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王都

116.脱出

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「アリエル、あなたの薬品で錠を焼き切ってくれない?」

私の問いに、アリエルは首を振った。

「えっと、すいません!薬品が足りません。ここの全ての錠を溶かすとなると、大量の薬品が必要ですので……」

それもそうだわ。
アリエルの持っていたのはほんの少量。
自分の牢の錠だけで限界だったはず。
困ってうーんと唸った私に、アリエルが言った。

「でも、ここに鍵がありますからー」

…………………………。
何故それを早く言わないのかなぁ?
ここまでのくだり、全部無駄になりましたよね?

私はアリエルに微笑んだ。
怒ったりしないわ!最短で物事が上手く進んでいるんだもの。
……ただ、釈然とはしないわよ?

「持ってたのね?」

「はいっ!私兵が昏倒している隙に漁りました!!」

アリエルは、鍵の束を取り出すと、褒めて欲しそうな目でこちらを見た。

「……さ、さすがね!頼りになるわ!さぁ、時間がないわよ!みんなを助けましょう!」

「はいっ!」


アリエルと私は手前のフロールから順に檻から解放した。
鍵束は1つしかない上に、たくさんの中から錠に合ったものを探さなくてはならず、思いの外時間がかかる。
しかも、足に掛けられた鎖の鍵も束の中に紛れ込んでおり、更に時間が掛かった。
それでも、根気よく探しだし、一人また一人と助ける。
人質の女性達は最初のうちは、疲れきった顔をしていた。
でも、檻から出て、互いの無事を確かめ合うと希望が見えたのか、私達を手伝って動いてくれるようになっていた。

そして漸く、箱庭にいた20人ほどの人質を檻から解放することに成功した。
でも、問題はここから、よね?

「アリエル、ここに来るまで一本道だったじゃない?ということは、帰りも同じ道を通るしかないってことよね?」

「だと思います。あたしの確かめた限りでは、裏口はなかったかと……」

その会話に、スピークルムが加わった。

『周囲を探ってみましたが、裏口は人為的に塞がれているようデス。なので、道は1つしかないデスね』

つまり、敵陣の真っ只中を進むということね?
私は頷き、不安げな女性達に声を掛けた。

「皆さん、疲れてるとは思うけど、もう少し頑張って!外では、ヴァーミリオン騎士団や、ナシリスの王子達が戦ってくれています。なんとかみんなと合流しましょう!大丈夫上手くいきます!無事に脱出して、ご家族と会いましょう!」

その声に、フロール王女、人質の女性達は力強く頷いた。
死んだような目をしている者は、もう誰一人としていない。
全員がその目に強い光を宿していた。

良かった。
こんな私の言葉でも、なんとか皆を勇気づけることが出来る……。
そのことに、何となく気恥ずかしくなりながら、先頭に立ち箱庭を後にした。














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