夢現の世界で、また君に会えたら

2夜目 −彼は何者?−

深堂と名乗る彼と教室へと向かう
深堂くんは腰まである長い髪をポニーテールにしていた
でも、こんな人見たことない気がする

怪しいものを見るように、じーっと見つめていると深堂くんはヘラっと笑った


「少し前まで、別の県に居たんだ」

「そう、なんですか？」

「病気でねー、入院してたんだ」


余りにもあっけらかんに言うから私は言葉を失ってしまう


「ある程度治ったから復学したってわけ。まぁ、復学して美歩ちゃんに会えたからラッキーだけど」

「…復学したと同時にプールって…」


やっと返せた言葉に深堂は笑い出す


「やだなぁっ…ふ、ふつうっ、病気の方を聞くでしょ」


笑いをこらえる深堂くんに私は恥ずかしくなる
頬がじわじわと熱くなるのがわかり、私は慌てて否定する


「だ、だって！復学して、学校に来て早々にプールに行ってたんでしょ！」

「ま、まぁね？」


笑いをこらえてプルプルする深堂くん…
プールを泳いでいたときとはまるで別人だ
泳いでいたときはまるで……


「人魚みたい…」


ぽろりと洩らした言葉に私は余計に慌てる

いきなり私は何を言っているんだろうか


「あ、えっと、ご、ごめんなさい！ちがくて！」


多分、毎日見ているあの夢のせいだ
恥ずかしくて目を伏せる


「人魚…だったら良かったのにな」


小さな声で彼が何かを呟いていたが、聞き取れずに首を傾げると深堂くんは優しく笑いかけてきた


「いや、美歩ちゃんってロマンチックなんだなぁって」

「へ？ロマンチック……？」

「そう。ロマンチック」


なんでそんなことを思ったのか…意味がわからずぽかんとしてると


「ほら、人魚、なんてぱっと出てくるのは童話とかが好きなロマンチックな子かな、って」

「あ、な、なるほど」


どこか寂しそうな御堂くんに声をかけようとすると教室の扉が開き、先生が入ってきた


「あ…」

「ほら、先生きたよ。またね、美歩ちゃん」

「あ、う、うん」


鞄から筆記用具などを出し、私はぼんやりと窓の外を見つめた

キラキラと光を反射させるプールを見つめながら、どうしてか喉が乾き始めた


私の事を見ている子達がいるのに気づかずに、私はその日1日プールを、見つめていたのだった……