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最果ての森編

16. 夜ご飯

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 ジルが夜ご飯を作ってくれた。

 テムとファムはお昼同様、いつの間にかクッションを積み重ねた椅子でスタンバイしている。

 僕も定位置に移動する。
 そう、ジルの膝の上だ。

 夜ご飯は何だろう。
 サラダはお昼に食べたのと似ているが、ドレッシングが違うようだ。

 じっと見ていると、ジルがサラダにドレッシングをかけてくれた。
 野菜はすでに細かくしてある。
 なんてイケメンなんだ。

 感動しながらあむっと食いつく。
 今度のドレッシングはクリーミーだ。美味しい。葉野菜の瑞々しさと、ドレッシングの豊かな風味がお互いを引き立てている。
 ああ、美味しい。

「ウィル、葉っぱで腹が膨れんのか?肉食った方がいいぜ!美味いぞ!」

「そうだねー!サラダも美味しいけど、お肉も美味しいよー!」

 幸せに浸りながらサラダをむしゃむしゃ食べていると、テムとファムがそう声を掛けてきた。

 はっ、そうか。胃袋は有限だ。

 二人に感謝しつつ、テーブルの中心にどんと乗せられた大皿に視線を移す。
 見た目はグラタンだ。

「食べてみるか?」

「あうあう!」

 食べたい!

 ジルが小皿に取り分けてくれる。
 上にあるのはチーズなのか?いい焼き色がついていて、そこから香ばしい香りが漂っている。

「まだ少し熱いからな」

 ジルがフーフーしてくれる。
 なんてイケメンなんだ。

 早く、早く、と待ちきれずに背伸びをしてしまう。

「ほら、いいぞ」

 エメラルドの瞳が優しく揺れているのが見え、ちょっと恥ずかしくなった。
 でもこの湧き上がる食欲には勝てないんだ。

 あむっと食いつく。
 んんー!美味しい!

 これはマッシュポテトのグラタンかな。すごく滑らかな食感だ。丁寧に裏ごしされているのだろう。それにほんの少しミルクの風味を感じ、それがチーズとポテトの相性を更に良くしている。
 それと下層にあるお肉。これはもしかして、お昼に食べたお肉では?デミグラスソースとマッシュポテトの相性は抜群だ。しかもお肉は柔らかい上に小さめにカットされていて、食感の面でも非常に合う。

 これが、リメイクというやつか!

 僕は前世では料理をしていた。けど上手い訳ではなかったと思う。おでんとかカレーとか、一度にたくさんできるものを作って、飽きても無くなるまで同じ物を食べて続けていた。

 こんな風に違う料理に変身させられるなんて!

 感動でぷるぷるしてしまう。

「美味いか?」

「あうあう!」

「そうか」

 頭を撫でられる。
 もう少し大きくなったら、僕がジルの頭を撫でてあげよう。ジルは料理のイケメンだ。

 ちょっと自分でもよく分からない思考に陥りながらも、口の動きは止まらない。

 よし、スープもいただこう。

「あーう」

「スープか?」

 すぐに気づいてくれるこの優しさ、プライスレス。

 もしかしてスープもリメイクか?
 お昼に食べたときよりもじっくり煮込まれ、野菜が柔らかくとろっとしている。昼には入っていなかった鶏肉のようなものがプラスされて、コクがぐっと増している。昼はあっさりしたスープだと思ったが、今では煮込まれて味が凝縮し、鶏肉の旨味も相まって、かなり食べ応えのあるスープだ。

 ああ、至福。

「ふふ、ウィル君はジルの料理が大好きみたいだね」

 当たり前じゃないか!こんなに美味しいんだから!

「あうあう!」

「オレもジルの作るメシは好きだぞ!どれもめちゃくちゃ美味いよなー!」

「ふふ、そうだね。美味しいね」

「ぼくも好きー!」

「そうか。まだあるからな。遠慮せず食べろよ」

「おう!ありがてーぜ!お、このスープも絶品だぞ!ほらファム、食ってみろよ」

「ほんとだ!美味しいー!もう、お鍋に入りたいくらいだよー」

 前世のテレビで、クレープに包まれたいと言っていた人がいたが、そんな感じか?
 その時は理解出来なかったが、今なら、同意できる。
 激しく、同意する。

「そ、そうか。今度入ってみるか?」

 ···え、いいの?
 同意するって思った手前、止められないけど、え、いいの?

「わーい!お鍋に入るの、夢だったんだー!」

 ファム、そんな夢持ってたの? 

「ふふふ、面白そうだね。やる時は私も呼んでね」

 ライさん、悪ノリしちゃうタイプなのね。

「うおー!ぜってー面白いぞ!オレは?オレは何に入ればいい!?」

 入る前提なのね。

「そうだな···考えておく」

 これ、気づいたけど、誰も止める人がいない。

 早く成長したい。
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