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*誕生、月の王子と妖精族
誕生、月の王子と妖精族#10
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―…時は流れ2日後
予定では今日カルラが戻ってくる日
コンコンとドアがノックされて、アズナが顔を覗かせた
アズナ「華夜様、お茶が入りました」
華夜「ありがとうアズナ」
アズナ「冬夜様は?」
華夜「泣きつかれたみたいでぐっすり寝たわ」
アズナが淹れてくれたお茶を飲みながら椅子に腰かける
アズナ「冬夜様の力って…」
華夜「まだ開花してないわ
私も少し不安なの。本来、魔力や霊力は産まれた時から持っているものだから…だけど冬夜の場合それがないの」
アズナ「霊力や魔力を持たずに産まれてくるなんて…そんな例今まで聞いたことが…」
華夜「私もそうよ。もしかしたら反対に冬夜は…」
私と柚綺の子どもだから巨大な力を持って産まれてくるなんて勝手に思ってたけど…その反対の可能性も少なからずある
アズナ「反対と言うと…」
華夜「…極端に霊力が少ないって事よ」
しんとした空気が流れアズナの表情が曇る
華夜「もし本当にそうだとしたら…」
アズナ「華夜様、そんなお顔しないでください
冬夜様は華夜様と柚綺様の子です
大丈夫ですよ」
アズナは私を励ますように笑いかけてくれた
その笑顔に少しだけ不安が消えた気がした
華夜「…そうね。ふふ、雪白族は皆、優しいのね」
アズナ「それは華夜様が優しいからですよ」
まだ分からない
だから冬夜の成長を優しく見守っていきたい
その時だった
部屋の窓から風に乗って雪が流れてきた
雪白族のメッセージね
アズナ「アサギリさんからですね」
メッセージを読んだアズナの表情が微かに青ざめた
アズナが青ざめるなんてただ事じゃないわ
何かあったんだ
華夜「アズナ、何かあったの?」
アズナ「華夜様すぐに一族の所に…!
エマが病に倒れたそうです!」
華夜「エマが!?」
寝ていた冬夜を抱き上げて不安を胸にアズナと一緒に急いで雪白族の集落へ向かった
近づくと人だかりが出来、慌ただしい姿が見えた
フブキ「アズナ!華夜様!」
私達に気付いたフブキが声を掛けてくれた
華夜「フブキ!エマが倒れたって…!」
フブキ「はい…今、全力で治療しているところです」
冷静でクールなフブキが何処か焦ってる…?
何を隠しているの?
華夜「フブキ、隠さないで正直に言って」
フブキ「…原因不明の病で意識が…戻りません」
フブキの一言に背筋が凍るような感覚だった
エマが原因不明の病で意識が戻らない…!?
華夜「…冗談はやめて。助かるんでしょ?」
エマはあの悪魔との不利な戦いの中も生き残った強い妖魔だもの
病なんかに屈するような弱い奴じゃ…
だけどフブキは黙って顔を反らした
それが尚更怖くなった
華夜「嘘でしょフブキ!
貴方達雪白族は医療術にたけている一族でしょ!?
原因不明の病でも直せるんでしょ!?」
アズナ「華夜様落ち着いてください!」
声をあらげ取り乱す私をアズナが引き留める
声に驚いた冬夜は目を覚まして泣き始めた
フブキ「無理なんです…
こんな病今まで無かった…皆が必死に治療してるが回復の見込みもない…」
あの優秀な雪白族でも治せない病?
じゃぁ、このままじゃエマはどうなるの?
華夜「アズナ、冬夜をお願い」
アズナ「え!?華夜様…っ」
華夜「フブキ、エマはどこ?」
フブキ「あそこに…今はアサギリが全力を尽くしています」
私は人混みを通り抜けエマの所に向かった
人混みの中心には倒れたまま動かないエマと必死に治療するアサギリ、その横でエマに必死に声をかけるナギサの姿があった
倒れたまま動かないエマを見て思い出したくもないあの日を思い出す
死に絶えていった仲間達の死に顔を
華夜「エマ…!!」
ナギサ「華夜様…!?」
華夜「エマしっかりしなさい!
私を残して死ぬなんて許さないわ!」
ずっと一緒に戦ってきたかけがえのない仲間…死ぬなんて許さないわ
でもどんなに声を掛けてもエマは反応しない
華夜「…っアサギリ!早く何とかして!
貴方達は医療術に優秀な一族でしょ!」
アサギリや皆を責めてる訳じゃない
だけど目の前で消えそうなエマの命を目の当たりにしていると、取り乱さずにいられない
アサギリ「やってます…!
だけどどんな術を使っても何も起こらないのです!
こんなこと無かった!どうしたらいいのよ…!」
誰もが焦る気持ちの中、絶望さえ見えた時にその人は突然現れた
「皆の衆、少し下がっておれ」
私の肩をポンっと叩いてエマに近づいてきたのは…見知らぬ妖魔だった
妖魔!?いつの間に…っ
この私が気づかないなんて…!
