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最果ての森編
41. 料理
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ジルが夕飯を作ってくれている間、僕達はリビングで雑談をしながら待っていた。ジル一人に任せっきりで申し訳ないが、今の僕はまだ手伝えない。もう少し大きくなったら、絶対に料理を教えてもらうんだ。
あ、そういえば、ライは料理をしないのだろうか。テムとファムが食べる専門なのはなんとなく分かるが、ライなら手伝えそうなのに。
「うん?ウィル君、どうかしたのかい?」
ライが僕の視線に気づいた。
「りょーり、しゅる?」
ふふん、これは伝わっただろう。噛んでるけど。
「あ、料理ね。ふふ、私も手伝いたいんだけどね。ジルの手際が良すぎて手伝うとかえって時間がかかるんだ」
ジルのスペックは、とどまることを知らないのか。
「ふふ、だからせめて食器の片付けくらいは手伝おうと思っているんだ。それもジルがささっとやってくれることも多いけどね」
···とどまることを知らないようだ。
だとすると、僕が料理を習いたいとか、いつか一緒にやってみたいとか思うのは迷惑なのだろうか。いや、ジルは優しいからそんな事は思わないはず。···思わなくても、客観的には迷惑なのか?ちょっとネガティブな思考に陥っていると、テムが口を開いた。
「ライはよ、すげー丁寧だから、時間かかんじゃねーか?」
うん?どういうことだ?
「あ、そうか···。私はね、目分量というのがどうも苦手なんだ。分量をきっちり量ることは得意なんだけどね、そうしていると、時間がね」
「オレは量るのが苦手だぜ!」
なるほど。ライは真面目だもんな。目分量とか、大雑把なことが苦手なのだろう。そしてテムはなぜか得意気だ。
「ふふ、でもジルはそんなことはしていなくてね。前に、『なんで分量が分かるの?』って聞いたら、『勘だ』って。私にはそんな勘はないなあと思っちゃったよ」
僕にもない。それに僕はライほど几帳面でもない。あれ、僕って、ただのテキトー人間?
「ふふ、だからね、量る手際をよくしようと自宅で練習することもあるんだけどね。なかなか上手くいってないんだ」
「あはは!ジルはそんなこと気にしてないと思うよー!」
僕もファムに同意だ。ジルの器の大きさをナメてもらっちゃ困る。···あ、ということは、僕も、大丈夫なんじゃないだろうか。僕の思考がポジティブに切り替わる。
「りょーり、しゅる!」
ふんす、と気合いを入れる。
「ウィルくんも、お料理するのー?ジル、喜ぶと思うよー!」
「ふふ、そうだね。とても喜ぶと思うよ」
「あはは!ライもだよー!」
「え、私も?」
そうだ。ライは大雑把なのが苦手なだけで、料理をしたくないわけではないのだ。だったら、一緒にしたい。
「りょーり、しゅき?」
「···ふふ、そうだね。料理、好きだよ。ウィル君が料理するとき、私も一緒に教えてもらおうかな」
「だってよー、ジル?いいよねー?」
「ああ」
ジルが来た。どうやら出来上がったようだ。
「ウィル、料理に興味があるのか?」
「あう!」
美味しいご飯は、人を幸せにできるからね。僕も作ってみたいんだ。
「そうか。手伝ってくれると嬉しい」
そう言ってジルは僕の頭を撫でる。こういう言い方をしてくれるところが、イケメンだ。
「ふふ、それじゃあ早速手伝わせてもらおうかな。今日はお皿を運ぶだけになっちゃうけど」
「ああ、助かる」
二人がテキパキと準備をして、テーブルにお皿が並ぶ。いい匂いに、お腹が鳴りそうだ。
「食べよう」
ジルが僕を膝に乗せて言う。
「わーい!今日も美味しそー!」
「だな!ありがてーぜ!」
テムとファムの二人は早速パクついている。
今日のメニューは、いつものサラダと、それからミートボールだろうか。挽き肉を一口サイズに丸めたものがある。それと、赤いスープとパンだ。
サラダはいつものようにパリッと瑞々しくて、自然の恵をいただいてるという感じがする。家に畑があると、いつもこんなに新鮮な野菜が食べられるのか。これって、すごい贅沢なことなんじゃないだろうか。
