22 / 115
最果ての森編
21. 魔法の練習②
しおりを挟む
「マンティコアは···とりあえず、血抜きだけしておこうか」
「俺がやっておく」
「ありがとう、ジル」
「ああ」
ジルが再び人面ライオンを抱えて家の裏へ。そこに血抜き出来る場所があるのだろうか。
ライが僕の方へ向き直る。
「念の為に吸魔石を持っていて良かったよ。本当にもう何ともない?」
「あう」
かなり心配をかけてしまったようだ。
「今は応急処置で吸魔石を使って体内の魔力を抜いたけど、また増えるから、体を慣らす必要があるんだ。魔法を使って魔力を消費しつつ、増えていく魔力に慣れようね」
「あう」
体が慣れるまでは大変そうだな。でもこれでやっと魔法が使える!
「それにしても、さっきのアースショットは何だったんだい?すごい速さで飛んで行ったよ」
「あう~」
言葉では説明出来ないので、地面に絵を描く。ドリル型弾丸だ。くるっと矢印も描いて、回転を表す。
「うーん、こんな形をイメージしたんだね?ネジの先端みたいだ。これは、回ってる?回転を加えたのかい?」
おお、分かってくれた。
「あうあう!」
「なるほど···、こうなると···。ふむ···。こうなって···、なるほど···!」
一人考え込んで何やら結論を得たようだ。
「ウィル君、すごいよ!これは貫通力を高めたものなんだね!形を工夫して回転を加えることで、普通のアースショットの何倍もの威力が出せる!弾の形や回転速度、魔力量などを変えて、色んなパターンで検証しなくては!」
ライが興奮している。
「こんな発想、今まで無かった!ああ、なんてもったいない時間を過ごしたんだろう!きっと他の魔法も、工夫出来ることがたくさんあるはずだ!」
ライの興奮が止まらない。
興奮している人を見ると、冷静になれるな、と冷静に思った。
そこでふと気がついた。
そういえば、僕、さっきから一人で立てているな。レベルアップの恩恵かな?体が軽い気がする。走ってみたいけど、興奮状態のライを放っておけないので、とりあえずライの周りを歩いてみる。
おお、歩ける!軽い。スキップ出来そうなくらい軽い。
ジルが血抜きから戻り目にしたのは、興奮して一人で喋るライと、その周りを軽やかにスキップしている僕だった。
「ふふふ、少し取り乱してしまったよ。気にしないでもらえると嬉しいな」
無表情で引いているジルを見て我に返ったライが、恥ずかしそうに言う。
僕も冷静とか言いながら冷静ではなかったようだ。
「えっと、そうだ、魔力を消費しないといけなかったね」
そうだった。
「それじゃあ、光属性の魔法を使ってみようか。今から教える魔法は、光属性の初級魔法でね、生活魔法に分類されているんだ。日常生活で使えるし、攻撃力はないから安心して使えるよ」
ほうほう。それなら安心だ。
「暗闇を照らす魔法だよ。指先を見ててね。『灯』」
ライがそう唱えると、ライの人差し指の先に光が灯った。
おお!白色のきれいな光だ。
「こうやって、指先に魔力を集めて光らせるのが一般的かな。イメージしやすいんだ。でも、自分がイメージ出来るなら、光らせる場所はどこでもいいんだよ」
なるほど。これって、光の色は変えられないのかな?試しに、赤い光を想像する。
「『灯』」
か、噛むのは仕方がないんだ。
でも成功した!右手の人差し指の先が赤く光っている。
「え?それ、火じゃないよね?え?赤い光?」
ライが混乱している。
左手でもやってみたい。今度は緑だ。
「『灯』」
灯った!
「え?緑?」
ライの混乱が続く。
今度は右手の中指にしようかな。
「『灯』」
やった!黄色に光った。
「···」
ライが現実を逃避した。
今度は···肩とかもいけるんだろうか?
「『灯』」
両肩が青く光る。
やった!出来た!
