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最果ての森・成長編
87. 強くなる理由
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「あれ?···もしかして、今のはティアの声かな?」
ライが驚きと喜びが混ざり合ったような表情でティアに問いかける。
「お?···おお?···出来た!ご主人、ライ、出来たぞ!」
念話の成功に喜ぶティアが、僕とライに駆け寄る。
「てぃあ、しゅごい!」
「ティア、おめでとう!ふふ、これでティアと話せるね。楽しみにしていたよ」
僕達はワシャワシャとティアを撫でる。
ティアは尻尾をブンブンと振っていて、とても嬉しそうだ。
「練習初日に成功させたか。すごいな」
僕の魔法の練習を少し離れたところから見守っていたジルもやって来て、ティアを褒める。
「ほ、本当かっ!?ワレはすごいのか!?··ふふん、ワレはこれからもっともっと強くなるのだ!」
ジルの言葉に気を良くしたティアが、ツンとすました表情で宣言する。···一方、尻尾はすごい勢いで振られている。
「ふふ、ティアは本当に可愛いね。これからも練習を頑張っていこうね」
ティアの微笑ましい姿にライが頬を緩める。
ティアはしばらく尻尾を振りながら僕達のナデナデを享受していたのだが、急に尻尾の動きをピタッと止めた。
「てぃあ?」
どうしたのだろうか。
ティアは少し俯き、そして勢いよく顔を上げる。その真剣な眼差しに、僕達は撫でる手を止めて静かにティアの言葉を待つ。
「念話が出来るようになったら、直接言いたいと思っていたのだ。···ワレが以前はマンティコアだったことを知りながらも受け入れてくれて、本当に感謝している。ワレはご主人に救ってもらったこの命を、いつかご主人のために使いたい。そのためにも、強くなりたいのだ。···これからも、よろしく頼む」
ティアは確固たる決意を瞳に宿してジルとライを見た後、二人に頭を下げる。
「ふふ、ジル、どう思う?」
ライが柔らかく笑ってジルに聞く。
ティアは頭を下げたままだ。
「強くなるのには賛成だ。ただ···」
ジルが一度言葉を切って、僕を見る。
僕はジルに頷いた。
ジルも僕に頷き、再びティアに視線を戻す。そして静かに、だけど力強く、言い放った。
「命を使うためではない。ウィルと共に生きるために、強くなれ」
その言葉に、ティアがバッと顔を上げる。大きく見開いた瞳には、驚愕、歓喜、感謝、決意など、様々な感情が見て取れる。
「命を使えば、ウィルが悲しむ。···そうだろう?」
僕はコクコクと頷き、ティアをぎゅっと抱きしめる。
「てぃあ、じゅっと、いっしょ」
抱きしめたティアの体が震えていたのは、寒さや恐怖のせいではないのだろう。きっと、もっと温かい感情だ。
「ふふ、ティアはちゃんと長生きしなきゃダメだよ」
「あ、ああ、その通りなのだ。···ご主人と共に生きていくために、ワレは強く、強くなるぞ」
感情が昂ぶっているのか、聞こえてくる声もちょっと震えている。
僕はそのまましばらくティアを抱きしめていた。
そんな僕を見て、ジルがポツリと呟いた。
「···ウィルを悲しませたら、俺が許さん」
ティアの体が震えごと固まった。
その後は、ボロボロになったアースウォールがさすがに増え過ぎたということで、ライと一緒にダークアローで崩して整地した。
ジルはなんとなく不満そうだったが、僕が率先して崩していたので止める気はないようだった。
家に戻って、ジルは夜ごはんを作るためにキッチンへ。
ライはリビングに残っている。ティアと話すためだろう。
「ティア、今日は念話の習得、おめでとう」
「ありがとうなのだ」
「さっきも言ったけど、ティアには長生きしてもらうよ。それが私達にとって一番嬉しいことだからね」
ライの優しい笑顔に、ティアが言葉に詰まる。
その様子を見たライが、いたずらっぽい笑みを浮かべて明るい声で言う。
「今後、本格的に魔法の練習に入るよ。ふふ、これからティアは忙しくなるよ。ウィル君の魔法に驚く暇もないかもね」
ライの言葉に、ティアが笑う。
「あの火柱には、本当に驚いたのだ!ご主人の魔法は、威力がおかしいのだ!」
ティア、そんなことを思っていたんだね。···まあ、度々やらかしているし、否定はできない。
「やっぱりティアもそう思う?ふふ、私なんて毎回心の準備をしているはずなんだけどね、いっつも準備が足りないんだ。それはもう、圧倒的に足りないんだよ」
ちょ、ちょっと、ライさん。そこまで言います?
