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5日目

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車から降りると、マンションの駐車場のようだった

見覚えがないはずなのに、どことなく懐かしく感じてしまうのは、以前ここに来たことがあるということなのだろう


「先生、ここ…」

「ん?俺の家」

「は?」

「だから、俺の家」


カスミの言ってることが理解できず無表情になってしまう

なんだ、私はこれから部屋に連れ込まれるのか?


「淫行教師」

「いやいや、待て待て、なんでそうなった?」

「………先生の家なんでしょ?」

「俺の家だな」

「私も入るんですよね?」

「そうなるな」

「帰ります」


カスミに背を向け歩き出す


「待て待て!!ちがう!違うから!大丈夫だから!何もしないから!」


私の腕を掴み必死に弁解するカスミは、どこか子供っぽくて少し笑ってしまう


「わかりました。信じますけど、何かしたら速通報します」

「信頼されてないのな…ははっ……」


乾いた笑いを漏らすカスミに釣られて笑ってしまう


「えっと、何階ですか?」


エレベーターを指差して問いかける
まぁ、パッと見て高級そうなマンションだし、ただの教師だし……高くても3階、とか?


「あー。そっか、そこも忘れてるのか。とりあえずエレベーターよんで」

「あ、はい」


上への矢印が光る
エレベーターを待っていると、私の肩にカスミの腕がかすかに触れる…

胸は、私の意思に反して高鳴る

なんだか悔しいから、無言を貫く


ポーン

とエレベーターのついた音がする

そっと私の手を取り、エレベーターに乗り込むカスミ

スムーズなのはやっぱり女慣れしているのだろうか
少し胸がちくっとする


「椛?」

「え、あ、はい?」

「長いから、しんどかったらもたれていいから」

「え、あ、う、うん」


確かに、乗ってから案外たってるかもしれない
光ってるボタンを見ると、それは最上階に光がついていた


「せ、先生。最上階?」

「そ。最上階」

「そ、そんなに金持ちなの?」

「いや、そういうわけじゃないけど……」


カスミは言いにくそうに口をつぐんだ
きっと話にくいことなのかもしれない

私でさえ、話せないことがあるのだから……


「ついたよ」

「あ、うん」


カスミにつれられ、エレベーターを降りる

部屋の前につくと、私に中に入るように促した


「広い……」

想像の二倍以上広い部屋に私は茫然とするのだった
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