それからも体のあちこちを色んな色で光らせ、全身でイルミネーションを楽しんだ。
「ふふ、ふふふふふ」
ライが壊れた。
「綺麗だな」
ジルのこの動じなさ、素敵。
ふう、ちょっと疲れた。魔力をいきなり使い過ぎたからだろうか。
「ふふふ、魔力は十分消費できたみたいだね。今後もこまめに使っていくといいよ」
ライが悟りを開いたような顔をして言う。
家の中に戻り、しばし休憩。
しばらくのんびりしていると、ジルがふと思い出したように言う。
「ライ、時間は大丈夫なのか?」
「ああ!もうこんな時間!すっかり忘れてたよ!急がなきゃ!」
ライは何やら用事があるようだ。
「ジル、これ、吸魔石だよ。念の為に渡しておくから、万一ウィル君がさっきのような状態になったら、これを握らせてね」
「ああ、助かる」
「それから、ウィル君が倒したマンティコアは、私がギルドに持って行って買い取ってもらおうか?お金は次に来る時に持ってくるよ」
「いや、持っていてくれ。吸魔石の礼だ」
「えっ、それじゃあこっちが儲かっちゃうよ」
「それなら、ウィルのために色々してくれる礼だ」
「うーん、それは好きでしてるからいいんだけどね。それじゃあ今回だけは貰っておくよ。次からは、ちゃんと受け取ってもらうからね!」
「ああ、分かった」
「それじゃあ、私はこれから用事があるから、ウィル君、また今度ね。寝る前に多めに魔力を消費しておくといいよ」
そう言って、ライは慌ただしく家を出た。
···『次からは』って、今後も僕が魔物を倒す前提なのか。
これからはちゃんと目を開けて撃つようにしよう。
種族:人族
年齢:1
レベル:27
スキル:成長力促進、言語理解、魔力操作、魔力感知
魔法:土弾、灯
耐性:
加護:リインの加護
称号:異世界からの転生者、黒龍帝の愛息子
「俺がやっておく」
「ありがとう、ジル」
「ああ」
ジルが再び人面ライオンを抱えて家の裏へ。そこに血抜き出来る場所があるのだろうか。
ライが僕の方へ向き直る。
「念の為に吸魔石を持っていて良かったよ。本当にもう何ともない?」
「あう」
かなり心配をかけてしまったようだ。
「今は応急処置で吸魔石を使って体内の魔力を抜いたけど、また増えるから、体を慣らす必要があるんだ。魔法を使って魔力を消費しつつ、増えていく魔力に慣れようね」
「あう」
体が慣れるまでは大変そうだな。でもこれでやっと魔法が使える!
「それにしても、さっきのアースショットは何だったんだい?すごい速さで飛んで行ったよ」
「あう~」
言葉では説明出来ないので、地面に絵を描く。ドリル型弾丸だ。くるっと矢印も描いて、回転を表す。
「うーん、こんな形をイメージしたんだね?ネジの先端みたいだ。これは、回ってる?回転を加えたのかい?」
おお、分かってくれた。
「あうあう!」
「なるほど···、こうなると···。ふむ···。こうなって···、なるほど···!」
一人考え込んで何やら結論を得たようだ。
「ウィル君、すごいよ!これは貫通力を高めたものなんだね!形を工夫して回転を加えることで、普通のアースショットの何倍もの威力が出せる!弾の形や回転速度、魔力量などを変えて、色んなパターンで検証しなくては!」
ライが興奮している。
「こんな発想、今まで無かった!ああ、なんてもったいない時間を過ごしたんだろう!きっと他の魔法も、工夫出来ることがたくさんあるはずだ!」
ライの興奮が止まらない。
興奮している人を見ると、冷静になれるな、と冷静に思った。
そこでふと気がついた。
そういえば、僕、さっきから一人で立てているな。レベルアップの恩恵かな?体が軽い気がする。走ってみたいけど、興奮状態のライを放っておけないので、とりあえずライの周りを歩いてみる。
おお、歩ける!軽い。スキップ出来そうなくらい軽い。
ジルが血抜きから戻り目にしたのは、興奮して一人で喋るライと、その周りを軽やかにスキップしている僕だった。
「ふふふ、少し取り乱してしまったよ。気にしないでもらえると嬉しいな」
無表情で引いているジルを見て我に返ったライが、恥ずかしそうに言う。
僕も冷静とか言いながら冷静ではなかったようだ。
「えっと、そうだ、魔力を消費しないといけなかったね」
そうだった。
「それじゃあ、光属性の魔法を使ってみようか。今から教える魔法は、光属性の初級魔法でね、生活魔法に分類されているんだ。日常生活で使えるし、攻撃力はないから安心して使えるよ」
ほうほう。それなら安心だ。
「暗闇を照らす魔法だよ。指先を見ててね。『灯』」
ライがそう唱えると、ライの人差し指の先に光が灯った。
おお!白色のきれいな光だ。
「こうやって、指先に魔力を集めて光らせるのが一般的かな。イメージしやすいんだ。でも、自分がイメージ出来るなら、光らせる場所はどこでもいいんだよ」
なるほど。これって、光の色は変えられないのかな?試しに、赤い光を想像する。
「『灯』」
か、噛むのは仕方がないんだ。
でも成功した!右手の人差し指の先が赤く光っている。
「え?それ、火じゃないよね?え?赤い光?」
ライが混乱している。
左手でもやってみたい。今度は緑だ。
「『灯』」
灯った!
