上 下
14 / 20

8

しおりを挟む
早くこいつから離れなきゃ……

抑えつけてた泣き虫な俺が出てきそうになる


『いいじゃん、嵐のこと、好きだったろう?』

…ちがう、違うんだ
んだ


今は好きなんかじゃない

友人なんだ

『いいじゃん、甘えちゃえよ。春なんて俺のこと見てくれるわけないのに』


っー!


自問自答している間に耳をふさいでいた手をゆっくりと離される


「やめ」

「ごめん、たくみ。好きなんだ」

「いやだっ!」


振り払おうと暴れるけど、体格差がありすぎる

162cmの俺と183cmの黒谷じゃ差がありすぎる


「はなせっ」

「…前みたいに柔らかく話してもいいんだよ」

「いやだ!やだね!」

「…もう、俺が全部から守ってあげるから強がらなくていいんだよ」

「っ!」


ブワッと涙が溢れる
だめだ、いやだ

俺は強くなった。過去とも決別した

なのに…


「やめ、てよ、嵐…離してよ」

「っ…あぁ、たくみ。それだよ。俺が好きなたくみ」


頬にチュッと口付けられる
そのまま頭を撫でられ、もう、抵抗もできなくなりそうな時、チャイムが鳴った

昼休憩の終わりのチャイムだ


「残念。たくみの教室まで送るよ」


ぽん、と頭に手を置かれ、ゆっくりと拘束をとかれる

その場にへたり込む俺に黒谷は嬉しそうに微笑んでいた


「好きなんだ。告白される前から好きだった。素直になれなくてごめん」

「……もう、大丈夫…」

「……告白の返事はいらない。けど、もう俺は隠さないから」

「……なにを?」

「たくみへの思いを」


その言葉に俺はどんな顔をしていたんだろう?
もう、何も考えたくなくて……

そのまま意識を失った



結局弱いままの俺



俺は嵐が好きだった
優しい笑顔に、俺のことを気持ち悪がらなかったとこ

それに……

『たくみはたくみらしくいればいいよ』

『俺が守ってあげるよ』


その言葉に俺は救われていた

なのに……どうして


好きならなんで断ったんだよ

3年も前のことなのになんで…


深くくらい、意識の中でかすかに俺に聞こえた声は


『ごめんね、たくみ』


そんな辛そうな嵐の声だった
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『これで最後だから』と、抱きしめた腕の中で泣いていた

和泉奏
BL
「…俺も、愛しています」と返した従者の表情は、泣きそうなのに綺麗で。 皇太子×従者

君のことなんてもう知らない

ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。 告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。 だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。 今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、他の人と恋を始めようとするが… 「お前なんて知らないから」

どうやら俺は悪役令息らしい🤔

osero
BL
俺は第2王子のことが好きで、嫉妬から編入生をいじめている悪役令息らしい。 でもぶっちゃけ俺、第2王子のこと知らないんだよなー

初心者オメガは執着アルファの腕のなか

深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。 オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。 オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。 穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

目が覚めたら囲まれてました

るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。 燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。 そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。 チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。 不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で! 独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。

心からの愛してる

マツユキ
BL
転入生が来た事により一人になってしまった結良。仕事に追われる日々が続く中、ついに体力の限界で倒れてしまう。過労がたたり数日入院している間にリコールされてしまい、あろうことか仕事をしていなかったのは結良だと噂で学園中に広まってしまっていた。 全寮制男子校 嫌われから固定で溺愛目指して頑張ります ※話の内容は全てフィクションになります。現実世界ではありえない設定等ありますのでご了承ください

巻き戻りした悪役令息は最愛の人から離れて生きていく

藍沢真啓/庚あき
BL
婚約者ユリウスから断罪をされたアリステルは、ボロボロになった状態で廃教会で命を終えた……はずだった。 目覚めた時はユリウスと婚約したばかりの頃で、それならばとアリステルは自らユリウスと距離を置くことに決める。だが、なぜかユリウスはアリステルに構うようになり…… 巻き戻りから人生をやり直す悪役令息の物語。 【感想のお返事について】 感想をくださりありがとうございます。 執筆を最優先させていただきますので、お返事についてはご容赦願います。 大切に読ませていただいてます。執筆の活力になっていますので、今後も感想いただければ幸いです。 他サイトでも公開中

俺の彼氏は俺の親友の事が好きらしい

15
BL
「だから、もういいよ」 俺とお前の約束。

処理中です...