蒼き瞳

秋月

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*交わる刃と離れた心

交わる刃と離れた心#14

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黒幕であるヨモギは魔力を多少回復していたが、その程度で私に敵う筈もなく、呆気なく私に敗北、逃げ腰だった悪魔達も士気を失い散り散りに去っていった
これで終わったんだ…全てが…
霊力の限界を越えた私は一気に気が抜けるとそのまま倒れ込んだ

エマ「姫様!しっかりしてください!
私の声が聞こえますか!姫様!」

意識が薄れていく中で段々エマの声が遠くなっていくみたい
ごめんねエマ…心配させて…
でもとてつもなく眠いの
柚綺…瞳を閉じれば貴方がそこに居る
ねぇ夢の中なら貴方に会えるかしら…

――…
次に目が覚めると真っ白な天井が映った
ここが何処か理解するのに少し時間がかかった
だけど見覚えのある天井にすぐに自分の部屋だと分かる
差し込む眩しい光で少し瞳が痛い

エマ「姫様!目を覚まされたのですね!」

側にはエマが居た
随分心配させたみたいね…そんな顔しないで
ずっと側に居てくれたのね…

華夜「どれくらい眠っていたの…?」

エマ「…5日です。もう目を覚まさないのかと心配したんですよ…良かった…」

5日…私はそんなに長い間眠っていたのね…
そして思い出される悪魔達との戦い…柚綺の事…
苦しくて悲しくて胸が締め付けられた
両腕で瞳を覆うと涙が溢れてきた

エマ「姫様…」

エマには泣いているとバレたみたい…
それ以上は何も言わなかった

華夜「全てが終わったのね…」

長過ぎる因縁の戦いは私達の勝利で幕を閉じた
ねぇ柚綺…私がもっと早く貴方の事に気付いていたら運命は変わってたかしら
貴方は死なずに私の隣に居てくれたかしら
そんなの分からないわよね…
現に貴方は私が殺してしまった…
この世界の何処にも柚綺は居ない
貴方が居ない世界はこんなにもちっぽけで寂しいものなのね…
柚綺の最後の言葉が頭に響く
ごめんなさい柚綺…こんな私を愛してくれてありがとう…
敵同士でも私は貴方の事…

エマ「姫様…これを…」

涙を拭った私にエマは1本の剣を差し出した

エマ「どうしようか迷ったのですが…」

その刀は柚綺が使っていた七聖剣…
エマは優しいわね…
柚綺の形見…貴方を感じられる唯一の物…
主を無くし魔力も感じられない…
今ではただのがらくたに過ぎないけど充分よ…
さようなら柚綺…

悪魔達との戦いから数日後、霊力を使い果たし長い眠りについていた私はようやく動けるようになった
それでも起きた時には体は鉛のように重たく感じた
あれだけの霊力を使った代償はこれ程までに大きいと痛感した
また修行をして感覚を取り戻さなくちゃね…
そしてここ数日、妖魔は私を襲いに来るどころかその気配さえ感じなかった
どうやら妖魔の間では私達と悪魔の戦いの噂が流れ、恐れるように姿を隠してるそう
それもそうね…あの戦闘部族の何百と居た悪魔達をたった2人で壊滅に追い込んだのだから
でもその噂のお陰でゆっくり体を休むことが出来た
そして私は七聖剣を持ちエマと一緒に慰霊碑に向かった
少しの間来てないだけで懐かしく感じる
皆にもちゃんと報告しなきゃね…

華夜「皆の敵はちゃんと取ったよ…
だから安心して眠ってね…」

そして持っていた七聖剣を慰霊碑の隣に突き刺した
皆は怒るかな…でも許してね
柚綺は私を助けて守ってくれた優しい悪魔だったの
私の大切なここでどうか静かに眠ってね…

エマ「姫様、これからどうされるのですか?」

華夜「…私達の戦いは終わった訳じゃ無いもの
妖魔が居る限り私は戦う
そしてただ生きるだけよ…この子と一緒に」

お腹を優しく撫でると反応するかの様に動く小さな命…
不安だったけど無事で良かった
柚綺が最後に私に残してくれたかけがえのない大切なもの…

華夜「エマ、私一族を復興させようと思うの
そして昔みたいにここに皆の笑い声が絶えない暖かい世界を作っていきたい」

エマ「…素敵ですね」

華夜「きっとそれは大変な道のりだわ…
エマ、貴方にはいつも無茶ばかりさせてしまうけど一緒に手伝って貰いたい…。駄目かしら?」

エマ「駄目なわけありません
私はどこまでも姫様と共にゆきます」

華夜「ありがとう…エマ」

エマ「城に戻りましょう
あまり冷やされては体に毒です
それに食事もとならければお腹の子が心配です」

華夜「そうね…」

この子の為に…そして柚綺、貴方の為に私は貴方の居ない世界でも生きていくわ
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