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一夫多妻制なんてありえない④
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「おう、ハレちゃん、今日は何をお求めで?」
「おじさん、鴨むね肉頂戴」
「おうよ、良いの入ってるぜぇ」
行きつけの業務スーパーのおじさんとの何時もの会話。
「ちょっと、お兄ちゃんさ、なんで鮮魚売り場に鴨むね肉が売ってるのよ、怪しくない?」
一緒に買い物に付いてきたトウカが、ハレオの後ろに隠れ、静かな突っ込みを入れた。
「ココには激安食材から高級食材まで何でも揃っているからな、買い物に困った時はおじさんを頼るといいぞ」
質問の答えになっていないゾ、と苛立つトウカ。
「ということはだ、ハレちゃん、今日の晩御飯は鴨ラグーのアレトッテだな」
「違うよおじさん、全部違う、今日は引っ越し祝いで鴨南蕎麦だし、鴨ラグーのあれ取ってって名前の料理なんてないし、鴨ラグーのタリアテッレだし」
「おおう、それそれ、タリアッテッレ、所で、そこの可愛いお嬢ちゃんは?もしかしてハレちゃんのコレかい?」
おじさんニヤニヤしながらトウカに見えない様にハレオに近づき小指を立てた。
「おじさんさ、今時、人に向かって小指なんて立てたら“最低”“一番小さい”“無能者、役立たず”とかと勘違いされるから気を付けてね」
「そ、そうなのか、さすがハレちゃん、物知りだな。で、どうなんだい、全然似てないから兄妹とかじゃないとは思うけど」
「妹のトウカだよ、色々あって一緒に暮らしてるんだ、もしかしたら買い物頼むこともあるかもだから、そのときはよろしくね」
「はぁ、こんな可愛いお嬢ちゃんが妹さんかい、羨ましいねぇ、サービスするから何時でもおいでよトウカちゃん」
「はいっ絶対来ますっ」
可愛いとか、お嬢ちゃんとか、妹とか、もうニヤニヤが止まらないトウカは、ハレオの前に出て大きく返事をした。
「じゃあなハレちゃん、トウカちゃん、これサービスだから」
鮮魚売り場のおじさんは、鴨むね肉と一緒に、十割蕎麦を打って持たせてくれた。
トウカは、一瞬で十割蕎麦が出てきたことに驚きを隠せないが、ハレオは何時もの事さ、おじさんは何も知らないけど、なんでも持ってるからな、と諭し、残る食材の白ネギを購入して帰路に就く。
「おーい、ハレオー、トウカちゃーん」
マンションの前で大声で叫ぶスミレ、隣にはボタンも居た。
「ごめん2人とも、待っちゃった?」
「お帰りー今来た所だよ、今日のご馳走買ってきたの?」
ボタンが息を白くさせてハレオの手を取る。
「おう、心配かけたから腕を振るうぞ」
「もう、ほぼ出来上がってるけどね」
腕を回すハレオの横で小さく突っ込むトウカ。
「待ってる時にさ、ハレオの家の周り見てたんだけどさ、1、2階のお店、ほとんど撤退しちゃったんだね、コンビニまで無くなってる」
スミレが空きテナントの張り紙を指さして訪ねた。
「ああ、そうみたいだな。それよりも冷えるから早く入ろうか」
やっぱり待たせてたのだと反省し、ハレオは入口のロックを解除した。
ハレオの住むマンションの1,2階は、共有スペースになっていて、高級レストランやオシャレなカフェバー、コンビニ等が入っていた。だがスミレの言う通り、今は全てのフロアの電気が消えている。
「やっぱり、感染症の影響かなぁ」
「そうだな、でもそれも収まりつつあるし、また活気が戻ってくるだろうさ」
「駅にも近いし、立地は最高だからね」
「というかハレオくん、なんでこんなとこ住んでるの?」
「お兄ちゃん、バカだから勢いで契約しちゃったんだって、お金も無いのにどうすんだろね」
「ハレオは、昔っからそういう所あるよねーなにかの強迫観念に反応して突っ走っちゃうというかなんというか」
「あるあるー何時もクールな癖に急に子供みたいになるよねーそういうとこがまた可愛いんだけどー」
「やめろっ俺は可愛くない」
「どうせ今回の件も、なにかに反応して1人で悩んで突っ走っちゃったんでしょうよ、鴨南蕎麦食べながら、ゆっくり聞かせてもらいますからね」
エレベーターに乗りハレオの部屋があるフロアへ向かう4人の話は弾んでいた。
しかし、ハレオの気は晴れない。
オンライン授業でも会話は可能だった。
SNSで繋がるクラスメイトも居る。
通学しなくてもW高なら勉強が出来る事を知っている。
