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最果ての森編
18. 大人達の会話
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ウィルが寝た後。
大人達はテーブルを囲んで話し合う。話題はもちろん、ウィルについてだ。
「ジル、ウィル君をこれからどう育てていくつもりなんだい?」
ライがそう切り出す。
「おうおう、急に現れた赤ん坊だもんな。ジル、子育て出来んのか?」
「でも、ウィルくんは賢いよー。ただの赤ん坊じゃないよねー」
「そうだな、あいつは賢い。異世界から転生したのだから、まずはこちらの世界の常識を教えていこうと思う。あとは魔法の練習だな。本人も興味を持っているようだ」
「そうだよね!魔法を教えないとね!それは私に任せてよ!」
ライの目が輝く。
「オレも手伝うぜ!」
「ぼくもー!」
「ふふふ、そうだね、その時はよろしくね」
ライの目が輝きを失う。
「でもよ、常識って何を教えればいいんだ?」
「言葉は分かるみたいだよねー。文字はどうなのかなあ?」
「そうだね、それは確認した方がいいね。あとは地理と歴史と、うーん、制度、法律とか?ウィル君がいた世界とどう違うか私達は分からないから、難しいね」
「···学校で教わることを教えたらいいんじゃないか?」
「学校か!オレは行ってないから分かんねーぞ」
「ぼくも分かんないなー。ライなら分かるんじゃないの?」
「そうだね。知り合いに詳しい人がいるから、聞いてみるよ。その他は、一緒に暮らしていく中で気づいたことをその都度教えていけばいいかな」
「そうだな、よろしく頼む」
「ふふ、ウィル君のためだからね、私に出来ることは喜んでするよ」
「そうだぜ!ウィルの父親はジルだが、オレ達だって面倒見るつもりだからな!」
良いことを言った、とドヤ顔のテム。
「そうだよー!ウィルくん、かわいいよね。一緒に遊んだりしたいなあ」
「ふふふ、くれぐれもウィル君に危険が及ばない程度にね」
「大丈夫だよー!遊ぶだけだもん!」
このスライム、水遊びがしたいと言って大きな湖を作り、砂遊びがしたいと言って山の一部を切り崩し、隠れんぼがしたいと言って隠れたテムを見つけるために周りの木を数十本切り倒した前科があるのだ。
気ままに我が道を行くこのスライムは、道を塞ぐものを遊び倒して踏み越えて行くのだ。知らないだけで、他にも前科は山積していると思われる。
「俺が見ておくから大丈夫だろう」
「え!ジルも遊んでくれるのー!やったあ!」
「ふふふ、そうだね、大丈夫だね」
諦めが大事なときもある。ライはそう悟っている。
「他に話しておくことはあるかな?」
「そうだな···。ウィルが来てから、この辺りの森が少しざわついているようだ」
「それって、ウィルくんを狙う魔物がいるってことー?」
「何だと!?そんなこと、オレが許さねーぜ!」
「この辺りにいる魔物達からしたら、ウィル君は弱いからね。ジルがいなければ、格好の獲物なんだと思うよ」
「ああ。俺が近くで警戒しているから大丈夫だと思うが、中には無謀な奴がいるかもしれん」
「気をつけていた方がいいね。私もここにいる間は、周囲を警戒するよ」
「オレも!見回りするぜ!」
「ぼくもー!ウィルくんを傷つけるやつには、お仕置きだよー!」
お仕置きの内容が気になるが、聞く者はいない。世の中には、知らない方がいいこともあるのだ。
「皆、助かる」
「ふふ、当たり前だよ。みんなウィル君が大切だからね」
「そうだぜ!ウィルの父親はジルだが、オレ達だって面倒見るつもりだからな!」
ドヤ顔のテム。この台詞、よほど気に入ったのだろうか。
そんなこんなで、解散となる。
「それじゃあ、私は知り合いに聞いてみるよ」
「オレも!知り合いに聞いてみるぜ!常識とか、魔法とかだろ!」
「テムってぼくたちの他に、知り合いいたっけー?」
「ば、ばっかやろう!いるに決まってんだろ!オレは知り合いが多いんだからな!オレが知ってるヤツ、すげー多いんだからな!今日も一人増えたんだぜ!」
それは知り合いではなく、一方的に知っているだけなのでは。
ツッコむのは可哀相なので、生暖かい目で見るにとどめる。
人間観察を趣味とする実は人見知りの妖精テムは、空間魔法を駆使し、観察対象に気づかれることなく観察を行うことが出来るのだ。むしろ気づかれそうなギリギリのラインを狙うことでスリルを感じている。そんな事をしているうちに、スキル『隠密』を獲得してしまった。これでさらに観察が捗っている。
しかし、それで知り合いが増えることは、決してない。
今日増えた知り合いというのはウィルのことだろう。どうやら赤ん坊は、大丈夫らしい。
「ふふ、それじゃあまたね、ジル」
