約束の果てに

秋月

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*君の存在

君の存在#1

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「えーん…えーん…」

またこの夢…前に見た時と同じ男の子が泣いてる
何でだろう…どこか悲しいーー…

桜「おはよ蓮」

蓮「おはよ」

目が覚めて、朝の身支度を進めながらボーっと朝の夢を思い出す
またあの男の子が泣いてる夢を見た
同じ夢を見るなんて初めてだけど何か意味があるのかな
何だろ…あの男の子は私に何を伝えたいんだろ
それに…あの子誰かに似てる気がするんだけど誰だろう…
泣いてうずくまっていて、顔がよく見えなかったから気のせいかもしれないけど…

桜「どうしたの蓮?ボーッとして」

蓮「ううん、ちょっと変な夢見ただけ」

桜「夢?どんな?
1回悪霊に憑かれて悪夢も見てるんだからまた良くない事かもしれないよ
ちょっとでも変な事とか不思議に思ったことは私に相談して!」

悪霊の事があってから桜が余計過保護になった気がする…

蓮「知らない小さな男の子がうずくまってただ泣いてるだけの夢だよ
嫌な感じも怖い感じもしないから大丈夫だよ」

桜「確かに何もなさそうな夢ね…
でも何かあったらすぐに言うんだよ?」

蓮「勿論、桜もそんな心配ばかりしてると老けちゃうよ~?」

桜「それ前にお母さんにも言ってたでしょ
それに私は幽霊だから老けるなんて言葉には縁がないんです~」

蓮「あはっ、それもそっか」

あの夢の事はちょっと不思議だなって思うけど、考えても分からないし、気持ち切り替えて今日も頑張ろ
今日は安藤くんにも迷惑をかけず、桜やお母さん達にも心配かけない、平穏な1日を過ごせますように!
鞄を持って階段を降りてリビングを覗くとお父さんもお母さんももう居なかった
お母さん達はもう仕事に行っちゃったか
私が最後なんて久し振り
戸締りしっかりしないとね

蓮「よし、行ってきます」

私は誰も居ない家に向かってそれだけ言った
誰も居なくても言うだけで何となく気合いが入る気がした
そして駅に向かおうと家の敷地から出ると横目に誰か人の影が写ってビックリして目を向けるとそこには壁に寄り掛かる安藤くんが居た

蓮「安藤くん!?えっ?なんで?」

困惑する私とは正反対で冷静な安藤くん

琉「なんでもなにも守るって言っただろ」

え…
私と桜は目を丸くして顔を合わせた
確かに守るとは言われたけど、まさか朝も迎えに来るなんて思ってなかったよ…!?

琉「その様子じゃ昨夜は何もなかったみたいだな」

私達をじっと見て安藤くんはそう呟いた
心配…しててくれたのかな?

蓮「うん、お陰さまで…?
それに何かあったらちゃんと連絡するよ」

桜「蓮が無理でも私だって電話をかけるくらいの力はあるしね」

昨日の帰りに何かあったら連絡出来るようにって安藤くんが連絡先教えてくれてたんだよね
まさか安藤くんと連絡先交換するとは思わなかったなぁ
まぁ、関わることもないと思ってたけど…不思議な縁だな

桜「なんなら嫌がせにあんたに電話かけまくってやる」

と悪戯そうに笑う桜

琉「そしたら問答無用で除霊するからな
俺を怒らせて後悔するなよ」

う、安藤くんなら本気でやりそうだし、そんな悪戯したら凄く怒りそう…
まぁ、桜も本気でする気はないだろうけど

琉「あと、これ持ってろ」

安藤くんに渡されたのは1枚の御札

蓮「御札?」

琉「昨日作った俺の力が込められた霊除けの護符だ
それを肌に離さず持ってろ
それを持ってる限り俺が側に居なくても霊は蓮達には近づけない」

桜「へぇ、除霊師ってそんなことまで出来るのね
これならあんたが居なくても安心ね」

私達の為に用意してくれたんだ…
只の御札にしか見えないけど、安藤くんの力が込められてるって聞くととても大切な物に思えてきた…
ううん、本当に大切な物だから宝物のように大切にしなきゃねっ

蓮「この文字なんかキラキラしてるね」

琉「目が良いな
墨に金粉が一緒に入ってる」

金粉!?本当に凄い御札みたいだから気を付けよ…

琉「それじゃ行くぞ」

そう言って歩き出した安藤くん

蓮「あ、安藤くん!」

私が呼び掛けると振り返ってくれた

琉「なに?」

蓮「おはよう安藤くん」

そういえば挨拶してなかったなって思って、挨拶したんだけど、安藤くんはじっと私を見てふいっと顔を反らしてしまった

琉「…おう、早くしないと置いていく」

琉「あ、うんっ」

歩き出す安藤くんの後を追いかけた
うーん、まさか安藤くんと一緒に登下校することになるとは…
今日もあんまり喋らないなぁ
やっぱり寡黙かもくな人だなぁ
登下校一緒って事は学校の人にも当然見られることがあると思うけど、あんな風に騒ぎ立てられて安藤くんは平気なのかな…
安藤くんの事だから何も言わないかハッキリ否定するかのどちらかかな
私もハッキリ言えるように心の準備しておこっと
でも不思議だな…
会話がないって気まずい事が多いけど、安藤くんと一緒だとあんまり気にならないや
うーん…それにしても悪霊に取り憑かれた一件から今まで以上に沢山の幽霊が見えるようになった
今日もいっぱいいるなぁ…
最初は慣れなくて怖かったけど慣れって怖いな
今日はいつもより多いかもしれない
普通の霊じゃなくて悪霊が

桜「嫌な感じだね
みんな私達の事見てる」

今までと同様に無害な霊は私達に別に興味を示さないけど…悪霊に関しては話が別
まるで獲物を狙う獣の様

琉「みんなお前等を狙ってんだろう
ま、札があるから近づいては来ないけど、油断はするなよ」

蓮「…どうして安藤君は除霊師になったの?」

琉「…別に」

素っ気ない返事
何となくで聞いたけど、聞いちゃいけなかったかな…
安藤くんの事、少しでも知れたらいいんだけどな…
まぁ、少しずつでも知っていけるよね
そしてもう直ぐ学校に着く所で安藤くんが口を開いた

琉「桜…お前昨日みたいに力をあんな風に使うなよ」

桜「どうしてよ?」

昨日の桜のやった事と言えばポルターガイスト現象だけど…
やっぱり少なからずその事については怒ってるように見えるな…

琉「その力はあんな事に使うものじゃないし、無闇に周りを怖がらせるな
桜のその力は万が一の時の蓮を守る為に使えばいい」

安藤くん?

桜「分かった、無闇に使わないって約束する」

良くは思ってないみたいだけど…桜が正しく使えるように導いているような感じもする
それに今の安藤くんの言葉にはすごく重みがあった気がする…
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