単だと思うけど、ハレオはどうだろう、案外押しに弱いとこあるからな」
「そうだね、ハレオくんおっぱい大きい人に弱いからね」
「「……」」
お前を無視してやろうか、と思った胸の小さな2人。
「お兄ちゃんのことを心配して押し掛けてきたのだから、大人が居なくても大丈夫だと思わせれば出て行くのかも」
「なるほど、ハレオくんは、ずっと一人暮らしで、料理から掃除まで家事全般を完璧に熟す超人だから、それを知らしめれば出て行くのも早いわね」
「うーん、でも昔からの知り合いみたいだし、ハレオの完璧超人っぷりはもう知ってる可能性もあるよ」
「「確かに」」
同時に考え込む3人。
「あっハイ」
トウカが大きく手を挙げた。
「じゃあ、お兄ちゃんの傍に、素敵な相方が居ればいいんじゃない?あの人よりもずっとお兄ちゃんのことを心配してて大人な感じで、身の回りの世話をしっかり見てくれる人」
「「それって……」」
「そうね、お兄ちゃんの奥さんみたいな人」
「奥さん……彼女を飛び越して、奥さん……」
ボタンは涎が零れていないか心配して口に手をあてた。
「いや、奥さんは無理か、ここは妹の私が完璧超人っぷりを見せつけ、お兄ちゃんには私が居るから安心して下さい。そう言えば……」
「「いやいやいやいや」」
トウカの発言を止めるスミレとボタン。
「奥さんとまではいかなくても、立派な彼女がハレオに居る事を知らしめれば済む話しよ、ハレオの性格上、妹のトウカちゃんにお世話されるのを嫌うだろうし」
「うん、スミレちゃんの意見に賛成」
「そ、そうかな」
スミレとボタンの気迫に押されるトウカ。
「よーし、それで行きましょう」
「うん、まずは無視を決め込み、そして私がハレオの彼女になって……」
「ちょっと待ったーーーーーースミレちゃん?何をおっしゃっているのかしら?」
「ああ、ごめんなさいボタンちゃん。“ハレオの彼女を演じて”だね」
「演じるのもダメよ、私がその役をやるの」
「えっ、でもボタンちゃん、ハレオの家に住んでないじゃん」
「やだ、やるの、やりたいの、スミレちゃん応援してくれるって言ったじゃない」
「でもさ、ボタンちゃん外泊禁止令。どうするの?あの人に見せつける為には、やっぱりハレオの家に住んでいる事が絶対条件だと思うけど」
「……」
泣きそうになるボタン。
「2人とも喧嘩しないで下さい、やっぱりここは妹の私が」
「「ダメっ」」
怒りの形相に怯むトウカ。
「お願い2人とも、やっぱりまずは私の外泊禁止令を解く作戦を……どうかこの通りです」
ボタンは深々と頭を下げ、おでこをテーブルに付け懇願した。
「ボタンちゃん頭を上げて」
スミレは、ボタンの背に手を当てて宥める。
「みんなでお世話しましょう、トウカちゃんも一緒に、まずはボタンちゃんの外泊禁止を解いて、3人の力を合わせ、ハレオをお世話するの、そうすれば絶対にあの人を追い出せる。きっと」
ボタンはスミレに抱き付き涙を流した。トウカも頷き賛同する。
結局、ユウを無視しハレオの身の回りの世話をするという曖昧な策を用いた解決方法しか思いつかなかった3人だが、ファミレスを出た時の清々しさは、結束力の高まりを感じさせるのに十分だった。
だが、3人は直ぐに思い知ることになる。
この作戦会議は、ハレオを先に帰した時点で既に破綻していた事を。
自分達の居場所は自分達で守る。
ハレオの家は私達の楽園なのだから。
トウカ、スミレ、ボタンの意見は一致していた。
ならば、目的も同じ、あとは手段。
どうやってユウをハレオの家から追い出すか。
トウカは「お兄ちゃんは疲れているみたいだから家で休んでて」と、帰宅を促す。
ハレオは少し抵抗したが、宝くじの事を知っているトウカの、その自信に満ちた表情に安堵し帰路に就く。
「で?どうするの?」
食後のコーヒーを囲みながらスミレが切り出す。
「あの感じだと、すぐには出て行かないと思います。ここはジワジワと追い込んで自然に私達の家から出たくなる様な作戦を練りましょう」
