約束の果てに

秋月

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*琉の過去

琉の過去#17

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そして翌日の朝、真衣さんのお見送りに行く日
玄関を出ると、琉が待っていてくれた

蓮「おはよ、琉」

桜「おはよ」

琉「おう…行くぞ」

琉と一緒に真衣さんの待つ駅へと向かった

桜「昨日大丈夫だったの?
華さん達にちゃんと話せたの?」

琉「餓鬼じゃ無いんだからそんなに心配することないだろ」

桜「別に餓鬼扱いしてる訳じゃないでしょ
あんたの事が心配だから聞いてあげてるの!」

華さんも陸人さんも心配してただろうな…

琉「一通りの事は話した
今日見送りに行くことも話したし、送り出してくれたよ」

蓮「そっか」

琉「この見送りで本当に最後で、ケリもつく
全部終わったら陸人さんと華さんにちゃんと話したいこともあったから、帰ったらもう一度話をするつもりだ」

桜「それって…」

琉「ずっと伝えなきゃと思ってたけど伝えられなかった事
あの人達には本当に感謝してるから」

この様子、どうやらいい話みたい
今度華さんに会ったら聞いてみようかな
そして私達は真衣さんの待つ駅に着いた
そこには真衣さんとこの間一緒に居た男性が居た
昨日話してくれた真衣さんにプロポーズした人だよね?
真衣さんは琉に気付くと安心したように声を掛けてきた

真衣「琉…!本当に来てくれたんだ…
もしかしたら来てくれないんじゃないかって思ってたから…嬉しい…ありがとう」

琉「…それくらいの親孝行はするって言っただろ」

「琉くん、初めまして
真衣と同じ職場の谷田たにだ草平そうへいです
琉くんの事は真衣から聞いてるよ
今日は来てくれてありがとう」

琉「…あんたの事は…母さんから聞いてるよ
プロポーズしたって」

草平「はは、恥ずかしいな
まだ返事は貰ってないんだけど、俺は真衣を手離すつもりは無いからさ
振られたとしても何度もアプローチするつもりだから」

草平さんいい人みたいで良かった
真衣さんの事心から思ってるみたいだし…
真衣さんも一緒に行くことがもう返事みたいなものなのに…
でもプロポーズされたならやっぱりちゃんと返事はしないとだもんね
真衣さん頑張ってくださいと心の中で私はエールを送った

そして琉は草平さんに対してこう言った

琉「母さんのこと…よろしくお願いします」

真衣「琉…っ」

真衣さんの目からは今にも涙が溢れそう

草平「勿論」

次に琉は真衣さんの方に目を向けた

琉「父さんの事だけど、近い内に成仏するから心配するな
父さんの未練は母さんだったから、安心したら自然と成仏する」

真衣「分かった…ありがとう琉…」

琉「母さんはもう俺の事なんて忘れて、幸せに暮らせよ
俺も母さんの幸せを願ってるから」

真衣「忘れない!
琉の事も竜哉の事も絶対忘れないから…
私は…貴方達が願ってくれた通りこれからは自分の幸せの為に生きるから、琉も…幸せに暮らしなさい…」

琉「……」

真衣「それから琉…これは私の我が儘なんだけど…あの、最後に…抱き締めてもいい…?」

琉「…勝手にしろ」

次の瞬間、真衣さんは琉の事を本当に宝物みたいに大切に抱き締めて涙を流していた
見ていた私達も真衣さんの琉に対する愛情が溢れているように見えた

真衣「…こんなに大きくて優しい子になってくれてありがとう
もう一度私の事を母さんと呼んでくれてありがとう
母親らしい事は何1つ出来なかったけど…北海道から琉の幸せを祈ってるから
琉…私と竜哉の大切な宝物…愛してる」

