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王都

130.不死の騎士団

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ディランとロビーは私を庇ったまま、剣を構えた。
いくら死なない、痛くないと言っても、矢が刺さるのを見るのはやっぱり辛い。
でも矢は放たれてしまった。
ディランとロビーの背中を掴み、私は思わず目を閉じた。

シュッ!ザッ!!キィン!
何かを振る音、足を擦る音、刃物に何かが当たる音。
同じ音が、何回か響き、辺りが少し静かになると私は恐る恐る目を開けた。
………そこには、剣を構えたディランとロビーが、目を瞑る前と同じ格好でそこにいる。
あっれ?
何もなかった?
と思い、ふと足元を見ると、無数の矢が折れた状態で落ちていた。

「ディラン!ロビー!矢、当たってないの!?大丈夫なの!?」

「ははっ!あの程度の矢にか?」

「シルベーヌ様ご安心を。ヘタクソの矢なんて掠りもしません」

二人は大きな声で笑った。
えー………笑ってるけど、飛んで来るもの叩き落とすなんてどんな動体視力??

「クソっ………何故だ?圧倒的に不利だろう!?人数から見ても……」

「能無しを何人集めても一緒だぞ。そんなこともわからないから愚王だと言うんだ」

「生意気な……」

王は激しくディランを睨んだ。
私兵はまた矢をつがい、同じ様に射ようと準備をしている。
今度は、後ろにいる剣を構えた私兵もジリジリと迫ってきていた。

「ふん、いくらなんでも、疲れてしまえば動きも鈍る。それまで待てば良いわ」

「悪いが、何度やっても同じだ。疲れもしないし動きも鈍らないぞ。なんなら一ヶ月くらいこうしていてもいいが……」

えっ!その間の私のご飯はどうするの?
……なんていいません。ごめんなさい。

「そんな人間いるものか!!」

「いる。ヴァーミリオン騎士団がそうだ。シルベーヌ様の冥府の力に救われた我ら騎士団は、不死の騎士団である」

「冥府の……力だと?」

訝しげに眉を潜めた王に、ディランは雄々しく言い放った。

「愚かな人間の分際で、シルベーヌ様を追い払い暴言を吐いた罪。騎士団を、俺を毒殺しようとした罪。王女達を監禁し傷付けた罪。道を正そうと試みた家臣を拷問した罪……他にも余罪はあるが、俺が一番気に入らないのは、その汚い手で、俺の……俺の……俺のシルベーヌ様に触れたことだぁ!!」

あーーーもう、途中までカッコ良かったのにーーー!
そういうとこよ、そういうとこが、惜しいのよ!  
私の心の叫びなんて、もちろんディランは聞いてない。
言ってやった!と息巻く彼は、剣の刃先を王に向けた。

「さぁ!ヴァーミリオン騎士団、その実力を示せ!シルベーヌ様に我らの真価をお見せしよう!」

ディランの良く通る声が、謁見の間に響いた。
と同時に、向かい入口側の扉が破られる。
地下の扉からは出番を待っていた騎士団が踊り出て来た。

「あーもう!地下の湿気、最悪!イライラするからドーンとお返ししちゃうわね!」

ウィレムは、長く美しい髪をきゅっと一つに束ねた。

「もう、我慢しなくていいんだな」

「暴れ足りねぇ!死体役も結局必要無かったし?ここで活躍するしかないじゃん?」

アッシュは呟き、ミルズはツンと口を尖らせる。
あ、そう言えば子爵邸で暫く放置されたのよねぇ。
死体役のまま何時間待ったんだろう。
誰か呼びに行けば良かったのに……。

皆はディランの前方を固め、そのディランは私を背に剣を構える。
そして、破られた入り口からは、クレバードとフォーサイス、合流したらしいサクリス率いるナシリス兵がなだれ込んだ。







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