魔女の生まれた屋敷

桜月 翠恋

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【私は生きたいと思うようになった】


【それが私にとっての一番の変化かもしれない】







一年の月日が流れた
それでも変わらず私はいつもの通り窓の外を見つめていた


いつもと違うのは……



隣に夕食が置いてあるということくらいだろう



「はぁ……」


ヘレニが父から呼び出しをうけたのだ。
そのせいで夕方からいないから食事を置いて行ったのだった


一人で過ごすのは初めてで不安に襲われる

今までずっとヘレニと一緒だったからだろう

寂しさから独り言も増えてしまう


「まだかしら」

「そういえば一人なんて珍しいものね」

「早く帰ってこないかしら」


外はすっかり暗くなった


未だにヘレニが帰ってくる気配はない


暗い森を見つめていると一瞬何か……
景色がフラッシュバックする


あれはいつのことだっただろうか?

今と同じように外を見ていて……誰かの帰りを待っていたような……


『おかえりなさい!』


幼い私が玄関へ走り出す

アレ……足がちゃんとある

嬉しそうに玄関の扉を開ける私


ハッ……と息を呑む
この瞬間を私は覚えている


ダメだ


「開けちゃだめぇ!!!」


私の悲痛な叫びは届かない

そう、この日は……



「お父様、お母様は?」


幼い私を父は抱き上げる


「こっちへ来なさい」


少し嫌がる私を父は連れて行く

見ていられない

次に私の目に入ったのは


さっきまで見ていた暗い森だった


ふらっと力が抜けベットから落ちそうになる


「きゃっ!?」


抵抗虚しく、私はベットから落ちた


「…どうしよう……」


どうやってベットの上に上がろうか、と考える

こんな足じゃ……登れない

足に目をやる………が、私の思考はそこで止まった


いつもどおり赤黒く腫れた足があると思っていた
所々形の変わったあの足が…




でも私の目にうつったのは

白く、とてもキレイな女性の足だった


「なん、で?」


ドキドキする胸をおさえながら、ゆっくりと足を動かす


「いたく、ない…」


ゆっくりと足に力を入れてみる
何年も歩いていなかった割には、すんなりと力が入った

ゆっくりゆっくり立ち上がってみる


自分の足で久々に踏みしめた大地

いや、正確には家の床なんだけれど…

とても不思議な気分だ

あんなにぐちゃぐちゃだった足が何もなかったみたいに歩ける

嬉しくなってきたが、まだ足元がおぼつかない

そっとベットに腰を掛ける


いつの間にこんなに足がきれいになったのだろう


「そういえば……」


最近、また足がいたんでいた気がする

これもアオイのおかげなのだろうか……
そう思いながら私はヘレニの帰りを待つ

このことを報告して、歩いて
二人で散歩でもしたい
そんな気分だった


ガチャ……


扉が開いた

ヘレニが帰ってきたのだろう、私はワクワクしながら窓の外を見つめ続けた





【忘れていた】


【死ぬために生まれてきたのを】
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