桜「蓮…」

蓮「うん、見えてるよ」

琉を抱き締める真衣さん
そんな2人を包み込むように竜哉さんも抱き締めていた
まるで掛け替えのない家族の形みたい…
そして琉も答えるように腕を動かした

琉「…ありがとう…母さん、父さん…」

琉のお父さんは安心したように、同時に成仏し、静かに消えていった

真衣「じゃあね、琉」

琉「あぁ」

真衣さんは笑みを見せながら草平さんと一緒に去っていった

桜「もう2度と会えないかもしれないのに本当に良かったの?」

琉「あの人も俺も会わない方がお互いの為だろ
会わないだけで忘れる訳じゃ無いんだから、いいんだよこれで」

桜「そっか、琉が決めたことならもう私達も何も言わないよ」

琉「そっか…それで蓮はずっと顔押さえて何してんだよ」

蓮「う…なんか感動しちゃって…」

桜「最近の蓮は本当涙脆くなった気がする」

琉「はぁ…お前が泣くことじゃないだろ…
まぁ、でもありがとな
それで、俺は家に変えるけどお前等はどうするんだ?」

蓮「えっと…私達も取りあえず帰ろうかな
レポートまだ残ってるし…」

琉「じゃぁ、送る…前に取りあえず泣き止めよ
そんな顔で帰ったって親、驚くだろ」

蓮「分かった…ちょっと待って」

私は涙を脱ぐって

蓮「よし、大丈夫だよ!」

その後、家まで送り届けてくれた琉

琉「じゃぁ、また明日な」

蓮「うん、琉も気を付けてね」

去っていく琉の姿を私は静かに見送った

-琉side-

母さんの見送りも済み、蓮と桜を送り届け、俺は1人家に帰った

琉「ただいま」

玄関を開けて中に入るなり、華さんが飛びつく勢いで俺に抱き付いてきた

華「琉!!おかえり!」

琉「う…華さん苦しいって
昨日も同じ出迎えだったけど、心配しなくて良いって言っただろ」

華「何言ってるの!
琉が何歳になったって、一人立ちしたって結婚したって、琉は私達の大切な息子なんだから心配するに決まってるでしょっ」

華さんの言葉に胸が暖かくなる気がした

華「それに正直不安だったの
私達は琉のしたいこと、決めたことなら受け入れるつもりだったけど、もしも琉が真衣についていくって決めたらどうしようって…」

陸人「琉が決めた事とはいえそうなったら寂しいなって話してたんだ」

華「私達にとっても琉は宝物だからね」

華さん…陸人さん…
本当に2人が俺の育ての親で良かったよ

琉「…着いていくわけないだろ
俺の帰る場所は…父さんと母さんが居るこの家なんだから」

ずっと2人の事を父と母と呼べなかった
実の親に捨てられた原因もあるが、自分に血の繋がりが無いから何処か勝手に線引きしていた気がする

琉「俺は…ずっと怖かったのかもしれない
また捨てられるんじゃないかって、本当の家族じゃないから愛されることもないって
2人がそんな人のわけないのは良く分かってる筈なのにな
本当はずっとそう呼びたかったんだ
迷惑なら辞めるから」

華さんはもう一度泣きながら俺を抱き締めてくれた

華「琉ってどうしてそんな遠慮するの?
迷惑なわけないじゃないっ
むしろ私達はずっと琉がそう呼んでくれるのを待ってたの!
こんなに嬉しいことってない!」

陸人「琉、俺も嬉しいよ
こんな未熟な俺達の事を父と母と呼んでくれて」

琉「父さん…母さん…」

陸人「これでやっと本当の家族に慣れたな、俺達」

華「そうね!陸人、折角だからご馳走でも食べに行こうよ!ね、琉?
琉は何食べたい?今日くらい高級な物でも遠慮することないわよ」

陸人「確かに名案だな
外で食べることあんまり無かったもんな」

琉「じゃぁ、ロザリティアのパスタ」

華「え、ロザリティアって」

琉「2人共あそこのパスタ好きだろ」

陸人「そうだけど、琉の好きなものでいいんだぞ?」

琉「父さんと母さんの好きなものが俺の好物だから」

華「琉~っ、あんたって子は本当にいい子なんだから!
分かった!こうなったらロザリティアの全メニュー制覇してやりましょ!」

陸人「華、それは無理だから」

華「スイーツも食べるんだから!
あそこは甘さ控えたスイーツもあるから琉もきっと食べれるよ」

陸人「食べ過ぎてお腹壊さないでくれよ?」

華「甘いものは別腹でしょ?」

楽しそうに盛り上がる2人を見て、俺は安心したように笑みが溢れた
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