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王都

150.結婚20周年のお祝いに……

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「いいでしょうっ!娘の成長は親なら嬉しいものだもの!それに男前の婿は大歓迎!突然お嫁に行っちゃうのは悲しいけど……地上へ遊びに行けば会えるんだから、ね?」

「ありがとう、お母様!」

ムフフフ、これで完全に地上は守られたし、私もゆっくりと地上で暮らせる。
なんてったって、冥府で最強の王妃様が承認したんだもの!
だけど、ほくそえむ私の前では、未だに顔色の悪い父王ルーマンドが言い訳を考えているようだった。
そして、怯える父にとうとう母の矛先が向いた!

「で?あなた?」

「ふぁっ!は、はい?」

「……シルベーヌちゃんを変態に嫁がせようとした理由をまだ聞いていないわねぇ」

「あ……はい」

父はスピークラムへ向かって頭を垂れ、弱々しく返事をした。

「思慮深いあなたが、どうしてこんなバカなことを?取り返しのつかないことになっていたかもしれなくてよ?」

そうですよ?
私、変態に襲われかけて、一度は覚悟を決めましたから!
あのまま騎士団やナシリス軍が来なかったら、と思うとまだ体が震えるわ。

「うん……そうだな。それは考えが足りなかったように思う……」

「じゃあなぜ?」

「君が……言ったろう?」

「何を?」

「地上から使者が来たとき……持ってきた宝石が気に入ったと」

「うーん、そういえば……?とても、美しかったから、言ったかもしれないわねぇ?」

そこで、妙な間が出来た。
その僅かな時間で、私は(珍しく)父の気持ちに思い至った。

「まさかっ!お母様の為に宝石を手に入れたくて地上を侵攻しようと?」

私は叫んだ!

「うっ!」

うっ!?
その一言は肯定したと見なします。
言葉に詰まる父に私は怒りが収まらなかった!
だって、そうでしょう!?
妻が欲しいと言ったから……なんて、愛妻家にもほどがあるわ!
妻へのプレゼントなら、もっと手順を踏んで用意して?
そして、誰にも迷惑をかけないで?
お願いだからっ!

「お父様っ、それはあんまりな理由ではないかと……」

ここで怒っておかなければ!と、私は息巻いた。
だけど、その言葉を止めたのは当事者の一人だった。

「あなた……わたくしのために?地上を滅ぼそうとなさったの?」

そうよ!ガツンと怒ってやって下さい!

「……うむ。結果的にはそうなってしまうな……だが、もうそれは……」

「まぁ……あなた。そんなにわたくしのことを……」

は?
ちょっと、あの、違うこれ……変な方に流れてない?

「……まぁ、な。ほら、もうすぐ結婚20周年記念だろう?」

「覚えていて下さったの!?」

「当たり前だ!!忘れるはずはない!だから今年はどーんと派手に祝おうと思っていたんだ!」

まさか……祝砲を撃つくらいの感覚で、地上を滅ぼそうとしたの?
どーん!って打ち上げ花火みたいに滅ぼすの?
笑えないわー。

「そうなのね。わたくし、何も知らなくて……」

「いいんだよ。私の愛をわかってくれるなら!」

「あなた………」

もう、いや誰か止めて。
この迷惑な夫婦、早くに冥府に帰って下さい!










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