「そ、そうなのか···。ご主人は本当に凄まじい実力の持ち主なのだな。なぜそんなにも強いのだ?」
「ふふ、それはね···」
僕を置いてけぼりにして、僕の話で盛り上がる二人。
でもここで、僕がこことは違う世界から転生したのだと、ライが伝えてくれた。ティアにはいつか言おうと思っていたから、ありがたい。
ティアは違う世界があるということに驚いていたが、納得もしているようだった。
「ただのニンゲンの赤子ではないと思っていたが、そういうことだったのか!ご主人はすごいのだな!」
そう言って、キラキラした目でこちらを見るティアが可愛い。
こうやって自分を受け入れてもらえることは嬉しいことなんだなと実感する。
ティアを撫でながら、この地に転生できて本当に良かったと、改めて思った。
ライが驚きと喜びが混ざり合ったような表情でティアに問いかける。
「お?···おお?···出来た!ご主人、ライ、出来たぞ!」
念話の成功に喜ぶティアが、僕とライに駆け寄る。
「てぃあ、しゅごい!」
「ティア、おめでとう!ふふ、これでティアと話せるね。楽しみにしていたよ」
僕達はワシャワシャとティアを撫でる。
ティアは尻尾をブンブンと振っていて、とても嬉しそうだ。
「練習初日に成功させたか。すごいな」
僕の魔法の練習を少し離れたところから見守っていたジルもやって来て、ティアを褒める。
「ほ、本当かっ!?ワレはすごいのか!?··ふふん、ワレはこれからもっともっと強くなるのだ!」
ジルの言葉に気を良くしたティアが、ツンとすました表情で宣言する。···一方、尻尾はすごい勢いで振られている。
「ふふ、ティアは本当に可愛いね。これからも練習を頑張っていこうね」
ティアの微笑ましい姿にライが頬を緩める。
ティアはしばらく尻尾を振りながら僕達のナデナデを享受していたのだが、急に尻尾の動きをピタッと止めた。
「てぃあ?」
どうしたのだろうか。
ティアは少し俯き、そして勢いよく顔を上げる。その真剣な眼差しに、僕達は撫でる手を止めて静かにティアの言葉を待つ。
「念話が出来るようになったら、直接言いたいと思っていたのだ。···ワレが以前はマンティコアだったことを知りながらも受け入れてくれて、本当に感謝している。ワレはご主人に救ってもらったこの命を、いつかご主人のために使いたい。そのためにも、強くなりたいのだ。···これからも、よろしく頼む」
ティアは確固たる決意を瞳に宿してジルとライを見た後、二人に頭を下げる。
「ふふ、ジル、どう思う?」
ライが柔らかく笑ってジルに聞く。
ティアは頭を下げたままだ。
「強くなるのには賛成だ。ただ···」
ジルが一度言葉を切って、僕を見る。
僕はジルに頷いた。
ジルも僕に頷き、再びティアに視線を戻す。そして静かに、だけど力強く、言い放った。
「命を使うためではない。ウィルと共に生きるために、強くなれ」
その言葉に、ティアがバッと顔を上げる。大きく見開いた瞳には、驚愕、歓喜、感謝、決意など、様々な感情が見て取れる。
「命を使えば、ウィルが悲しむ。···そうだろう?」
僕はコクコクと頷き、ティアをぎゅっと抱きしめる。
「てぃあ、じゅっと、いっしょ」
抱きしめたティアの体が震えていたのは、寒さや恐怖のせいではないのだろう。きっと、もっと温かい感情だ。
「ふふ、ティアはちゃんと長生きしなきゃダメだよ」
「あ、ああ、その通りなのだ。···ご主人と共に生きていくために、ワレは強く、強くなるぞ」
感情が昂ぶっているのか、聞こえてくる声もちょっと震えている。
僕はそのまましばらくティアを抱きしめていた。
そんな僕を見て、ジルがポツリと呟いた。
「···ウィルを悲しませたら、俺が許さん」
ティアの体が震えごと固まった。
その後は、ボロボロになったアースウォールがさすがに増え過ぎたということで、ライと一緒にダークアローで崩して整地した。
ジルはなんとなく不満そうだったが、僕が率先して崩していたので止める気はないようだった。
家に戻って、ジルは夜ごはんを作るためにキッチンへ。
ライはリビングに残っている。ティアと話すためだろう。
「ティア、今日は念話の習得、おめでとう」
「ありがとうなのだ」
「さっきも言ったけど、ティアには長生きしてもらうよ。それが私達にとって一番嬉しいことだからね」
ライの優しい笑顔に、ティアが言葉に詰まる。
その様子を見たライが、いたずらっぽい笑みを浮かべて明るい声で言う。
「今後、本格的に魔法の練習に入るよ。ふふ、これからティアは忙しくなるよ。ウィル君の魔法に驚く暇もないかもね」
ライの言葉に、ティアが笑う。
「あの火柱には、本当に驚いたのだ!ご主人の魔法は、威力がおかしいのだ!」
ティア、そんなことを思っていたんだね。···まあ、度々やらかしているし、否定はできない。
「やっぱりティアもそう思う?ふふ、私なんて毎回心の準備をしているはずなんだけどね、いっつも準備が足りないんだ。それはもう、圧倒的に足りないんだよ」
ちょ、ちょっと、ライさん。そこまで言います?
「そ、そうなのか···。ご主人は本当に凄まじい実力の持ち主なのだな。なぜそんなにも強いのだ?」
「ふふ、それはね···」
僕を置いてけぼりにして、僕の話で盛り上がる二人。
でもここで、僕がこことは違う世界から転生したのだと、ライが伝えてくれた。ティアにはいつか言おうと思っていたから、ありがたい。
ティアは違う世界があるということに驚いていたが、納得もしているようだった。
「ただのニンゲンの赤子ではないと思っていたが、そういうことだったのか!ご主人はすごいのだな!」
そう言って、キラキラした目でこちらを見るティアが可愛い。
こうやって自分を受け入れてもらえることは嬉しいことなんだなと実感する。
ティアを撫でながら、この地に転生できて本当に良かったと、改めて思った。
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