新鮮野菜を毎食のように食べられるという幸せに浸りながら、サラダを半分ほど食べる。全部食べなかったのは、ミートボールと交互に食べたかったからだ。
ジルが僕の視線に気づいて、ミートボールを一つ口に入れてくれる。口の中で柔らかくほどける食感に、驚く。もうちょっと固いと思っていたからだ。これって、揚げたんじゃなくて、茹でたのかな?油っぽさがなくて食べやすい。そして中に、チーズが入っていたのだ!このとろける感じ、最高。このひと手間をかけてくれたジル、最高。
そしてミートボールのあとに食べるサラダもまたいい。口の中がリセットされる感じがして、またミートボールを食べたくなる。
このループをエンドレスにやりたいところだが、悔しいことに胃の容量は有限だ。赤いスープをいただくことにする。スープの中には、食べやすい大きさに切られた何種類もの野菜がたっぷり入っている。
「おいち~」
一口食べて、思わず声が出る。この赤は、トマトの赤だ。そしてこれは、確かミネストローネというスープだ。たくさんの種類の野菜が煮込まれていて、その分スープの味に深みが増している。味付けはおそらくシンプルで、野菜の美味しさが引き立っている。そしてこのスープには、パンがすっごく合うんだよな。
スープとパンのループもエンドレスにいきたい。ライの鞄みたいな胃袋が欲しいと、割と本気で思った。
お腹いっぱいになるまで食べた。今日も美味しかったな。
「ジル、美味しかったよー!」
ファムが椅子の上で器用に跳ねている。
「ジル、最強だな!」
テムはその褒め言葉、気に入ったのだろうか。
「今日もありがとう。今度、私に手伝えることがあったら教えてくれるかい?」
「ああ、助かる」
食後のまったりとした会話を楽しむ。お腹いっぱいで、ちょっと眠たくなってきたな。
「ふふ、ウィル君、もう寝たほうが良さそうだね」
ライが僕の様子を見て言う。分かりやすかったのだろうか。まあ、僕は半目なら得意だからな。
「ぼくたちも、帰ろっかー?」
「そうだなー、また遊びに来るぜ!」
「ウィルくん、ジル、またねー!おやすみー!」
「ブハハ!ウィル、眠そうだな!またな!」
やはり半目になっているようだ。賑やかな挨拶を残し、二人は家を出る。
「ふふ、それじゃあ私も帰るとするよ」
ライもそう言って席を立つ。
「あ、そうそう。ウィル君、私が買った服を着てくれてありがとうね。ふふ、とても似合ってるよ。それじゃあ、おやすみ」
ひらりと手を振りながらパチンとウインクをしてライは帰っていった。去り際がイケメン過ぎて、ちょっと目が覚めた。
あ、そういえば、ライは料理をしないのだろうか。テムとファムが食べる専門なのはなんとなく分かるが、ライなら手伝えそうなのに。
「うん?ウィル君、どうかしたのかい?」
ライが僕の視線に気づいた。
「りょーり、しゅる?」
ふふん、これは伝わっただろう。噛んでるけど。
「あ、料理ね。ふふ、私も手伝いたいんだけどね。ジルの手際が良すぎて手伝うとかえって時間がかかるんだ」
ジルのスペックは、とどまることを知らないのか。
「ふふ、だからせめて食器の片付けくらいは手伝おうと思っているんだ。それもジルがささっとやってくれることも多いけどね」
···とどまることを知らないようだ。
だとすると、僕が料理を習いたいとか、いつか一緒にやってみたいとか思うのは迷惑なのだろうか。いや、ジルは優しいからそんな事は思わないはず。···思わなくても、客観的には迷惑なのか?ちょっとネガティブな思考に陥っていると、テムが口を開いた。
「ライはよ、すげー丁寧だから、時間かかんじゃねーか?」
うん?どういうことだ?
「あ、そうか···。私はね、目分量というのがどうも苦手なんだ。分量をきっちり量ることは得意なんだけどね、そうしていると、時間がね」
「オレは量るのが苦手だぜ!」
なるほど。ライは真面目だもんな。目分量とか、大雑把なことが苦手なのだろう。そしてテムはなぜか得意気だ。
「ふふ、でもジルはそんなことはしていなくてね。前に、『なんで分量が分かるの?』って聞いたら、『勘だ』って。私にはそんな勘はないなあと思っちゃったよ」
僕にもない。それに僕はライほど几帳面でもない。あれ、僕って、ただのテキトー人間?