「また来るぜ!」
「またねー!」
「ああ、またな」
こうして、騒がしい一日が終わる。
大人達はテーブルを囲んで話し合う。話題はもちろん、ウィルについてだ。
「ジル、ウィル君をこれからどう育てていくつもりなんだい?」
ライがそう切り出す。
「おうおう、急に現れた赤ん坊だもんな。ジル、子育て出来んのか?」
「でも、ウィルくんは賢いよー。ただの赤ん坊じゃないよねー」
「そうだな、あいつは賢い。異世界から転生したのだから、まずはこちらの世界の常識を教えていこうと思う。あとは魔法の練習だな。本人も興味を持っているようだ」
「そうだよね!魔法を教えないとね!それは私に任せてよ!」
ライの目が輝く。
「オレも手伝うぜ!」
「ぼくもー!」
「ふふふ、そうだね、その時はよろしくね」
ライの目が輝きを失う。
「でもよ、常識って何を教えればいいんだ?」
「言葉は分かるみたいだよねー。文字はどうなのかなあ?」
「そうだね、それは確認した方がいいね。あとは地理と歴史と、うーん、制度、法律とか?ウィル君がいた世界とどう違うか私達は分からないから、難しいね」
「···学校で教わることを教えたらいいんじゃないか?」
「学校か!オレは行ってないから分かんねーぞ」
「ぼくも分かんないなー。ライなら分かるんじゃないの?」
「そうだね。知り合いに詳しい人がいるから、聞いてみるよ。その他は、一緒に暮らしていく中で気づいたことをその都度教えていけばいいかな」
「そうだな、よろしく頼む」
「ふふ、ウィル君のためだからね、私に出来ることは喜んでするよ」
「そうだぜ!ウィルの父親はジルだが、オレ達だって面倒見るつもりだからな!」
良いことを言った、とドヤ顔のテム。
「そうだよー!ウィルくん、かわいいよね。一緒に遊んだりしたいなあ」
「ふふふ、くれぐれもウィル君に危険が及ばない程度にね」
「大丈夫だよー!遊ぶだけだもん!」
このスライム、水遊びがしたいと言って大きな湖を作り、砂遊びがしたいと言って山の一部を切り崩し、隠れんぼがしたいと言って隠れたテムを見つけるために周りの木を数十本切り倒した前科があるのだ。
気ままに我が道を行くこのスライムは、道を塞ぐものを遊び倒して踏み越えて行くのだ。知らないだけで、他にも前科は山積していると思われる。
「俺が見ておくから大丈夫だろう」
「え!ジルも遊んでくれるのー!やったあ!」
「ふふふ、そうだね、大丈夫だね」
諦めが大事なときもある。ライはそう悟っている。
「他に話しておくことはあるかな?」
「そうだな···。ウィルが来てから、この辺りの森が少しざわついているようだ」
「それって、ウィルくんを狙う魔物がいるってことー?」
「何だと!?そんなこと、オレが許さねーぜ!」
「この辺りにいる魔物達からしたら、ウィル君は弱いからね。ジルがいなければ、格好の獲物なんだと思うよ」
「ああ。俺が近くで警戒しているから大丈夫だと思うが、中には無謀な奴がいるかもしれん」
「気をつけていた方がいいね。私もここにいる間は、周囲を警戒するよ」
「オレも!見回りするぜ!」
「ぼくもー!ウィルくんを傷つけるやつには、お仕置きだよー!」
お仕置きの内容が気になるが、聞く者はいない。世の中には、知らない方がいいこともあるのだ。
「皆、助かる」
「ふふ、当たり前だよ。みんなウィル君が大切だからね」
「そうだぜ!ウィルの父親はジルだが、オレ達だって面倒見るつもりだからな!」
ドヤ顔のテム。この台詞、よほど気に入ったのだろうか。
そんなこんなで、解散となる。
「それじゃあ、私は知り合いに聞いてみるよ」
「オレも!知り合いに聞いてみるぜ!常識とか、魔法とかだろ!」
「テムってぼくたちの他に、知り合いいたっけー?」
「ば、ばっかやろう!いるに決まってんだろ!オレは知り合いが多いんだからな!オレが知ってるヤツ、すげー多いんだからな!今日も一人増えたんだぜ!」
それは知り合いではなく、一方的に知っているだけなのでは。
ツッコむのは可哀相なので、生暖かい目で見るにとどめる。
人間観察を趣味とする実は人見知りの妖精テムは、空間魔法を駆使し、観察対象に気づかれることなく観察を行うことが出来るのだ。むしろ気づかれそうなギリギリのラインを狙うことでスリルを感じている。そんな事をしているうちに、スキル『隠密』を獲得してしまった。これでさらに観察が捗っている。
しかし、それで知り合いが増えることは、決してない。
今日増えた知り合いというのはウィルのことだろう。どうやら赤ん坊は、大丈夫らしい。
「ふふ、それじゃあまたね、ジル」
「また来るぜ!」
「またねー!」
「ああ、またな」
こうして、騒がしい一日が終わる。
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