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最果ての森・成長編
88. 練習場所
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ティアが念話を習得した翌日。
ライに加えて、テムとファムも家に来てくれた。
ティアは念話が出来るようになったということで、テムとファムから質問攻めにあっていた。
「ねえねえ、ぼくたち聞いてなかったけど、ティアの得意属性ってなんだったのー?」
「水と土と闇なのだ!」
「へえー!3つもあるんだ!ティア、すごいねー!」
「そ、そうか?···ふふん、これからワレは強くなるのだ!」
「でもよ、その分練習が多くなんだろ?これから大変なんじゃねーか?」
「望むところなのだ!ご主人の魔法に驚く暇もなく練習するのだ!」
「あはは!ウィルくんの魔法は面白いよねー!」
「だな!知ってる魔法のはずなのに、なんつーか、別物なんだよなー」
「そうなのだ!ご主人の魔法はすごいのだ!ワレの念話も、···あっ」
「うん?···あ、そういえば、念話はどうやって出来るようになったのー?」
「そうだぜ!オレらじゃ上手く教えらんなかったけどよ、ライに教えてもらったんだろ?」
「そ、そうなのだ!ライの説明は分かりやすかったぞ!」
「よかったねー!···ねえねえ、念話で最初に話した言葉って、なんだったのー?」
「おお!それは気になるぜ!記念すべき第一声ってやつだな!」
「あっ、えーっとだな···」
「お願い、教えてー?」
「オレも!オレも知りたいぜ!」
「···ナンダッタカナー」
「んあ?それが最初に話した言葉か?あんまりカッコよくねーな!ブハハ!」
「ま、まあ、少し違うが···似たようなものなのだ」
「あはは!ティア、面白いねー!」
察しのいいファムが早速ティアをいじっている。
僕の魔法に驚いたら念話が出来たなんて、ちょっと言いづらいよね。まあ、ファムは気づいているみたいだけど。
ちなみに、この会話が行われている間、僕はジルの膝の上で本を広げていた。
ライはティア達の会話には入っていなかったものの、うんうんと頷いたり、時折クスッと笑ったりしていた。
僕は、菩薩の笑みを絶やさなかった。
質問タイムが終わったのか、ティア達が僕達の近くに集まる。
みんなでお喋りを楽しんでいると、ライが「あ、そうだ」と言ってバッグから地図を取り出した。
「ウィル君、中級の魔法をどこで練習しようか考えていたんだけど、ここはどうかな?」
そう言ってライが指差したのは、大陸ではなく、その南にいくつかある島の一つだった。
「ここはね、私が以前から魔法の実験などで使っている島なんだ。他に人は住んでいないから、大規模な魔法を使っても大丈夫だよ」
···ライは島を所有しているの?
というか、大規模な魔法を使う前提なんだね。
「あ、私の家···というか別荘かな?お昼寝する場所はちゃんとあるから安心してね」
···島を持っているなら、別荘くらいあるよね。
あまりにも軽い感じで言うから、別荘ってそんなに簡単に持てるものだっけ?と思ってしまった。
「ウィル君、どうかな?」
···おっと。
骨の髄まで庶民の僕にはスケールが大き過ぎて、ちょっとフリーズしてしまった。
「···てんい?」
南の島まで、どうやって行くのだろうか。
「あ、それは大事なことだよね。ふふ、実はね、移動自体は一瞬で終わるんだ」
ライが再びバッグから何かを取り出した。クルクルと巻かれた布だ。
ライが布を広げる。そこには、大きな円の中に細かい緻密な模様がぎっしりと描かれていた。もはや芸術と言えるほどの細かさ。これを描くだけでも相当な時間と労力を費やしただろうということは、容易に想像できる。
「私の研究の中で一番の成果なんだ。···これは、転移の陣だよ。私の別荘に刻んだものと対になっていてね、この陣に入って模様に沿って魔力を流せば、対になる陣へ転移できるんだ」
転移の陣?
つまり、これは魔法陣?
「ウィル君、ティア、これは他言無用で頼むよ。ここにいるメンバー以外には、話していないんだ」
ライの声に真剣な響きが含まれる。
「この陣の存在が漏れたら、これを巡って戦争が起こる。残念ながら、これは間違いないよ。だからね、本当に信用できる人にしか話せないんだ」
空間属性は、とても珍しい。それに、テムは簡単にやってのけているが、本来転移はものすごく難しい魔法だ。
そんな魔法を、魔力を流せば発動できるのだ。
転移の陣は、とても便利だ。ただ、使い方次第では、恐ろしい道具にもなる。ライは、それを危惧しているのだろう。
「この世界全体でもっと魔法の研究が進めば、これを発表できるかもしれないけどね。···今は、その時じゃない」
「ないしょ」
僕は口に人差し指をあててシーッと言う。
「ワレも、誰にも言わないのだ!」
「ふふ、二人ともありがとう。それじゃあ、練習場所はここでいいかい?」
ライの纏う空気がフッと緩み、柔らかい笑顔を見せる。
「俺も行く」
僕がライの問いに頷くと、ジルがそう言った。
「楽しそうだな!オレも行っていいか?」
「ぼくも行きたーい!」
ジルに続き、テムとファムも参加を希望する。
「ふふ、もちろんだよ」
「わーい!ありがとー!」
「やったぜ!」
二人が喜ぶ横で、ティアがおずおずと訊ねる。
「ワレも、行っていいのか···?」
「もちろんだよ!ティアも魔法の練習、頑張ろうね!」
「あ、ありがとうなのだ!」
不安から一転、喜びいっぱいで尻尾をフリフリしているティアが可愛い。
その後、練習日をいつにするか話し合った。みんなが揃う日に行こうということで、明後日、南の島に行くことになった。
二日後、ライ所有の島で魔法の練習だ。
今からわくわくが止まらない。
ライに加えて、テムとファムも家に来てくれた。
ティアは念話が出来るようになったということで、テムとファムから質問攻めにあっていた。
「ねえねえ、ぼくたち聞いてなかったけど、ティアの得意属性ってなんだったのー?」
「水と土と闇なのだ!」
「へえー!3つもあるんだ!ティア、すごいねー!」
「そ、そうか?···ふふん、これからワレは強くなるのだ!」
「でもよ、その分練習が多くなんだろ?これから大変なんじゃねーか?」
「望むところなのだ!ご主人の魔法に驚く暇もなく練習するのだ!」
「あはは!ウィルくんの魔法は面白いよねー!」
「だな!知ってる魔法のはずなのに、なんつーか、別物なんだよなー」
「そうなのだ!ご主人の魔法はすごいのだ!ワレの念話も、···あっ」
「うん?···あ、そういえば、念話はどうやって出来るようになったのー?」
「そうだぜ!オレらじゃ上手く教えらんなかったけどよ、ライに教えてもらったんだろ?」
「そ、そうなのだ!ライの説明は分かりやすかったぞ!」
「よかったねー!···ねえねえ、念話で最初に話した言葉って、なんだったのー?」
「おお!それは気になるぜ!記念すべき第一声ってやつだな!」
「あっ、えーっとだな···」
「お願い、教えてー?」
「オレも!オレも知りたいぜ!」
「···ナンダッタカナー」
「んあ?それが最初に話した言葉か?あんまりカッコよくねーな!ブハハ!」
「ま、まあ、少し違うが···似たようなものなのだ」
「あはは!ティア、面白いねー!」
察しのいいファムが早速ティアをいじっている。
僕の魔法に驚いたら念話が出来たなんて、ちょっと言いづらいよね。まあ、ファムは気づいているみたいだけど。
ちなみに、この会話が行われている間、僕はジルの膝の上で本を広げていた。
ライはティア達の会話には入っていなかったものの、うんうんと頷いたり、時折クスッと笑ったりしていた。
僕は、菩薩の笑みを絶やさなかった。
質問タイムが終わったのか、ティア達が僕達の近くに集まる。
みんなでお喋りを楽しんでいると、ライが「あ、そうだ」と言ってバッグから地図を取り出した。
「ウィル君、中級の魔法をどこで練習しようか考えていたんだけど、ここはどうかな?」
そう言ってライが指差したのは、大陸ではなく、その南にいくつかある島の一つだった。
「ここはね、私が以前から魔法の実験などで使っている島なんだ。他に人は住んでいないから、大規模な魔法を使っても大丈夫だよ」
···ライは島を所有しているの?
というか、大規模な魔法を使う前提なんだね。
「あ、私の家···というか別荘かな?お昼寝する場所はちゃんとあるから安心してね」
···島を持っているなら、別荘くらいあるよね。
あまりにも軽い感じで言うから、別荘ってそんなに簡単に持てるものだっけ?と思ってしまった。
「ウィル君、どうかな?」
···おっと。
骨の髄まで庶民の僕にはスケールが大き過ぎて、ちょっとフリーズしてしまった。
「···てんい?」
南の島まで、どうやって行くのだろうか。
「あ、それは大事なことだよね。ふふ、実はね、移動自体は一瞬で終わるんだ」
ライが再びバッグから何かを取り出した。クルクルと巻かれた布だ。
ライが布を広げる。そこには、大きな円の中に細かい緻密な模様がぎっしりと描かれていた。もはや芸術と言えるほどの細かさ。これを描くだけでも相当な時間と労力を費やしただろうということは、容易に想像できる。
「私の研究の中で一番の成果なんだ。···これは、転移の陣だよ。私の別荘に刻んだものと対になっていてね、この陣に入って模様に沿って魔力を流せば、対になる陣へ転移できるんだ」
転移の陣?
つまり、これは魔法陣?
「ウィル君、ティア、これは他言無用で頼むよ。ここにいるメンバー以外には、話していないんだ」
ライの声に真剣な響きが含まれる。
「この陣の存在が漏れたら、これを巡って戦争が起こる。残念ながら、これは間違いないよ。だからね、本当に信用できる人にしか話せないんだ」
空間属性は、とても珍しい。それに、テムは簡単にやってのけているが、本来転移はものすごく難しい魔法だ。
そんな魔法を、魔力を流せば発動できるのだ。
転移の陣は、とても便利だ。ただ、使い方次第では、恐ろしい道具にもなる。ライは、それを危惧しているのだろう。
「この世界全体でもっと魔法の研究が進めば、これを発表できるかもしれないけどね。···今は、その時じゃない」
「ないしょ」
僕は口に人差し指をあててシーッと言う。
「ワレも、誰にも言わないのだ!」
「ふふ、二人ともありがとう。それじゃあ、練習場所はここでいいかい?」
ライの纏う空気がフッと緩み、柔らかい笑顔を見せる。
「俺も行く」
僕がライの問いに頷くと、ジルがそう言った。
「楽しそうだな!オレも行っていいか?」
「ぼくも行きたーい!」
ジルに続き、テムとファムも参加を希望する。
「ふふ、もちろんだよ」
「わーい!ありがとー!」
「やったぜ!」
二人が喜ぶ横で、ティアがおずおずと訊ねる。
「ワレも、行っていいのか···?」
「もちろんだよ!ティアも魔法の練習、頑張ろうね!」
「あ、ありがとうなのだ!」
不安から一転、喜びいっぱいで尻尾をフリフリしているティアが可愛い。
その後、練習日をいつにするか話し合った。みんなが揃う日に行こうということで、明後日、南の島に行くことになった。
二日後、ライ所有の島で魔法の練習だ。
今からわくわくが止まらない。
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