「ふふ、だからね、量る手際をよくしようと自宅で練習することもあるんだけどね。なかなか上手くいってないんだ」
「あはは!ジルはそんなこと気にしてないと思うよー!」
僕もファムに同意だ。ジルの器の大きさをナメてもらっちゃ困る。···あ、ということは、僕も、大丈夫なんじゃないだろうか。僕の思考がポジティブに切り替わる。
「りょーり、しゅる!」
ふんす、と気合いを入れる。
「ウィルくんも、お料理するのー?ジル、喜ぶと思うよー!」
「ふふ、そうだね。とても喜ぶと思うよ」
「あはは!ライもだよー!」
「え、私も?」
そうだ。ライは大雑把なのが苦手なだけで、料理をしたくないわけではないのだ。だったら、一緒にしたい。
「りょーり、しゅき?」
「···ふふ、そうだね。料理、好きだよ。ウィル君が料理するとき、私も一緒に教えてもらおうかな」
「だってよー、ジル?いいよねー?」
「ああ」
ジルが来た。どうやら出来上がったようだ。
「ウィル、料理に興味があるのか?」
「あう!」
美味しいご飯は、人を幸せにできるからね。僕も作ってみたいんだ。
「そうか。手伝ってくれると嬉しい」
そう言ってジルは僕の頭を撫でる。こういう言い方をしてくれるところが、イケメンだ。
「ふふ、それじゃあ早速手伝わせてもらおうかな。今日はお皿を運ぶだけになっちゃうけど」
「ああ、助かる」
二人がテキパキと準備をして、テーブルにお皿が並ぶ。いい匂いに、お腹が鳴りそうだ。
「食べよう」
ジルが僕を膝に乗せて言う。
「わーい!今日も美味しそー!」
「だな!ありがてーぜ!」
テムとファムの二人は早速パクついている。
今日のメニューは、いつものサラダと、それからミートボールだろうか。挽き肉を一口サイズに丸めたものがある。それと、赤いスープとパンだ。
サラダはいつものようにパリッと瑞々しくて、自然の恵をいただいてるという感じがする。家に畑があると、いつもこんなに新鮮な野菜が食べられるのか。これって、すごい贅沢なことなんじゃないだろうか。
新鮮野菜を毎食のように食べられるという幸せに浸りながら、サラダを半分ほど食べる。全部食べなかったのは、ミートボールと交互に食べたかったからだ。
ジルが僕の視線に気づいて、ミートボールを一つ口に入れてくれる。口の中で柔らかくほどける食感に、驚く。もうちょっと固いと思っていたからだ。これって、揚げたんじゃなくて、茹でたのかな?油っぽさがなくて食べやすい。そして中に、チーズが入っていたのだ!このとろける感じ、最高。このひと手間をかけてくれたジル、最高。
そしてミートボールのあとに食べるサラダもまたいい。口の中がリセットされる感じがして、またミートボールを食べたくなる。
このループをエンドレスにやりたいところだが、悔しいことに胃の容量は有限だ。赤いスープをいただくことにする。スープの中には、食べやすい大きさに切られた何種類もの野菜がたっぷり入っている。
「おいち~」
一口食べて、思わず声が出る。この赤は、トマトの赤だ。そしてこれは、確かミネストローネというスープだ。たくさんの種類の野菜が煮込まれていて、その分スープの味に深みが増している。味付けはおそらくシンプルで、野菜の美味しさが引き立っている。そしてこのスープには、パンがすっごく合うんだよな。
スープとパンのループもエンドレスにいきたい。ライの鞄みたいな胃袋が欲しいと、割と本気で思った。
お腹いっぱいになるまで食べた。今日も美味しかったな。
「ジル、美味しかったよー!」
ファムが椅子の上で器用に跳ねている。
「ジル、最強だな!」
テムはその褒め言葉、気に入ったのだろうか。
「今日もありがとう。今度、私に手伝えることがあったら教えてくれるかい?」
「ああ、助かる」
食後のまったりとした会話を楽しむ。お腹いっぱいで、ちょっと眠たくなってきたな。
「ふふ、ウィル君、もう寝たほうが良さそうだね」
ライが僕の様子を見て言う。分かりやすかったのだろうか。まあ、僕は半目なら得意だからな。
「ぼくたちも、帰ろっかー?」
「そうだなー、また遊びに来るぜ!」
「ウィルくん、ジル、またねー!おやすみー!」
「ブハハ!ウィル、眠そうだな!またな!」
やはり半目になっているようだ。賑やかな挨拶を残し、二人は家を出る。
「ふふ、それじゃあ私も帰るとするよ」
ライもそう言って席を立つ。
「あ、そうそう。ウィル君、私が買った服を着てくれてありがとうね。ふふ、とても似合ってるよ。それじゃあ、おやすみ」
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