13 / 34
13
しおりを挟む
「うぉ、い、てぇ」
親父の手当てにダグが呟くとアリオンは俺をちらっと一瞥して眼差しに非難が混じる。
続いて医務室に駆け込んだのは青筋立てた団長。
「トロンソ、カナン様がお呼びだ。医務の管理不届きについて」
「手当てが終わってからです。こいつにはもう頼めませんから」
団長と親父にぎろっときつく睨まれて頭を下げた。
今回の悋気の原因は俺だ。
「団長、俺もですか?」
謝罪に。
「来るな。説教も兼ねてる」
ダグのこの様子なら久々のドクターストップだ。
団長と親父で叱る予定なんだろ。
了承に首を頷かせた。
「お前だけじゃない。お前らの部下の一人もアホだ」
何のことかと団長を見るとこめかみを揉みながら渋面。
「新入りに岡惚れのアホがいたろ。あいつがヤらせてくれと直談判に来たぞ。ダグがいいと言ったと言うし、ありゃなんだ?」
「はああ?」
親父の呆れた声を聞きながら顔をしかめた。
あのアホが。
それで余計にカナン様を怒らせたわけか。
「ロニーさん、何かご存じですね」
「ぐお、お」
顔色ひとつでバレた。
がっと後ろから冷えた声音のアリオンに首を捕まれ背面に引きずられた。
仰け反って苦しむ俺に団長も顔を寄せて睨む。
秘密にすることでもないので報告。
ダグの肉食具合も。
別に他意はない。
事実の報連相は大事。
そのくらいの感覚だったんだけどアリオンが豹変した。
「奥をお借りします」
「え?何?アリィ?」
鬼のような殺気をばら蒔いて治療の済んだダグを横抱きに運ぶと仮眠室に鍵をかけてとじ込もった。
「ダグ、どういことだ?」
「え、いや、アリィ?え?」
「納得出来ない。本気で許せない。たった1週間の不在で私以外に触るなどどういうつもりかと聞いている」
「ご、ごめん、アリィ」
「相手が若い男だからか?10も離れた年上の私に飽きたのか?他に遊びたくなったとか?それを許すと思ったか?何か言い訳してみろっ」
「わわっ、ご、ごめんってばぁ」
二人の漏れる痴話喧嘩に親父が閉ざした扉を数回殴った。
「ヤるなよ!こじ開けるぞ!」
「トロンソおじちゃぁん、団長ぉ、」
「こんな状態のダグに何もしませんよ!ダグ!逃げるなっ!私との話は終わってない!」
ヤられるのはお前だしな。
中からの反論を黙って聞いていた。
アリオンに問い詰められてダグが必死で謝っている。
「アホだ。とことんアホ。男の扱いがクソすぎる。わざとか?」
団長がぼそっと呟いた。
「お前もだ。あいつの前でべらべらと」
「この馬鹿息子」
親父と団長に叱られた。
んなこと言っても。
どうせあいつに白状させられる。
半ばキレていたアリオンに握られた首筋はまだ痛んだ。
団長と親父はもうこれ以上待たせられないからとカナン様のもとへ。
俺は留守番。
ヤバかったら開けろと。
その間に仕事を進める。
扉越しのイチャイチャにムカつく。
いや、聞こえるのはガチの説教なんだけど。
ダグが優しくアリィだけだと言うと、誤魔化すな、黙れと一蹴してる。
不在の1週間で俺と部下の二件、どれだけ無防備の節操なしかと責めてる。
あいつ、しつこい。
こわ。
しばらくしてベイル部隊長が顔を出した。
「ロニー、何事だ?ヤバかったら仮眠室をお前とこじ開けろって言われたんだが」
「痴話喧嘩です」
アリオンの説教が続く部屋へ指をさす。
「ふーん」
説教と謝罪の声を聞いて興味なさげに鼻を鳴らすと扉を眺めてすぐに扉を殴った。
「アリオン!ダグ!ふざけた喧嘩は止めろ!出てこい!」
アリオンがすぐに開けて、失礼しましたと一言。
腕の中に心底うんざりした顔のダグ。
「謝ったんだから許してやれ。どうせ離れられないんだろ?時間の無駄だから喧嘩するな」
眉間にデカイシワを入れて頷くアリオンを見て、くっと苦笑いのベイル部隊長。
「ダグ、アリオンを困らせるな。俺達も」
「はい、すいません」
ごめん、アリオンと何度目か分からない謝罪を口にし、アリオンは黙ってダグを抱き締めた。
目の前のイチャイチャにムカつくし、アリオンはあんだけ怒りまくってたのになんだかんだでぎゅうぎゅう抱きしめて顔緩んでる。
ダグもお返しとばかりにアリオンの胸に顔を埋めて引っ付いてる。
羨ましくない羨ましくない。
そんなことされたことないけど羨ましくない。
くそ。
……羨ましい、チキショー。
「お前ら、仲いいな」
懐かしい、と小さく口の中でベイル部隊長の呟きが聞こえた。
盗み見すると手をかざして隠しているけど俺のように嫉妬した気配もなく微笑んでいた。
アリオンにも聞こえたらしい。
目を細めて微かに首をかしげた。
もちろん俺も。
何が懐かしいんだ。
親父の手当てにダグが呟くとアリオンは俺をちらっと一瞥して眼差しに非難が混じる。