だが、実際会って、こうやって話をする事の楽しさを再確認し、学校が楽しいと言ったトウカの気持ちを考えた時、ハレオは心から笑うことが出来なかった。
「おじさん、鴨むね肉頂戴」
「おうよ、良いの入ってるぜぇ」
行きつけの業務スーパーのおじさんとの何時もの会話。
「ちょっと、お兄ちゃんさ、なんで鮮魚売り場に鴨むね肉が売ってるのよ、怪しくない?」
一緒に買い物に付いてきたトウカが、ハレオの後ろに隠れ、静かな突っ込みを入れた。
「ココには激安食材から高級食材まで何でも揃っているからな、買い物に困った時はおじさんを頼るといいぞ」
質問の答えになっていないゾ、と苛立つトウカ。
「ということはだ、ハレちゃん、今日の晩御飯は鴨ラグーのアレトッテだな」
「違うよおじさん、全部違う、今日は引っ越し祝いで鴨南蕎麦だし、鴨ラグーのあれ取ってって名前の料理なんてないし、鴨ラグーのタリアテッレだし」
「おおう、それそれ、タリアッテッレ、所で、そこの可愛いお嬢ちゃんは?もしかしてハレちゃんのコレかい?」
おじさんニヤニヤしながらトウカに見えない様にハレオに近づき小指を立てた。
「おじさんさ、今時、人に向かって小指なんて立てたら“最低”“一番小さい”“無能者、役立たず”とかと勘違いされるから気を付けてね」
「そ、そうなのか、さすがハレちゃん、物知りだな。で、どうなんだい、全然似てないから兄妹とかじゃないとは思うけど」
「妹のトウカだよ、色々あって一緒に暮らしてるんだ、もしかしたら買い物頼むこともあるかもだから、そのときはよろしくね」
「はぁ、こんな可愛いお嬢ちゃんが妹さんかい、羨ましいねぇ、サービスするから何時でもおいでよトウカちゃん」
「はいっ絶対来ますっ」
可愛いとか、お嬢ちゃんとか、妹とか、もうニヤニヤが止まらないトウカは、ハレオの前に出て大きく返事をした。
「じゃあなハレちゃん、トウカちゃん、これサービスだから」
鮮魚売り場のおじさんは、鴨むね肉と一緒に、十割蕎麦を打って持たせてくれた。
トウカは、一瞬で十割蕎麦が出てきたことに驚きを隠せないが、ハレオは何時もの事さ、おじさんは何も知らないけど、なんでも持ってるからな、と諭し、残る食材の白ネギを購入して帰路に就く。
「おーい、ハレオー、トウカちゃーん」
マンションの前で大声で叫ぶスミレ、隣にはボタンも居た。
「ごめん2人とも、待っちゃった?」
「お帰りー今来た所だよ、今日のご馳走買ってきたの?」
ボタンが息を白くさせてハレオの手を取る。
「おう、心配かけたから腕を振るうぞ」
「もう、ほぼ出来上がってるけどね」
腕を回すハレオの横で小さく突っ込むトウカ。
「待ってる時にさ、ハレオの家の周り見てたんだけどさ、1、2階のお店、ほとんど撤退しちゃったんだね、コンビニまで無くなってる」
スミレが空きテナントの張り紙を指さして訪ねた。
「ああ、そうみたいだな。それよりも冷えるから早く入ろうか」
やっぱり待たせてたのだと反省し、ハレオは入口のロックを解除した。
ハレオの住むマンションの1,2階は、共有スペースになっていて、高級レストランやオシャレなカフェバー、コンビニ等が入っていた。だがスミレの言う通り、今は全てのフロアの電気が消えている。
「やっぱり、感染症の影響かなぁ」
「そうだな、でもそれも収まりつつあるし、また活気が戻ってくるだろうさ」
「駅にも近いし、立地は最高だからね」
「というかハレオくん、なんでこんなとこ住んでるの?」
「お兄ちゃん、バカだから勢いで契約しちゃったんだって、お金も無いのにどうすんだろね」
「ハレオは、昔っからそういう所あるよねーなにかの強迫観念に反応して突っ走っちゃうというかなんというか」
「あるあるー何時もクールな癖に急に子供みたいになるよねーそういうとこがまた可愛いんだけどー」
「やめろっ俺は可愛くない」
「どうせ今回の件も、なにかに反応して1人で悩んで突っ走っちゃったんでしょうよ、鴨南蕎麦食べながら、ゆっくり聞かせてもらいますからね」
エレベーターに乗りハレオの部屋があるフロアへ向かう4人の話は弾んでいた。
しかし、ハレオの気は晴れない。
オンライン授業でも会話は可能だった。
SNSで繋がるクラスメイトも居る。
通学しなくてもW高なら勉強が出来る事を知っている。
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