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それから伊野はカフェにつれってってくれた

そのカフェは、若くてキラキラしたような人が多くて少し焦ったが
伊野は何事もないように席へ着いた

注文も伊野が済ませてくれた


「な、なあ」

「どうしました?たくみは苦いものが苦手でしたよね?」

「お、おう。じゃなくてそうじゃなくて」

「なれませんよね。でも、ここがあなたにはぴったりだと思います」


なにがぴったりなんだ、と思う

黒谷達がいないと一人でぼんやりしているだけの陰キャな俺

そんな俺に、こんなキラキラした場所なんて…


「お待たせしました~」


店員のお姉さんが俺達の前にコップなどを並べていく、その中の一つを見て、俺は瞳を輝かせた


「え、伊野、これ」

「君が好きだと思いまして、ここにつれてきたかったんです」


俺の目の前にはかわいいクリームでできた熊さんが乗ったチョコレートケーキ…

可愛いものも甘いものも好きな俺はすぐに機嫌をなおしてしまう


「伊野、ありがとな!」

「いえ、ゆっくり食べてください」


その後、伊野と二人でケーキを食べ、ゆっくりと帰り道を歩く


無言の時間が二人の間に流れる

沈黙を破ったのは伊野だった


「嵐のこと、どうするんですか?」

「……今は考えらんないよ」

「…でも、好きでしたよね、たくみ」


その言葉にビクッと体をはねさせてしまう


「あ、いえ、責めるとかではなく。純粋に疑問なんです」

「……俺さ、振られてるんだよ、黒谷に」

「…なるほど」

「それで、諦めて3年もたって告白されてもさ、もう俺…黒谷の事は友人だと思ってたし、今は気になる人いるのに…自分にも不誠実なことはしたくないんだよ…」


それが本音だった

それを聞いた伊野は小さくうなずいた


「わかりました。嵐の事は任せてください。ただ、告白を断るのならちゃんと断ってください。私ができるのはたくみの答えを伝える期間を伸ばす程度ですから」

「伊野……ありがとな」

「いえ、私にはその程度しかできませんから」

「…お前が友達でよかったよ」

「……」


少し困ったように笑う伊野。

それは伊野なりの照れ隠しなのだろう


「伊野、じゃあまた明日」

「えぇ、気をつけて」


そして背を向けて走り出そうとしたが


「たくみ」

「ん?」


伊野は俺を呼び止めた


「なんだよ」

「……君の敵は多分、君に近いところに隠れています。くれぐれも気をつけて」

「お、おう?」


よくわからないが、真剣な眼差しの伊野に頷くしかできなかった


そして俺は部屋に戻ると考え始めた、色々なことを…ゆっくりと……………
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