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王都……の、その後

155.違う!違う!

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「結論から言う前に、まずはあたしの正体から話します。アリエル・レインとは50年前、夫殺しの罪を犯した魔女の名前です。そして、それはあたしです」

死人組でない騎士団がザワついた。
でも、既に正体を聞いていた私や何となくわかっていたらしいディラン達は黙って頷いている。
アリエルはその状況を見て話を続けた。

「毒の魔女。そう呼ばれたあたしは、薬草から薬と呼ばれるあらゆるものを作り出すことが出来ました。体に良いものや、反対に命を奪うものまで……そして、あ、ある理由から、あたしは……夫を殺そうと思い立ちました」

ある理由?
珍しく流暢に話していたアリエルが、その部分だけ言葉に詰まった。
きっとよっぽどのことがあったに違いない……そう思ったけど聞くことは止めておいた。
言いたくないことは誰にでもあるもの。
他の皆も私と同じように思ったみたいで、黙ってアリエルの話の続きを待った。

「……えっと、そのとき使用した毒……それが、これ……」

アリエルはエレナが騎士団に盛った毒の小瓶を、指でつまんで目の前に掲げた。

「でもこの毒は失敗作で、夫の命を奪うことは出来なかった。毒を盛ってから約3時間後……彼は息を吹き返したんです」

「えっ!?」

私は思わず大きな声を出した。
それって仮死状態になっただけってことじゃない!?
ということは、よ?
同じ毒を盛られた騎士団も、生き返る可能性があるんじゃないの!?
私と騎士団は、息を呑んでその言葉の続きを待った。
そんな私達一人一人の表情を眺め、力強く頷いたアリエルは大きな声で言い放った。

「そうなんですっ!!だから、咄嗟に鍋蓋で殴ってしまったんです!」

………ん?……んん?鍋蓋?

「死んだと思った男が、起き上がったんです!もう、あたし怖くて怖くて。だから近くにあった鍋蓋で思い切りガツンと……」

アリエルは当時のことを思い出したのか、ぶるると震え両腕を擦った。
確かに冥府の王族もいないのに、死人が起き上がったらこわいわよね?
だけど………。

「アリエル!!違う!違う!そうじゃない!!いや、そうじゃないじゃなくて、そこじゃない!」

知りたいのはそこじゃないのよ、って言えば良かったのに、私も慌てて支離滅裂なことを叫んでしまった。

「アリエル。シルベーヌ様が知りたいのは、騎士団も生き返るのか、ということですよ?」

呆れてローケンが口を挟み、更に可哀想なものを見るような目で私達を一瞥した……。
言いたいことはわかるわよ……。
シルベーヌ&アリエル、こいつらアホだな……そう思ってるわね……くすん。

「……あっ!はいはい。そうか、そうですね!すみません。そこ、じゃないんですね……ええと、では結論をいいますね?」

ゴクリ……騎士団が息を飲む音が聞こえた。

「生き返るかもしれません………がっ!!」

アリエルは、ここ大事!!と言わんばかりに強調し声を張る。

「なんせ50年経ってますからね。いくら保存状態が良かったとはいえ、経年変化はしていると思います。だから、夫は3時間で生き返ったけど、皆さんは3週間か、下手したら3年くらいかかるかもしれません」

「……どれだけかかるかはわからないけど、僕たちは生き返ることが出来る?と?」

ヒューゴは何故か寂しそうにアリエルに問いかけた。

「はい!それは断言します!もし、思わぬ化学変化が起きていたとしても、毒の魔女のプライドにかけて、この毒のすべてを解き明かすので、安心してお任せください!」

そんなに大きくない胸を拳でポンッと叩き、アリエルは自信たっぷりに言った。
そして、私は横に立つディランに「良かったわね!」と声をかけようとして咄嗟に言葉を飲み込んだ。
彼が……この世の終わりのような顔をしていたから。

「ディラン!?何?どうしたの?」

体を揺すって問いかけると、彼はゆっくりと私を見下ろした。

「……死人じゃなくなるなんて……折角シルベーヌ様に不死にして貰ったのに!オレは……もう誇りあるシルベーヌ様の騎士でいられないのか……」

「はい?」

また何を言い出したの?このめんどくさい人……。

「嫌なの?生き返れるのに?」

「……シルベーヌ様の特別でいられないなんて……俺は俺達は……いつの間にか死人であること、シルベーヌ様の騎士団であることに生き甲斐……いや、死に甲斐を感じていたんだ!」

ディランの言葉に、騎士団(死人組)がわらわらと集まり、私の周りを囲んで困惑したような表情を浮かべた。



















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