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王都

123.小瓶と魔女と宰相と

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箱庭(牢獄)を後にし、監禁されていた部屋を通りすぎ、私達は足早に出口に向かっていた。
ここまでの私兵は、アリエルにより排除……生きてるのか死んでるのかわからない状態だったから、全く問題はなかったわ。
困るのはここから。
来る途中に見たのは、2ヶ所の検問に私兵が3人づつ。
彼らが外の応援に行っていなければ、その私兵を私達でなんとか倒さなくてはならない。

「ねぇ、アリエル?」

「はい。なんでしょうか?」

「……どうやって私兵を倒したの??」

怖いけど、今、聞かないとだめよね?
恐る恐る、アリエルに尋ねてみた。

「ああ!はいはい。これですよー!アリエル特製痺れ薬。一度吸ったら暫くは体の自由がききません!クマでも一発で沈めます!」

アリエルはドレスをたくしあげ、少し減った小瓶の中身を指差した。
クマで試したことが??
いえ、そんなことはどうでもいいわ。

「へぇ!痺れ薬なんだ!(死んではなかったわ)便利なもの作れるのねぇ」

私はその小瓶を覗き込んだ。
よくよく見るとそれは、どこかで……見た記憶がある。
アリエルが持っている毒の小瓶は、どれも同じ形状のもので、硝子細工の高級そうなものだ。
不思議そうに首を傾げた私に、アリエルは言った。

「この小瓶、エレナが持っていたのと同じ………そう、お考えでは?」

あっ!!
そうよ!そうだわ!
ええ、全く「お考え」ではなかったけど、漸く思い出した。
子爵邸でみた毒の小瓶、それと同じなのよ。

「何で同じものをアリエルが?」

その質問に、アリエルは少し言葉を詰まらせながら答えた。

「………もともと……これはアリエル・レイン、あたしの持ち物なんです」

「どういうこと?出来たらハッキリわかりやすく答えてくれると助かるわ」

理解力がほぼゼロなんで、そこのところヨロシク。
私のそんな身勝手な理由を、アリエルは怒っていると捉えたらしい。
ブルッと体を震わせて、いつもの卑屈な彼女になると、嵐のように捲し立てた。

「すいませんすいませんっ!実は毒の魔女はあたしなんです!この小瓶は当時あたしが使っていたもので、何故かそれをラシュカ王が手に入れたらしく、相当な悪事に使っていた……と、宰相に聞きました」

「毒の魔女……そう言えば、子爵邸でそんな話が出たわねぇ……あら、もしかしてローケンが面白いって言ったのは」

「面白いかどうかはわかりませんけど……正体は知っていましたよ?いろいろ頼まれごともありましたし……」

「で、その沢山の小瓶はどこで調達を?」

「ここに来る前に宰相に渡されました。隠しておきなさいって。そして、もし機会があれば永久に葬り去って欲しいと……」

「宰相は……あなたが毒の魔女だと知らないんでしょう?」

「……だと思います。あたしが心を入れ替えたことをすごく喜んでくれて……最後まで……優しくしてくれました」

「そう。最後まで………………最後まで!?」

私が振り返ると、アリエルは俯いて、唇を噛み締めていた。
もうその様子だけで、宰相の結末の予想がつく。

「そんな……」

今思えば、王の行動は準備が良すぎた。
斥候を放ったのだと思っていたけど、実際は当事者に聞いたんだ。
それから口を封じたのかも……。

『シルベーヌ様!!ここからまっすぐ行った所に分岐点があるのデス!そこに私兵が3人待ち構えているようデスっ!!』

スピークルムの声に、私は全体止まれの指示を出した。
宰相の件はまた後で。
今はここを乗り切らないと!!

「そう。わかったわ。アリエル、痺れ薬はまだ使える??」

「はいっ!ですが、もうこれで尽きてしまうでしょう。後は……」

「充分よ!後のことは何とかするから!」

人質の王女達をその場に待機させ、アリエルと私はゆっくりと私兵の待つ分岐点に近付いた。













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