トウカは前回の教訓からミルクとシロップを多めに入れ、チビチビと苦手なコーヒーを飲みながら言った。
「私達の家って……」
蚊帳の外のボタンは、納得がいかなかったが、ゆくゆくは自分もと、思う気持ちが強く出て続ける。
「じゃあ、最初は無視しましょう。何を言われても無視、悔しいけど、あの話術には敵わない、だったら呆れるほど無視するの」
「「小学生かっ」」とボタンに突っ込みたくなったトウカとスミレだったが、あながち間違っていない気がして口を開かなかった。
「そうだね、肉親でもないし知り合いでもないから無視するのは簡単だと思うけど、ハレオはどうだろう、案外押しに弱いとこあるからな」
「そうだね、ハレオくんおっぱい大きい人に弱いからね」
「「……」」
お前を無視してやろうか、と思った胸の小さな2人。
「お兄ちゃんのことを心配して押し掛けてきたのだから、大人が居なくても大丈夫だと思わせれば出て行くのかも」
「なるほど、ハレオくんは、ずっと一人暮らしで、料理から掃除まで家事全般を完璧に熟す超人だから、それを知らしめれば出て行くのも早いわね」
「うーん、でも昔からの知り合いみたいだし、ハレオの完璧超人っぷりはもう知ってる可能性もあるよ」
「「確かに」」
同時に考え込む3人。
「あっハイ」
トウカが大きく手を挙げた。
「じゃあ、お兄ちゃんの傍に、素敵な相方が居ればいいんじゃない?あの人よりもずっとお兄ちゃんのことを心配してて大人な感じで、身の回りの世話をしっかり見てくれる人」
「「それって……」」
「そうね、お兄ちゃんの奥さんみたいな人」
「奥さん……彼女を飛び越して、奥さん……」
ボタンは涎が零れていないか心配して口に手をあてた。
「いや、奥さんは無理か、ここは妹の私が完璧超人っぷりを見せつけ、お兄ちゃんには私が居るから安心して下さい。そう言えば……」
「「いやいやいやいや」」
トウカの発言を止めるスミレとボタン。
「奥さんとまではいかなくても、立派な彼女がハレオに居る事を知らしめれば済む話しよ、ハレオの性格上、妹のトウカちゃんにお世話されるのを嫌うだろうし」
「うん、スミレちゃんの意見に賛成」
「そ、そうかな」
スミレとボタンの気迫に押されるトウカ。
「よーし、それで行きましょう」
「うん、まずは無視を決め込み、そして私がハレオの彼女になって……」
「ちょっと待ったーーーーーースミレちゃん?何をおっしゃっているのかしら?」
「ああ、ごめんなさいボタンちゃん。“ハレオの彼女を演じて”だね」
「演じるのもダメよ、私がその役をやるの」
「えっ、でもボタンちゃん、ハレオの家に住んでないじゃん」
「やだ、やるの、やりたいの、スミレちゃん応援してくれるって言ったじゃない」
「でもさ、ボタンちゃん外泊禁止令。どうするの?あの人に見せつける為には、やっぱりハレオの家に住んでいる事が絶対条件だと思うけど」
「……」
泣きそうになるボタン。
「2人とも喧嘩しないで下さい、やっぱりここは妹の私が」
「「ダメっ」」
怒りの形相に怯むトウカ。
「お願い2人とも、やっぱりまずは私の外泊禁止令を解く作戦を……どうかこの通りです」
ボタンは深々と頭を下げ、おでこをテーブルに付け懇願した。
「ボタンちゃん頭を上げて」
スミレは、ボタンの背に手を当てて宥める。
「みんなでお世話しましょう、トウカちゃんも一緒に、まずはボタンちゃんの外泊禁止を解いて、3人の力を合わせ、ハレオをお世話するの、そうすれば絶対にあの人を追い出せる。きっと」
ボタンはスミレに抱き付き涙を流した。トウカも頷き賛同する。
結局、ユウを無視しハレオの身の回りの世話をするという曖昧な策を用いた解決方法しか思いつかなかった3人だが、ファミレスを出た時の清々しさは、結束力の高まりを感じさせるのに十分だった。
だが、3人は直ぐに思い知ることになる。
この作戦会議は、ハレオを先に帰した時点で既に破綻していた事を。
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