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犯人

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「んー…」

ごそごそとエヴ嬢が目を擦りながら起き出した。

「どうしたの?」

夢魔に襲われたようだと話すと驚いていた。
それと妙なことに、目の魔力の循環を通常通りに抑えているのに以前のようにエヴ嬢が輝いていた。

「また目が不安定になったようだ。先程の夢魔のせいか。エヴ嬢の光が強すぎて目が痛い」

ラウルにまた頼まねばと思っていると、三人が渋い顔で私を見た。
おかしい。
三人は普通に見える。
なぜエヴ嬢だけだ。

「…いえ、団長」

ヤンが神妙な顔で呟く。

「…エヴ様は私でも分かるほど目に見えて魔力が溢れてます。それに、団長ほどの方を押さえ込めて、精力ばかり吸う夢魔と言うなら。…ラウル、頼む」

「エヴ様、ちょっと…」

ラウルがそう言うとエヴ嬢にも探知魔法をかける。

「…抑えていた術式が破れ、魔人寄りに活性化してる」

「エヴ様、何か夢をご覧になりましたか?」

「んー…、すぐに思い出せない」

「思い出せそうですか?」

しばらく考えて急に目を見開き青ざめた。

「団長に、私…どうしよう、ごめんなさい。また、私が人を襲った、」

あわあわと泣き出し、ラウルが手拭いで顔を拭いてやっている。
わざとじゃないから、とラウルは慰めた。

「…団長、先程の夢魔はエヴ様です」

「以前言っていた公にしていない能力か」

三人が頷く。

「明日は新月です。影響で活性化したのでしょうが、まさか封印が破れるとは。ラウル、急いでかけ直せ」

「無理だよっ、これじゃ、」

「なぜだ?時間がかかるのか?以前のように、」

矢継ぎ早の問いに大きく首を振った。

「だから、以前と違うっ。封印を破るほど活性化してるんだ!これじゃあ俺の術式が効かないっ!」

ラウルの能力でも封印出来ないほどか。
エヴ嬢とヤン達の会話から察するに、寝ると無意識に発動するようだ。
ここには魔力の高い者ばかり集まっている。
実力差のある弱い夢魔なら襲われることはない。
だが、エヴ嬢は私を抑えるほどの能力だった。
このままではここはエヴ嬢の餌場となってしまう。
被害が広がれば討伐対象。
エヴ嬢に聞かせられないが、内心この状況に舌打ちをする。

「ヤン。一度吸えばしばらくは誰も襲わない。大丈夫だ。まだ時間がある」

ダリウスが冷静に話す。

「新月から離れれば活性化が収まる。その時に封印するといい。ラウルはそれまでに術式の構築をするんだ」
 
俺達が狼狽えてどうすると諌めた。

「ラウル、難しいと思うが頼む」

「…わかった。…オレなら出来るしね」

「お前しか出来ん」

「ああ、オレだけだ」

さっと天幕の隅に置いてある木箱に駆け寄り、中から本を出した。

「もっと強い術式を作る。大丈夫。エヴ様、必ず封印するから」

泣いているエヴ嬢に強く訴えた。
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