「え?緑?」
ライの混乱が続く。
今度は右手の中指にしようかな。
「『灯』」
やった!黄色に光った。
「···」
ライが現実を逃避した。
今度は···肩とかもいけるんだろうか?
「『灯』」
両肩が青く光る。
やった!出来た!
それからも体のあちこちを色んな色で光らせ、全身でイルミネーションを楽しんだ。
「ふふ、ふふふふふ」
ライが壊れた。
「綺麗だな」
ジルのこの動じなさ、素敵。
ふう、ちょっと疲れた。魔力をいきなり使い過ぎたからだろうか。
「ふふふ、魔力は十分消費できたみたいだね。今後もこまめに使っていくといいよ」
ライが悟りを開いたような顔をして言う。
家の中に戻り、しばし休憩。
しばらくのんびりしていると、ジルがふと思い出したように言う。
「ライ、時間は大丈夫なのか?」
「ああ!もうこんな時間!すっかり忘れてたよ!急がなきゃ!」
ライは何やら用事があるようだ。
「ジル、これ、吸魔石だよ。念の為に渡しておくから、万一ウィル君がさっきのような状態になったら、これを握らせてね」
「ああ、助かる」
「それから、ウィル君が倒したマンティコアは、私がギルドに持って行って買い取ってもらおうか?お金は次に来る時に持ってくるよ」
「いや、持っていてくれ。吸魔石の礼だ」
「えっ、それじゃあこっちが儲かっちゃうよ」
「それなら、ウィルのために色々してくれる礼だ」
「うーん、それは好きでしてるからいいんだけどね。それじゃあ今回だけは貰っておくよ。次からは、ちゃんと受け取ってもらうからね!」
「ああ、分かった」
「それじゃあ、私はこれから用事があるから、ウィル君、また今度ね。寝る前に多めに魔力を消費しておくといいよ」
そう言って、ライは慌ただしく家を出た。
···『次からは』って、今後も僕が魔物を倒す前提なのか。
これからはちゃんと目を開けて撃つようにしよう。
種族:人族
年齢:1
レベル:27
スキル:成長力促進、言語理解、魔力操作、魔力感知
魔法:土弾、灯
耐性:
加護:リインの加護
称号:異世界からの転生者、黒龍帝の愛息子
51
お気に入りに追加
5,826
あなたにおすすめの小説
転生貴族のスローライフ
マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた
しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった
これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である
*基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします
オタクおばさん転生する
ゆるりこ
ファンタジー
マンガとゲームと小説を、ゆるーく愛するおばさんがいぬの散歩中に異世界召喚に巻き込まれて転生した。
天使(見習い)さんにいろいろいただいて犬と共に森の中でのんびり暮そうと思っていたけど、いただいたものが思ったより強大な力だったためいろいろ予定が狂ってしまい、勇者さん達を回収しつつ奔走するお話になりそうです。
投稿ものんびりです。(なろうでも投稿しています)
美少女に転生して料理して生きてくことになりました。
ゆーぞー
ファンタジー
田中真理子32歳、独身、失業中。
飲めないお酒を飲んでぶったおれた。
気がついたらマリアンヌという12歳の美少女になっていた。
その世界は加護を受けた人間しか料理をすることができない世界だった
異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~
夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。
雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。
女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。
異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。
調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。
そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。
※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。
※サブタイトル追加しました。
私を裏切った相手とは関わるつもりはありません
みちこ
ファンタジー
幼なじみに嵌められて処刑された主人公、気が付いたら8年前に戻っていた。
未来を変えるために行動をする
1度裏切った相手とは関わらないように過ごす
うちの娘が悪役令嬢って、どういうことですか?
プラネットプラント
ファンタジー
全寮制の高等教育機関で行われている卒業式で、ある令嬢が糾弾されていた。そこに令嬢の父親が割り込んできて・・・。乙女ゲームの強制力に抗う令嬢の父親(前世、彼女いない歴=年齢のフリーター)と従者(身内には優しい鬼畜)と異母兄(当て馬/噛ませ犬な攻略対象)。2016.09.08 07:00に完結します。
小説家になろうでも公開している短編集です。
転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜
犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。
馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。
大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。
精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。
人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。
全能で楽しく公爵家!!
山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。
未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう!
転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。
スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。
※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。
※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる