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最果ての森・成長編

82. 水と氷

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 ライの宣言通り、この日は魔法の練習をたらふく行った。夜ごはんの時間になるまでがっつり練習して、非常に充実した一日となった。
 あ、お昼ごはんとお昼寝の時間は、ジルがたっぷり確保してくれた。


 庭に出たとき、昨日作ったアイスウォールがまだ残っていたのには驚いた。
 ライいわく、通常のものより溶けるのが遅いらしい。もしかしたら、僕のアイスウォールは氷の温度がかなり低いのかもしれない。

 せっかく氷の魔法に手を付けたからと水属性魔法を練習することになり、色々な水属性魔法を教えてもらった。
 
 アイスニードルという氷の針を出す魔法を放ったとき、針の周辺の空気が白くなっていた。
 それを見たライが、「うわあ···かなり冷たそうな針だね。アースニードルより出血は少なくなるけど、血が通わなくなるからより怖いね···。うっかり触りでもしたら、指がポロッと落ちそうだよ」と引いていた。

 僕がファイアショットで地面を融かしてしまったときにジルが使っていた、フリーズという魔法も教えてもらった。対象の範囲または物を凍結させる魔法だ。
 きちんと範囲をイメージしたはずなのに、思っていた以上に広範囲に霜が降りて驚いた。「直接凍結されていなくても、周囲に冷たさが伝わったんじゃないかな。···ふふふ、ウィル君が凍らせた範囲には絶対に入りたくないよ」とライに言われた。

 それから、ランス系の魔法も教えてもらった。「ランスの魔法は、ショットと比べると発動までに少し時間がかかるんだけど、威力は強くなるよ。だいたいショットの三倍くらいの威力かなあ。ウィル君の場合は、···うん、ちょっと分からないね」と、ライが乾いた笑みを浮かべながら言った。
 水分なら提供できるよ?と言ってみたくなったが、やめておいた。

 他にも、ウィンドカッターの水バージョンや、霧を発生させる魔法、対象の範囲を冷却させる魔法など、様々な魔法を教わった。


「今日教えられるのはここまでかな。ウィル君、水と氷の初級魔法はマスターしたよ。おめでとう!」

 ライが微笑んで僕に拍手をする。

「おお~」

 僕もぱちぱちと拍手する。

「ふふ、かなりスムーズに習得できたね。あとは威力や魔力の調整をしていけば大丈夫だよ。欲を言えば、発動時間の短縮も目指してほしいかな。実戦ではかなり重要だから、それも念頭に置いて練習すると将来役に立つはずだよ」

 なるほど。魔物は待ってはくれないからね。早く魔法を放てるにこしたことはない。
 ···それにしても実戦か。なんだかんだゴブリンやサンドワームなどを倒しちゃっているからもう抵抗はあまりないが、積極的に討伐できるかと言われたら微妙な気がする。時間とともにそれも変わっていくかもしれないが。

「中級になると魔法が広範囲に及ぶものも多いから、そのときは別の場所で練習しようね」

 おお!場所を変えるというだけで、なんだかわくわくする。

 僕はわくわくし過ぎて、「ふふ、どこの魔物を倒してもらおうかな···」というライの呟きを聞き逃していた。

 
『庭のあちこちで冷気が漂っているのだ···』

 外に出て魔力操作の練習をしていたティアが、僕の作り出した惨状に震えている。

『ワレは毛皮を纏っているからまだ耐えられるが、ご主人ば大丈夫なのか?』

 ティアに聞かれ、そういえばそんなに寒くないなと気づく。
 あ、もしかして、もしかするんじゃないだろうか。
 僕はステータスを表示する。
 


 名前:ウィル

 種族:人族ヒューマン
 年齢:1
 レベル:56

 スキル:成長力促進、言語理解、魔力操作、魔力感知、テイム
 魔法:水属性魔法(初級)、氷属性魔法(初級)
    土属性魔法(初級)
    風属性魔法(初級)
    光属性魔法(初級)
    火弾ファイアショット闇弾ダークショット火壁ファイアウォール闇盾ダークシールド
 耐性:熱冷耐性

 加護:リインの加護
 称号:異世界からの転生者、黒龍帝の愛息子、雷帝の愛弟子



 やっぱり!熱耐性が、熱冷耐性に変わっている。
 アイスウォールを作るきっかけとなった当初の目的が達成され、嬉しくなる。

 
 練習の成果である氷の壁や針などを火属性魔法で溶かし、この日の練習を終えた。


「ふふ、それじゃあまた来るよ!」

 夜ごはんを終えて、ライが帰ろうとする。

「りゃい、ちゃんと、ねる?」

「ふふ、もちろんだよ。ウィル君」

 僕の問いに、ライが微笑んで答える。

「それじゃあ、おやすみ」

「おあしゅみ!」

 ばいばいと手を振ってライを見送り、そのあと僕もティアをぎゅっとして、幸せな睡眠タイムへ入っていった。
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