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最果ての森編
5. 夢現
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夢を見た。
これは前世の僕と···父親だ。
『優斗、バイトしてるんだってな?』
『えっ···うん、そうだよ』
『そうかそうか、えらいなあ』
え、褒めてくれた?
『ところで金、持ってるか?一万ほど貸してほしいんだわ』
ああ···
『なに、すぐ倍にして返すからよ!』
嫌だ···
『ほら、早く。金持ってんだろ?』
『持ってない···』
『ああ?嘘吐くんじゃねーよ!金出せ!財布持ってこい!』
ドンッと肩をどつかれる。
緩慢な動作で財布を差し出すと、サッと奪い取られる。
『なんだよこんだけかよ。次は二万な』
入っていたお札を全て抜き取ると、財布を投げつけてそう言った。
『二万な。返事しろよ!』
ドスッとお腹を蹴られる。
『うっ···分かった···』
『いい子だなあ、優斗は。じゃあ、よろしく!』
そう言って家を出た。僕の財布にあった数千円は、酒代としてすぐに消えるのだろう。
虚しい。
ふざけるな、お前のためにアルバイトをしてるんじゃないと、叫びたい。
それができないのは、僕が弱いからなのか。
少しでも反抗すると激昂する父親が怖い。
褒められると嬉しいと思ってしまう。裏にあるのは利用できるという薄汚い考えだと分かっているのに。
期待できないものに期待してしまうのは何故なんだろう。
こんな最低な奴でも、父親だからか。
ああ、情けない。
変わりたい。
自由になりたい。
どうにもならない現実に押し潰されそうになる。
そうだ、泣こう。
涙に嫌な感情を込めて出し切るまで泣くんだ。
空っぽになれば、また現実と向き合う気力が出ると思うから。
だから今は泣こう。
一人で、泣こう。
これは夢だ。分かっているのに胸が苦しくなる。
そうだ、泣こう。
夢だけど、辛いんだから仕方ない。
一人で泣いていると、ふと人の気配がした。
優しく頭を撫でてくれてる気がする。
眠りにつく前に感じたのと同じ温もりに安心感を覚える。
ああ、一人じゃないのなら。
僕は強くなれると思うんだ。
これは前世の僕と···父親だ。
『優斗、バイトしてるんだってな?』
『えっ···うん、そうだよ』
『そうかそうか、えらいなあ』
え、褒めてくれた?
『ところで金、持ってるか?一万ほど貸してほしいんだわ』
ああ···
『なに、すぐ倍にして返すからよ!』
嫌だ···
『ほら、早く。金持ってんだろ?』
『持ってない···』
『ああ?嘘吐くんじゃねーよ!金出せ!財布持ってこい!』
ドンッと肩をどつかれる。
緩慢な動作で財布を差し出すと、サッと奪い取られる。
『なんだよこんだけかよ。次は二万な』
入っていたお札を全て抜き取ると、財布を投げつけてそう言った。
『二万な。返事しろよ!』
ドスッとお腹を蹴られる。
『うっ···分かった···』
『いい子だなあ、優斗は。じゃあ、よろしく!』
そう言って家を出た。僕の財布にあった数千円は、酒代としてすぐに消えるのだろう。
虚しい。
ふざけるな、お前のためにアルバイトをしてるんじゃないと、叫びたい。
それができないのは、僕が弱いからなのか。
少しでも反抗すると激昂する父親が怖い。
褒められると嬉しいと思ってしまう。裏にあるのは利用できるという薄汚い考えだと分かっているのに。
期待できないものに期待してしまうのは何故なんだろう。
こんな最低な奴でも、父親だからか。
ああ、情けない。
変わりたい。
自由になりたい。
どうにもならない現実に押し潰されそうになる。
そうだ、泣こう。
涙に嫌な感情を込めて出し切るまで泣くんだ。
空っぽになれば、また現実と向き合う気力が出ると思うから。
だから今は泣こう。
一人で、泣こう。
これは夢だ。分かっているのに胸が苦しくなる。
そうだ、泣こう。
夢だけど、辛いんだから仕方ない。
一人で泣いていると、ふと人の気配がした。
優しく頭を撫でてくれてる気がする。
眠りにつく前に感じたのと同じ温もりに安心感を覚える。
ああ、一人じゃないのなら。
僕は強くなれると思うんだ。
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