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最果ての森・成長編

94. 島でのランチ

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 天才二人組のおかげで、白いモクモクを消す作業は驚くほど捗った。
 途中で水蒸気の追加が無くなったのも大きい。地面がある程度まで冷えたか、もしくは水が無くなったのだろう。

「あやつらは一体何なのだ?妖精とは皆あのようにデタラメなのか?···というか、本当にスライム···なのか···?」

 ティアのぼやきが、元気に響くテムとファムの笑い声の中でかすかに聞こえた。

「ティア、あの二人は別格だよ。規格の外にいるからね、気にしない方が身のためだよ」

 ライが腕に抱えているティアをナデナデしながら言い聞かせている。
 僕もライに同意だ。頷いていると、ライと目が合った。

「···あ、二人じゃなかった、三人···いや、四人かな?」

 頷く僕と、そんな僕の頭を撫でているジルを見ながらライが訂正した。
 僕が首を傾げると、ティアと目が合った。

「···周りに規格外しかいないのだが、その場合はどうすれば良いのだ?」

 ティアが半目で僕を見ながらライに聞く。

「それは難しい質問だね。···諦めて、そういうものだと受け入れるしかないんじゃないかな。それで、慣れるのを待つんだ。私も実践しようとしているところなんだけど、ふふ、これがなかなか難しくてね」

「な、なるほど···。うーむ、規格外のご主人とその仲間に慣れて、そしていずれはワレもその域に達したいものだ」

「ふふ、それなら練習を頑張ろうね。私が教えられることは、何でも教えるよ」

「ありがとうなのだ!」

 ティアの前向きな発言に、ライがニコニコしながらティアを撫でる。

 ティアとライはここ最近とても仲良くなったようだ。
 なお、これと似たような会話はこの先何度も繰り返されることとなる。


「あー、もう無くなっちゃったねー」

「だなー、せっかく楽しかったのによ。···あ!いいこと思いついたぜ!」

 白いモクモクが消えて残念そうにしていた二人だが、テムが急に目をキラキラさせてライを見た。

「ふふふ、テム、今日はもうやめておこうね」

 テムが言いたいことを察したのか、ライが先回りして止める。

「ちぇーっ。オレもウィルみたいに、ドーーーン!ってやりたかったのによ」

 テムは、あの爆発を自分でも起こしたかったようだ。

「あはは!あれは面白かったよねー!」

「だよな!すげーよな!」

 楽しげに話すテムとファムを、ティアは「ワレにもあれを面白いと思える日が来るのだろうか···」と引き気味に見ていた。

「···そろそろ昼食にするか」

 楽しそうなテムとファムと、そんな二人に引いているティア、そしてそのティアを乾いた笑みを浮かべながら撫で続けるライ。
 カオスになりかかっているみんなを見て、ジルが言う。
 うんうん、いい判断だと思う。

「わーい!お昼ごはん食べたーい!」

「もうそんな時間か!久しぶりに気づかなかったぜ!」

 確かに、この二人がごはんの時間を忘れるのは珍しい。それほど楽しんでいたのだろう。

「···ここでいいか」

 そう言ってジルが地面にシートを敷き、マジックバッグから次々と料理を取り出す。

「ふふ、ジル、ありがとう」

「···いや、気にするな」

 おそらくライのありがとうは、お昼ごはんを準備してくれたことに対してというより、あのカオスな場を切り上げてくれたことに対しての言葉だろう。

 今日は外でのごはんということで、シートには様々な料理が並べられている。こんなに色んな料理を作ってくれたジルに感謝だ。

 みんなでわいわいと食事を楽しむ。
 僕のお気に入りは、グリーンピースとにんじんの炊き込みごはんのおにぎりだ。色合いが綺麗で、食べると優しい甘さがふんわりと口の中に広がる。グリーンピースはほっくりしていて、薄皮まで柔らかかった。

 あ、それから小さめのハンバーグも美味しかった。トマトをベースにしたソースを付けると、これはもうパクパクいけちゃう。

 あ、それと、オニオンスープも美味しかった。玉ねぎが甘くて柔らかくて、その味と食感をずっと楽しんでいたくなる。

 あ、あとは、蒸しパンも美味しかったな。ほうれん草を練り込んであって、中には角切りのりんごが入っていた。蒸しパン自体は甘さ控えめだけど、それがりんごの甘さを引き立てているような感じだ。

 つまり何か言いたいかというと、全部美味しかった。

 他にもサンドイッチとか卵焼きとかミートボールとか、色んなメニューがあって、みんな満腹になるまでたくさん食べた。

「ふう、腹いっぱいだぜ。ジル、美味かったぜ!」

「ぼくもお腹いっぱーい!ジル、ありがとー!」

 テムはシートにゴロンと横になり、ファムはデロンとなっている。
 すぐにスースーという寝息が聞こえてきた。

「ワレも満腹なのだ···。美味かったのだ···むにゃ」

 ティアもライの横でシートに寝そべる。ウトウトしているなと思ったら、あっという間に寝てしまった。

「ふふ、今日も美味しかったよ。ありがとう、ジル」

「あいあと!」

「そうか」

 ジルが僕の頭を優しく撫でる。
 なんだか僕も眠たくなってきた。ジルのあぐらに収まるように座ってごはんを食べていたので、もぞもぞと動いて寝る体勢になる。
 するとジルが一定のリズムで優しくポン、ポン、とするので、僕もティアに負けない速さで寝入ることとなった。


 僕が目を覚ましたとき、ブランケットに包まれて、さらにジルに抱っこされていた。僕が寝やすいようにジルが気を遣ってくれたのだろう。おかげでバッチリ熟睡できた。

 テムとファムは、僕より先に起きていたようだ。飛んだり跳ねたり、元気そうだ。

 僕が爆睡している間、ジルとライはずっとお喋りしていたらしい。「昔の話とかね。たまに思い出して話すと楽しいね」とライが言っていた。
 僕もジル達の昔の話をいつかじっくり聞いてみたい。

「さて、午後の魔法の練習は、場所を変えようと思うんだ。海岸に行ってみよう!」

 おお、海岸!
 この世界に来て初めての海だ!

 僕はわくわくしながら移動を開始した。というか、ジルが僕を抱えて飛んでくれた。
 ちなみにティアはまだ爆睡していたので、ライが抱えて飛んでいた。
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