上 下
20 / 20

11

しおりを挟む
数日が過ぎた

あれから黒谷は今までと変わりなく接してくれた

友人の時と同じ態度で


伊野も変わりなく

でも、百合だけは最近は他の女子たちと楽しそうにしている

俺、百合に何かしたのだろうか?


「どうしたの?」

「おわっ!」


ガタン!と椅子から転げ落ちる

考え事をしていたらいつの間にか至近距離に春の顔があって焦ってしまった…

頭がガンガンする

落ちたときにぶつけたか?
ズキズキと痛む頭を撫で、ため息を漏らした

どうして俺はこうなのだろう
春はきっとノーマルなのに…こんな……


「大丈夫?」

「あー、うん。平気」

「すごい音だったね」

「思いっきり頭ぶつけたからな……」


春はごめんと謝りながら、俺を起こしてくれた
椅子に座りなおすと、春はなにかあったの? と声をかけてくれた
春に話すかどうか悩んでいると、それを察してなのか優しく微笑んでくれた


「話せないことなら別に無理に話さなくていいよ。話さなかったからってたくみのことを嫌いになったりしないから大丈夫だよ」

「春……お前」

「いい男でしょ、僕って」

「自分で言うなっつーの」


二人して腹を抱えるくらい笑って、落ち着いてから俺は春に話す決意をする


「あのさ、俺の友達なんだけどさ」

「伊野くんと、黒谷くんと、赤瀬さんのこと?」


さらりと春からみんなの名前が出て、少し驚いた
こいつ、皆に興味ないと思ってたけど案外人のこと見てるんだな……

ちょっと見直したかも


「そう、なんだけどさ。よく知ってるな」

「たくみのことだけだよ。たくみの友だちだから知ってただけ」


サラリと笑顔で告げる春に見直したのは間違いだったと思い知らされたが……

いい笑顔でかえされたらどうしようもない…


「…最近さ、百合に避けられてる気がしてさ」

「赤瀬さんって…たくみの彼女って噂が流れてる人でしょ?」

「あー、まぁ、うん」


ドキッとして、目線を逸らしてしまう
なんとなく春には嘘をつきたくなくて、でも、嘘をつかないと変な噂が流れてしまいそうで……


「…赤瀬さんのことは少し苦手だなぁ、僕」

「え?なんで?」

「……赤瀬さんは僕の事嫌いみたいだからね。近寄るなオーラがすごいんだ」


そうだったのか?だから百合は俺と距離を取っている…とか?
まずなんで春のこと嫌いなんだ?


「…たくみ、やっぱり本人と話すのが一番だと思うよ」

「だよな……」

「うん。大丈夫、僕が見守ってるから安心して」


その言葉で胸がドキドキする
ぎゅっと春の服の袖を握る
このまま二人だけでいれたら、こんな思いもしないのかな……


「たくみ?」

「あ、いや、何でもない。次の休憩時間にでも行ってみるよ」

「うん」

優しく微笑む春に少し不安に思いながらも、笑顔を返した
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

『これで最後だから』と、抱きしめた腕の中で泣いていた

和泉奏
BL
「…俺も、愛しています」と返した従者の表情は、泣きそうなのに綺麗で。 皇太子×従者

君のことなんてもう知らない

ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。 告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。 だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。 今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、他の人と恋を始めようとするが… 「お前なんて知らないから」

どうやら俺は悪役令息らしい🤔

osero
BL
俺は第2王子のことが好きで、嫉妬から編入生をいじめている悪役令息らしい。 でもぶっちゃけ俺、第2王子のこと知らないんだよなー

初心者オメガは執着アルファの腕のなか

深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。 オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。 オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。 穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

ありあまるほどの、幸せを

十時(如月皐)
BL
アシェルはオルシア大国に並ぶバーチェラ王国の侯爵令息で、フィアナ王妃の兄だ。しかし三男であるため爵位もなく、事故で足の自由を失った自分を社交界がすべてと言っても過言ではない貴族社会で求める者もいないだろうと、早々に退職を決意して田舎でのんびり過ごすことを夢見ていた。 しかし、そんなアシェルを凱旋した精鋭部隊の連隊長が褒美として欲しいと式典で言い出して……。 静かに諦めたアシェルと、にこやかに逃がす気の無いルイとの、静かな物語が幕を開ける。 「望んだものはただ、ひとつ」に出てきたバーチェラ王国フィアナ王妃の兄のお話です。 このお話単体でも全然読めると思います!

目が覚めたら囲まれてました

るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。 燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。 そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。 チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。 不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で! 独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。

【完結】幼馴染から離れたい。

June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。 βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。 番外編 伊賀崎朔視点もあります。 (12月:改正版) 読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭

王子の恋

うりぼう
BL
幼い頃の初恋。 そんな初恋の人に、今日オレは嫁ぐ。 しかし相手には心に決めた人がいて…… ※擦れ違い ※両片想い ※エセ王国 ※エセファンタジー ※細かいツッコミはなしで

処理中です...