続いて医務室に駆け込んだのは青筋立てた団長。
「トロンソ、カナン様がお呼びだ。医務の管理不届きについて」
「手当てが終わってからです。こいつにはもう頼めませんから」
団長と親父にぎろっときつく睨まれて頭を下げた。
今回の悋気の原因は俺だ。
「団長、俺もですか?」
謝罪に。
「来るな。説教も兼ねてる」
ダグのこの様子なら久々のドクターストップだ。
団長と親父で叱る予定なんだろ。
了承に首を頷かせた。
「お前だけじゃない。お前らの部下の一人もアホだ」
何のことかと団長を見るとこめかみを揉みながら渋面。
「新入りに岡惚れのアホがいたろ。あいつがヤらせてくれと直談判に来たぞ。ダグがいいと言ったと言うし、ありゃなんだ?」
「はああ?」
親父の呆れた声を聞きながら顔をしかめた。
あのアホが。
それで余計にカナン様を怒らせたわけか。
「ロニーさん、何かご存じですね」
「ぐお、お」
顔色ひとつでバレた。
がっと後ろから冷えた声音のアリオンに首を捕まれ背面に引きずられた。
仰け反って苦しむ俺に団長も顔を寄せて睨む。
秘密にすることでもないので報告。
ダグの肉食具合も。
別に他意はない。
事実の報連相は大事。
そのくらいの感覚だったんだけどアリオンが豹変した。
「奥をお借りします」
「え?何?アリィ?」
鬼のような殺気をばら蒔いて治療の済んだダグを横抱きに運ぶと仮眠室に鍵をかけてとじ込もった。
「ダグ、どういことだ?」
「え、いや、アリィ?え?」
「納得出来ない。本気で許せない。たった1週間の不在で私以外に触るなどどういうつもりかと聞いている」
「ご、ごめん、アリィ」
「相手が若い男だからか?10も離れた年上の私に飽きたのか?他に遊びたくなったとか?それを許すと思ったか?何か言い訳してみろっ」
「わわっ、ご、ごめんってばぁ」
二人の漏れる痴話喧嘩に親父が閉ざした扉を数回殴った。
「ヤるなよ!こじ開けるぞ!」
「トロンソおじちゃぁん、団長ぉ、」
「こんな状態のダグに何もしませんよ!ダグ!逃げるなっ!私との話は終わってない!」
ヤられるのはお前だしな。
中からの反論を黙って聞いていた。
アリオンに問い詰められてダグが必死で謝っている。
「アホだ。とことんアホ。男の扱いがクソすぎる。わざとか?」
団長がぼそっと呟いた。
「お前もだ。あいつの前でべらべらと」
「この馬鹿息子」
親父と団長に叱られた。
んなこと言っても。
どうせあいつに白状させられる。
半ばキレていたアリオンに握られた首筋はまだ痛んだ。
団長と親父はもうこれ以上待たせられないからとカナン様のもとへ。
俺は留守番。
ヤバかったら開けろと。
その間に仕事を進める。
扉越しのイチャイチャにムカつく。
いや、聞こえるのはガチの説教なんだけど。
ダグが優しくアリィだけだと言うと、誤魔化すな、黙れと一蹴してる。
不在の1週間で俺と部下の二件、どれだけ無防備の節操なしかと責めてる。
あいつ、しつこい。
こわ。
しばらくしてベイル部隊長が顔を出した。
「ロニー、何事だ?ヤバかったら仮眠室をお前とこじ開けろって言われたんだが」
「痴話喧嘩です」
アリオンの説教が続く部屋へ指をさす。
「ふーん」
説教と謝罪の声を聞いて興味なさげに鼻を鳴らすと扉を眺めてすぐに扉を殴った。
「アリオン!ダグ!ふざけた喧嘩は止めろ!出てこい!」
アリオンがすぐに開けて、失礼しましたと一言。
腕の中に心底うんざりした顔のダグ。
「謝ったんだから許してやれ。どうせ離れられないんだろ?時間の無駄だから喧嘩するな」
眉間にデカイシワを入れて頷くアリオンを見て、くっと苦笑いのベイル部隊長。
「ダグ、アリオンを困らせるな。俺達も」
「はい、すいません」
ごめん、アリオンと何度目か分からない謝罪を口にし、アリオンは黙ってダグを抱き締めた。
目の前のイチャイチャにムカつくし、アリオンはあんだけ怒りまくってたのになんだかんだでぎゅうぎゅう抱きしめて顔緩んでる。
ダグもお返しとばかりにアリオンの胸に顔を埋めて引っ付いてる。
羨ましくない羨ましくない。
そんなことされたことないけど羨ましくない。
くそ。
……羨ましい、チキショー。
「お前ら、仲いいな」
懐かしい、と小さく口の中でベイル部隊長の呟きが聞こえた。
盗み見すると手をかざして隠しているけど俺のように嫉妬した気配もなく微笑んでいた。
アリオンにも聞こえたらしい。
目を細めて微かに首をかしげた。
もちろん俺も。
何が懐かしいんだ。
0
お気に入りに追加
29
あなたにおすすめの小説
転移したらなぜかコワモテ騎士団長に俺だけ子供扱いされてる
塩チーズ
BL
平々凡々が似合うちょっと中性的で童顔なだけの成人男性。転移して拾ってもらった家の息子がコワモテ騎士団長だった!
