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最果ての森・成長編

90. 別荘

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 うわぁ、大きい···。

 今僕達がいるリビングは、天井が吹き抜けになっている。広々とした空間には、シンプルだけどこの空間にうまく調和した家具が揃えられている。
 二階の廊下には手すりが付いていて、そこからこのリビングを見渡すことができる。

 ···セレブか?ライはセレブなのか?

 僕は思わず口をポカンと開けて動きを止めてしまう。

「これほど大きなニンゲンの住処は初めて見るぞ。うぬぬ、ライも侮れんやつ···!」

 ティアはティアで、驚いている。

「さあ、みんな。もう転移の陣から出て大丈夫だよ」

 まだ陣の中心でぎゅっとなっている僕達を見て、ライがクスッと笑う。

 ライに言われて足元を見ると、あれほど眩しかった陣の光が消えている。というか、陣が布ではなくて、直接床に描かれている。魔法陣だと知らずに見たら、オシャレな模様だと思うだろう。
 そしてあの布は僕の家に残されているようだ。

「わあー!とっても広いねー!」

 ファムが転移の陣からぽーんと飛び出し、リビングで跳ね回る。
 いつも自分のペースを乱さないファム、すごい。

「ファム、お前勇気あるよなー」

 テムはというと、恐る恐る陣から出ている。転移はいつも自分がする役だから、転移されたのは初めてだったのかもしれない。

「えー?だってライが大丈夫って言ったから、何も心配することないよー?」

 お、おお···!ファム、かっこいい···!
 ライも嬉しそうだ。ニコニコの笑顔で、「ふふ、ありがとう、ファム」と言っている。

「あ、確かにそーだな!」

 ファムの言葉に納得したテムが、途端に陣から出たり入ったりを繰り返す。そして動きを止めたと思ったら、今度は床の模様をじっくりと見始めた。
 転移魔法を得意とする者として、何か思うことや感じることがあるのだろうか。

「全然意味が分かんねーぜ!ブハハ!」

 ···あ、そうだよね。
 思わず脱力し、僕は半目で陣を出た。

「一階にはリビングとキッチン、それから私の書斎など。二階には来客用の部屋があるよ。部屋数は一人一部屋使っても余るから、自由に使ってね」

 なんかもう、これが別荘だなんて、本宅はどれほど大きいのだろうか。
 いつかこの目で確かめてやる!とこっそり決意する。

「ねえねえライ、地下にもお部屋があるのー?」

 一階を跳ね回っていたファムが、何かに気づいたようだ。

「あ、そうそう。ファム、よく気づいたね。書斎の下に、研究室があるんだ。中には危険な物もあるから、入るのは私が一緒のときだけにしてね」

 なにやらサラッと重要なことを言われた気がする。···その研究室で、ライは一体何を研究しているのだろうか。
 入るのはちょっと怖いが、好奇心がムクムクと湧いてくる。···よし、あとで中を見せてもらおう。

「ふふ、家はまたあとでじっくり見てもらうとして···。みんな、外に出てみない?」

 あ、そうだ!魔法の練習をしに来たんだった!
 別荘のインパクトが大きすぎて、すっかり忘れていた。

 ライを先頭に、ぞろぞろと家の外に出る。
 玄関から外に足を踏み出すと、ほのかに潮の香りを感じた。

 ライの別荘は小高い丘の上にあるようで、眼下には緩やかな傾斜と、その先に広がる平地が見える。

「場所はあの辺りがいいかな?」

 ライが指差したのは、丘の下の平地だ。

 再びライを先頭に、平地へ降りる。
 より海が近くなったのか、風に乗って潮の香りが強くなる。耳を澄ませば、波の音も聞こえてきそうだ。

「ふふ、本当にいい天気だね!」

 ライがご機嫌だ。
 暖かな日差しの下で、魔法の練習が始まった。
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