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王都
124.レガリア《王権》
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足音を立てずに歩き、分岐点手前の曲がり角から様子を伺うと、スピークルムが言った通り、3人の私兵がそこにいた。
アリエルは、ゆっくり痺れ薬の小瓶を取り出し私を見る。
《行きますね?》
手振りで伝えてくる彼女に頷き返し、私も身構えた。
躍り出る準備が整ったその時、緊張感のない私兵の会話が耳に入ってきた。
「外はどうなんだ?」
「それがなー、劣勢らしいぜ?正面からはナシリス、側面からヴァーミリオン。特にヴァーミリオンのやつら、鬼のように強えぇからな」
私は咄嗟にアリエルの襟元を掴んでしまった。
私兵の話から詳しい状況がわかるかもしれない、そう思ったから。
彼女は小さく、ぐぇっという声を出したけど、幸い私兵には聞こえていなかったらしい。
「ちょっ!シルベーヌ様っ!?」
「ごめんごめん。もう少し待って?なんだか、あの人達、今の状況の話してるから」
そう言うと、アリエルも隠れながら聞き耳をたてた。
「王はどこに行ったんだ?」
「さぁな。まぁ、危ないところには出向かんだろうよ。御自慢のお顔に傷でも付けられたら困るだろうし」
そうね、私もそう思うわ。
だからこそ、あの顔を一発殴らないと気がすまない!!
……一発じゃ足りないかしら?
「違いねぇ。だが、そろそろ俺達もとんずらした方が良くないか」
「言えてるな。もう結末が見えたしな……どう考えたって、俺達がヴァーミリオン騎士団に敵うとは思えん」
ふふふふふふふふふふふふ。
そうでしょうとも!
ヴァーミリオン騎士団は、強いんだから!
あなた達なんてボッコボコにされるわよ?
でも、不思議よね?自分のことでもないのに騎士団が誉められると私も嬉しくて仕方ない。
これは、きっと寝食を共にした結果かもしれない!
………いえ、どちらも共にしてなかったわね……。
そう、寝食を「見られていた」からだわ!
「必死こいて探してるレガリアだって見つからねえしなぁー」
レガリア??
私はアリエルと顔を見合わせた。
彼女は首を傾げ、わからないです、という手振りをする。
確か、最高権力者、つまり王が持つものでその身分を証明するために必要なもの……ではなかったかしら?
『その通りデス。アルハガウンではそういったものはありませんケドね?国によって王の身分を証明するものは違います。ここラシュカでは王権(レガリア)なのデス』
スピークルムが私の言葉を肯定した。
「つまり、今、変態王はレガリアを持っていない……」
『そうデス………あ、これは………もしかしたら……』
スピークルムはそう言うと、突然くるくると回りだし、辺りに光を振り撒き始めた。
ちょっとーー!
隠れてるのに存在アピールしてどうすんのよぉ!!
「おいっ!!何か光ってるぞ!!」
「誰か居やがるな!そこのヤツ出てこい!」
バカーーー!
ほら、見つかった……。
スピークルムはそれでも回るのを止めず、燦々と光を振り撒いている。
「アリエル、こうなったら……」
と声をかけると、彼女はもう私兵に向かって突撃を開始していた!
ちょっと待ってよーー!
とんだせっかちね!
私の周り、こんなんばっかりなのーー!?
私は仕方なくアリエルに続いた。
小瓶の蓋を開け、私兵に走り寄るアリエル。
私兵は剣を彼女に向けて、振り下ろそうとしているけど、そうはさせないわ。
私は回るスピークルムの光を私兵の方に向けた。
「ぐっ!目が………」
「うわっ、何だ」
「くそ、見えん!」
目映い光に目がくらみ、私兵の動きが止まった。
すかさずアリエルが痺れ薬を嗅がせると、彼らはうめき声も出さず崩れ落ちた。
アリエルは、ゆっくり痺れ薬の小瓶を取り出し私を見る。
《行きますね?》
手振りで伝えてくる彼女に頷き返し、私も身構えた。
躍り出る準備が整ったその時、緊張感のない私兵の会話が耳に入ってきた。
「外はどうなんだ?」
「それがなー、劣勢らしいぜ?正面からはナシリス、側面からヴァーミリオン。特にヴァーミリオンのやつら、鬼のように強えぇからな」
私は咄嗟にアリエルの襟元を掴んでしまった。
私兵の話から詳しい状況がわかるかもしれない、そう思ったから。
彼女は小さく、ぐぇっという声を出したけど、幸い私兵には聞こえていなかったらしい。
「ちょっ!シルベーヌ様っ!?」
「ごめんごめん。もう少し待って?なんだか、あの人達、今の状況の話してるから」
そう言うと、アリエルも隠れながら聞き耳をたてた。
「王はどこに行ったんだ?」
「さぁな。まぁ、危ないところには出向かんだろうよ。御自慢のお顔に傷でも付けられたら困るだろうし」
そうね、私もそう思うわ。
だからこそ、あの顔を一発殴らないと気がすまない!!
……一発じゃ足りないかしら?
「違いねぇ。だが、そろそろ俺達もとんずらした方が良くないか」
「言えてるな。もう結末が見えたしな……どう考えたって、俺達がヴァーミリオン騎士団に敵うとは思えん」
ふふふふふふふふふふふふ。
そうでしょうとも!
ヴァーミリオン騎士団は、強いんだから!
あなた達なんてボッコボコにされるわよ?
でも、不思議よね?自分のことでもないのに騎士団が誉められると私も嬉しくて仕方ない。
これは、きっと寝食を共にした結果かもしれない!
………いえ、どちらも共にしてなかったわね……。
そう、寝食を「見られていた」からだわ!
「必死こいて探してるレガリアだって見つからねえしなぁー」
レガリア??
私はアリエルと顔を見合わせた。
彼女は首を傾げ、わからないです、という手振りをする。
確か、最高権力者、つまり王が持つものでその身分を証明するために必要なもの……ではなかったかしら?
『その通りデス。アルハガウンではそういったものはありませんケドね?国によって王の身分を証明するものは違います。ここラシュカでは王権(レガリア)なのデス』
スピークルムが私の言葉を肯定した。
「つまり、今、変態王はレガリアを持っていない……」
『そうデス………あ、これは………もしかしたら……』
スピークルムはそう言うと、突然くるくると回りだし、辺りに光を振り撒き始めた。
ちょっとーー!
隠れてるのに存在アピールしてどうすんのよぉ!!
「おいっ!!何か光ってるぞ!!」
「誰か居やがるな!そこのヤツ出てこい!」
バカーーー!
ほら、見つかった……。
スピークルムはそれでも回るのを止めず、燦々と光を振り撒いている。
「アリエル、こうなったら……」
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ちょっと待ってよーー!
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私は回るスピークルムの光を私兵の方に向けた。
「ぐっ!目が………」
「うわっ、何だ」
「くそ、見えん!」
目映い光に目がくらみ、私兵の動きが止まった。
すかさずアリエルが痺れ薬を嗅がせると、彼らはうめき声も出さず崩れ落ちた。
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