特に何も無く平凡な日常を過ごすが、騎士団長の妙な噂を耳にしてある悩みが出来てしまう。
悪役令息に誘拐されるなんて聞いてない!
晴森 詩悠
BL
ハヴィことハヴィエスは若くして第二騎士団の副団長をしていた。
今日はこの国王太子と幼馴染である親友の婚約式。
従兄弟のオルトと共に警備をしていたが、どうやら婚約式での会場の様子がおかしい。
不穏な空気を感じつつ会場に入ると、そこにはアンセルが無理やり床に押し付けられていたーー。
物語は完結済みで、毎日10時更新で最後まで読めます。(全29話+閉話)
(1話が大体3000字↑あります。なるべく2000文字で抑えたい所ではありますが、あんこたっぷりのあんぱんみたいな感じなので、短い章が好きな人には先に謝っておきます、ゴメンネ。)
ここでは初投稿になりますので、気になったり苦手な部分がありましたら速やかにソッ閉じの方向で!(土下座
性的描写はありませんが、嗜好描写があります。その時は▷がついてそうな感じです。
好き勝手描きたいので、作品の内容の苦情や批判は受け付けておりませんので、ご了承下されば幸いです。
転生悪役モブは溺愛されんで良いので死にたくない!
煮卵
BL
ゲーム会社に勤めていた俺はゲームの世界の『婚約破棄』イベントの混乱で殺されてしまうモブに転生した。処刑の原因となる婚約破棄を避けるべく王子に友人として接近。なんか数ヶ月おきに繰り返される「恋人や出会いのためのお祭り」をできる限り第二皇子と過ごし、婚約破棄の原因となる主人公と出会うきっかけを徹底的に排除する。
最近では監視をつけるまでもなくいつも一緒にいたいと言い出すようになった・・・やんごとなき血筋のハンサムな王子様を淑女たちから遠ざけ男の俺とばかり過ごすように仕向けるのはちょっと申し訳ない気もしたが、俺の運命のためだ。仕方あるまい。
俺の死亡フラグは完全に回避された!
・・・と思ったら、婚約の儀の当日、「私には思い人がいるのです」
と言いやがる!一体誰だ!?
その日の夜、俺はゲームの告白イベントがある薔薇園に呼び出されて・・・
ラブコメが描きたかったので書きました。
病弱な悪役令息兄様のバッドエンドは僕が全力で回避します!
松原硝子
BL
三枝貴人は総合病院で働くゲーム大好きの医者。
ある日貴人は乙女ゲームの制作会社で働いている同居中の妹から依頼されて開発中のBLゲーム『シークレット・ラバー』をプレイする。
ゲームは「レイ・ヴァイオレット」という公爵令息をさまざまなキャラクターが攻略するというもので、攻略対象が1人だけという斬新なゲームだった。
プレイヤーは複数のキャラクターから気に入った主人公を選んでプレイし、レイを攻略する。
一緒に渡された設定資料には、主人公のライバル役として登場し、最後には断罪されるレイの婚約者「アシュリー・クロフォード」についての裏設定も書かれていた。
ゲームでは主人公をいじめ倒すアシュリー。だが実は体が弱く、さらに顔と手足を除く体のあちこちに謎の湿疹ができており、常に体調が悪かった。
両親やごく親しい周囲の人間以外には病弱であることを隠していたため、レイの目にはいつも不機嫌でわがままな婚約者としてしか映っていなかったのだ。
設定資料を読んだ三枝は「アシュリーが可哀想すぎる!」とアシュリー推しになる。
「もしも俺がアシュリーの兄弟や親友だったらこんな結末にさせないのに!」
そんな中、通勤途中の事故で死んだ三枝は名前しか出てこないアシュリーの義弟、「ルイス・クロフォードに転生する。前世の記憶を取り戻したルイスは推しであり兄のアシュリーを幸せにする為、全力でバッドエンド回避計画を実行するのだが――!?
貧乏Ωの憧れの人
ゆあ
BL
妊娠・出産に特化したΩの男性である大学1年の幸太には耐えられないほどの発情期が周期的に訪れる。そんな彼を救ってくれたのは生物的にも社会的にも恵まれたαである拓也だった。定期的に体の関係をもつようになった2人だが、なんと幸太は妊娠してしまう。中絶するには番の同意書と10万円が必要だが、貧乏学生であり、拓也の番になる気がない彼にはどちらの選択もハードルが高すぎて……。すれ違い拗らせオメガバースBL。
エブリスタにて紹介して頂いた時に書いて貰ったもの
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!
音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに!
え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!!
調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる