約束の果てに

秋月

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*秋の彼岸祭り

秋の彼岸祭り#23

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-琉side-

正直森の事は本当に不愉快だった
けど、蓮を抱き締めてるだけでその不快感は不思議と落ち着いた
今後は森の行動にもより気を付けないとな
森の性格だとあれで諦めたとは思えないし、絶対もう一度接触してくるだろうから
その後、夕食時に森とは顔を合わせたが、俺は一切視線も合わせなければ無視を貫いた
森自身も全く気にしてない様子で至って普通だった
逆にその態度が何かを企んでいるように思えて仕方がない

そんな中でも夕食を終え、反省会も淡々と終わらせ、其々解散
俺も部屋で過ごし、22時を過ぎた頃に微かに部屋の外から足音が聞こえ、人の気配を感じた
そしてすぐに俺の部屋のドアをノックされる
こんな時間に誰が…というよりこれは嫌な予感しかしない
森の可能性が高い
昼間失敗したからリベンジをしに来たと考えるほか無いだろ
ふざけるのも大概にしろよ…
ドアを開ければ昼間の二の舞になりかねないし、無視していれば諦めて帰る様な奴でも…
悶々と策を練っていると外から話し掛けてきた

蓮「琉…?寝ちゃった?」

蓮…?
声の主が蓮と分かると俺は立ち上がってドアを開けた
そこには森じゃなくて紛れもない蓮が居て、俺を見るなり安心したような笑みを見せる

蓮「あ、良かった、起きてた」

琉「なんでお前が…もしかしてなんかあった?」

気付かないうちに榊がまた何か…

蓮「あの…取りあえず入ってもいい?」

そう訪ねてくる蓮に一瞬悩んだ
こいつはまた無防備にこんな時間に男の部屋に訪ねてくるなんて…
けど、蓮の様子だと何か言いたそうだし、ここでは話しづらいことなのかもしれない
そう思って俺は蓮を部屋に招き入れた

琉「で、こんな時間にどうした?」

なんか悩みでも相談されるのかと思えば、蓮は俺が予想もしてなかった事を言い始めた

蓮「えっと…別に特別な事は何もないんだけど…
その…今日…一緒に寝てもいい?」

恐る恐る訪ねてくる蓮に一瞬思考が止まる

琉「は?急に何言ってるんだよ…」

蓮「あの、昼間、森さんとあんな事があったでしょ…?
なんだか森さんの事だから琉の事、諦めて無さそうというか…またあんなことになるかもしれないから…だから…一緒にいた方が安全かなって…
私も琉と一緒に居たい気分でもあるし…琉の事が少し心配なのもあるから…」

確かに俺も同じ事を考えた
蓮の言う通り森が例え来たとしても蓮が一緒なら、森もそこまで神経図太くは無いだろうし…
とはいえ、一緒に寝る…ね…

蓮「やっぱり駄目かな?」

琉「…いや、別に良いよ」

そう答えると俺の表情を伺っていた蓮の表情がパッと明るくなる

蓮「ほんと?ありがとう」

琉「もしかして昼間のこと、少なからず気にしてんの?」

蓮「…そ…んなこと無いよ」

この様子だと図星っぽいな
まぁ、望んでなかったとはいえ、あんなの目の当たりにしたら気にするか…
こいつの気がそれで晴れるならないんでもいいか…
俺が気を付ければ良いだけだし…

琉「はぁ…俺、床で寝るからお前ベット使えよ」

蓮「え?」

きょとんとした顔で声を漏らした蓮

琉「なにその反応
…まさかとは思うけど2人一緒にベットで寝るつもりだったのか?」

蓮「うん」

平然とそう答える蓮に少し呆れる
普段は恥ずかしがるような事の癖に、たまに俺の想像の上を行くと言うか…

蓮「…今日は琉とくっついて寝たいんだけど…駄目?」

琉「…はぁ…分かったよ
落ちると悪いからお前壁際行け」

蓮「それじゃぁ、私の寝相が悪いみたいに聞こえるー」

琉「そうゆうつもりで言ってないし」

蓮「ふふっ、分かってるよ、ありがとう
それじゃお邪魔します」

そう言って何の抵抗もなくすんなりとベットに潜り込んだ蓮

蓮「琉もほら、こっちどうぞ」

いくら俺が相手とはいえ無防備過ぎる…
いや…若干様子がいつもと違う気がするのは気のせいなのか…?
はぁ…俺が気にしてもしょうがないか
そのまま蓮に言われるまま俺もベットに上がる

蓮「琉眠い?」

琉「いや、別にまだ平気」

蓮「ほんと?じゃあ少しお喋りしてても大丈夫?」

琉「お前の好きにしたら?」

そう伝えた途端に笑みを浮かべながら嬉々として話し始める蓮
朝と帰りの登下校はもちろんこの2週間近くはほとんど一緒に過ごして会話することも多い
いつもいつも会話の内容が良く尽きないなと感心する
俺なんてただ聞いてる事がほとんどで相槌だって周りと比べたらそんな大した事もなくて、退屈に感じても可笑しくないのに、こいつはそんなの気にしないように楽しそうだよな…
そのまま蓮としばらく話してると早いもので23時を回り、その頃になると蓮の表情も眠たそうになり欠伸を繰り返す

蓮「ふぁ…」

琉「そろそろ寝るか」

蓮「うん…」

ちょっと寝惚けたように目元を軽く擦りながら返事する蓮
そのままお互い布団に入って、向かい合うように横になった
蓮と目が合うと何故か可笑しそうに笑う

蓮「ふふっ、やっぱり一緒だと少し狭い?」

琉「狭いなら俺が出るけど」

蓮「んーん、このままがいいな」

…なんだかこいつの言動に振り回されてる気がする
けどそれは今に始まったことじゃないな
それにしてもなんでこんなに落ち着いてるんだか…
恥ずかしがる様子もないし…
実際にふと蓮の頭に手を伸ばして軽く撫でる動作をしても至って普通
流石に慣れたか?
まぁ、こんな風に落ち着いた時間を過ごすのも悪くないか

琉「…お休み」

そう伝えると蓮は何故かじっと見たまま目を離さない

琉「何?どうかした?」

そう聞くと蓮は思ってもなかった発言を口にした

蓮「琉…その…キスしたいな…」
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