華夜「貴方何者!?私の仲間に近づかないで!」
咄嗟に星蘭に手をかけたその時懐かしい声に手が止まった
カルラ「華夜姫様、敵ではありませぬ。
刀を離してくだされ」
華夜「え、カルラ!?戻ってきたの!?」
カルラ「たった今お戻りしました」
華夜「え…カルラがここに居るって事はまさかあの人が…?」
カルラ「左様、妖精族、族長ハバト
奴に任せておけば大丈夫です」
予定では今日カルラが戻ってくる日
コンコンとドアがノックされて、アズナが顔を覗かせた
アズナ「華夜様、お茶が入りました」
華夜「ありがとうアズナ」
アズナ「冬夜様は?」
華夜「泣きつかれたみたいでぐっすり寝たわ」
アズナが淹れてくれたお茶を飲みながら椅子に腰かける
アズナ「冬夜様の力って…」
華夜「まだ開花してないわ
私も少し不安なの。本来、魔力や霊力は産まれた時から持っているものだから…だけど冬夜の場合それがないの」
アズナ「霊力や魔力を持たずに産まれてくるなんて…そんな例今まで聞いたことが…」
華夜「私もそうよ。もしかしたら反対に冬夜は…」
私と柚綺の子どもだから巨大な力を持って産まれてくるなんて勝手に思ってたけど…その反対の可能性も少なからずある
アズナ「反対と言うと…」
華夜「…極端に霊力が少ないって事よ」
しんとした空気が流れアズナの表情が曇る
華夜「もし本当にそうだとしたら…」
アズナ「華夜様、そんなお顔しないでください
冬夜様は華夜様と柚綺様の子です
大丈夫ですよ」
アズナは私を励ますように笑いかけてくれた
その笑顔に少しだけ不安が消えた気がした
華夜「…そうね。ふふ、雪白族は皆、優しいのね」
アズナ「それは華夜様が優しいからですよ」
まだ分からない
だから冬夜の成長を優しく見守っていきたい
その時だった
部屋の窓から風に乗って雪が流れてきた
雪白族のメッセージね
アズナ「アサギリさんからですね」
メッセージを読んだアズナの表情が微かに青ざめた
アズナが青ざめるなんてただ事じゃないわ
何かあったんだ
華夜「アズナ、何かあったの?」
アズナ「華夜様すぐに一族の所に…!
エマが病に倒れたそうです!」
華夜「エマが!?」
寝ていた冬夜を抱き上げて不安を胸にアズナと一緒に急いで雪白族の集落へ向かった
近づくと人だかりが出来、慌ただしい姿が見えた
フブキ「アズナ!華夜様!」
私達に気付いたフブキが声を掛けてくれた
華夜「フブキ!エマが倒れたって…!」
フブキ「はい…今、全力で治療しているところです」
冷静でクールなフブキが何処か焦ってる…?
何を隠しているの?
華夜「フブキ、隠さないで正直に言って」
フブキ「…原因不明の病で意識が…戻りません」
フブキの一言に背筋が凍るような感覚だった
エマが原因不明の病で意識が戻らない…!?
華夜「…冗談はやめて。助かるんでしょ?」
エマはあの悪魔との不利な戦いの中も生き残った強い妖魔だもの
病なんかに屈するような弱い奴じゃ…
だけどフブキは黙って顔を反らした
それが尚更怖くなった
華夜「嘘でしょフブキ!
貴方達雪白族は医療術にたけている一族でしょ!?
原因不明の病でも直せるんでしょ!?」
アズナ「華夜様落ち着いてください!」
声をあらげ取り乱す私をアズナが引き留める
声に驚いた冬夜は目を覚まして泣き始めた
フブキ「無理なんです…
こんな病今まで無かった…皆が必死に治療してるが回復の見込みもない…」
あの優秀な雪白族でも治せない病?
じゃぁ、このままじゃエマはどうなるの?
華夜「アズナ、冬夜をお願い」
アズナ「え!?華夜様…っ」
華夜「フブキ、エマはどこ?」
フブキ「あそこに…今はアサギリが全力を尽くしています」
私は人混みを通り抜けエマの所に向かった
人混みの中心には倒れたまま動かないエマと必死に治療するアサギリ、その横でエマに必死に声をかけるナギサの姿があった
倒れたまま動かないエマを見て思い出したくもないあの日を思い出す
死に絶えていった仲間達の死に顔を
華夜「エマ…!!」
ナギサ「華夜様…!?」
華夜「エマしっかりしなさい!
私を残して死ぬなんて許さないわ!」
ずっと一緒に戦ってきたかけがえのない仲間…死ぬなんて許さないわ
でもどんなに声を掛けてもエマは反応しない
華夜「…っアサギリ!早く何とかして!
貴方達は医療術に優秀な一族でしょ!」
アサギリや皆を責めてる訳じゃない
だけど目の前で消えそうなエマの命を目の当たりにしていると、取り乱さずにいられない
アサギリ「やってます…!
だけどどんな術を使っても何も起こらないのです!
こんなこと無かった!どうしたらいいのよ…!」
誰もが焦る気持ちの中、絶望さえ見えた時にその人は突然現れた
「皆の衆、少し下がっておれ」
私の肩をポンっと叩いてエマに近づいてきたのは…見知らぬ妖魔だった
妖魔!?いつの間に…っ
この私が気づかないなんて…!
華夜「貴方何者!?私の仲間に近づかないで!」
咄嗟に星蘭に手をかけたその時懐かしい声に手が止まった
カルラ「華夜姫様、敵ではありませぬ。
刀を離してくだされ」
華夜「え、カルラ!?戻ってきたの!?」
カルラ「たった今お戻りしました」
華夜「え…カルラがここに居るって事はまさかあの人が…?」
カルラ「左様、妖精族、族長ハバト
奴に任せておけば大丈夫です」
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