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一人が登って来ます。
すぐに残りの二人が集まって怒鳴ってました。
もっと上に細い枝に。
小柄な私しか登れないところを目指します。
隣の木を見て、しまったと顔を歪めました。
このまま上しか登れません。
登った枝を選び間違えて隣に移れたのにと後悔しました。
違う枝を登れば隣の木に飛び乗れました。
いえ、かもです。
子供の頃、偶然出来ただけ。
もっと密集した木々だからあの時は出来たんです。
どうしようと辺りをキョロキョロと探しました。
もっと考えて動けばよかったと今さら後悔します。
もう上も行き止まりで登れません。
つま先立ちで木にしがみついて、細くてここまで登れない騎士が私の足元の枝をゆさゆさと揺らして落とそうとしています。
大きく揺れて怖いです。
「ううっ、」
でも目をつぶってしまう方が怖くて騎士の動きを一生懸命見つめました。
どこか捕まれたらもう逃げられません。
降りてこいと怒鳴られてます。
しゃっとすれる音。
騎士の手に剣が光っているのを見つけて、息を飲みました。
「ひ、」
ガンガンと邪魔な枝を剣で叩いて折ろうとしてます。
足元はゆさゆさと揺れて枝がどんどん減って、私も切られるかもしれません。
「……アンバル、アンバル、アンバルー!ロルフ様も!早く助けてください!怖いです!」
たまらず涙が溢れてきました。
一生懸命、名前を呼びます。
思い付くのはアンバルとロルフ様、ヨルンガ。
強い人を思い浮かべていたらお姉様と叫んでいました。
あのお強いお姉様ならこんな人達、視線ひとつで撃退してしまう気がして大声で。
木の上でわんわん泣きながら。
どすんっと木に大きな地響きのような衝撃。
強まる三人の怒声。
ああ、もうだめだと諦めそうです。
咄嗟に、ぱっと横の枝に飛び乗って細い先へ逃げました。
もう逃げ場が本当にありません。
枝の先はあの池です。
落ちて泳いで逃げられるでしょうか。
あ、でも。
甲冑のこの人達なら水の中に来ないのでは、と思い浮かんだら枝を走って池に飛びました。
「あああ!」
勢いに大声を出しながら、ザバーンッと大きな水しぶき。
真っ暗な水底でどこが上か下か分からなくて手足をもがきます。
「あぶぁ!ぶぁ!ああ!」
水面に上がるのに心臓がばくばくで息も上手く吸えません。
バタバタとするだけの震える手足も役立たず。
こんなことになるとは思ってませんでした。
すぐに残りの二人が集まって怒鳴ってました。
もっと上に細い枝に。
小柄な私しか登れないところを目指します。
隣の木を見て、しまったと顔を歪めました。
このまま上しか登れません。
登った枝を選び間違えて隣に移れたのにと後悔しました。
違う枝を登れば隣の木に飛び乗れました。
いえ、かもです。
子供の頃、偶然出来ただけ。
もっと密集した木々だからあの時は出来たんです。
どうしようと辺りをキョロキョロと探しました。
もっと考えて動けばよかったと今さら後悔します。
もう上も行き止まりで登れません。
つま先立ちで木にしがみついて、細くてここまで登れない騎士が私の足元の枝をゆさゆさと揺らして落とそうとしています。
大きく揺れて怖いです。
「ううっ、」
でも目をつぶってしまう方が怖くて騎士の動きを一生懸命見つめました。
どこか捕まれたらもう逃げられません。
降りてこいと怒鳴られてます。
しゃっとすれる音。
騎士の手に剣が光っているのを見つけて、息を飲みました。
「ひ、」
ガンガンと邪魔な枝を剣で叩いて折ろうとしてます。
足元はゆさゆさと揺れて枝がどんどん減って、私も切られるかもしれません。
「……アンバル、アンバル、アンバルー!ロルフ様も!早く助けてください!怖いです!」
たまらず涙が溢れてきました。
一生懸命、名前を呼びます。
思い付くのはアンバルとロルフ様、ヨルンガ。
強い人を思い浮かべていたらお姉様と叫んでいました。
あのお強いお姉様ならこんな人達、視線ひとつで撃退してしまう気がして大声で。
木の上でわんわん泣きながら。
どすんっと木に大きな地響きのような衝撃。
強まる三人の怒声。
ああ、もうだめだと諦めそうです。
咄嗟に、ぱっと横の枝に飛び乗って細い先へ逃げました。
もう逃げ場が本当にありません。
枝の先はあの池です。
落ちて泳いで逃げられるでしょうか。
あ、でも。
甲冑のこの人達なら水の中に来ないのでは、と思い浮かんだら枝を走って池に飛びました。
「あああ!」
勢いに大声を出しながら、ザバーンッと大きな水しぶき。
真っ暗な水底でどこが上か下か分からなくて手足をもがきます。
「あぶぁ!ぶぁ!ああ!」
水面に上がるのに心臓がばくばくで息も上手く吸えません。
バタバタとするだけの震える手足も役立たず。
こんなことになるとは思ってませんでした。
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