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王都
110.今宵私の妻に……
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「陛下。先にご質問宜しいでしょうか?」
連れ去られる寸前の私の後ろから、ローケンが王に尋ねる。
「うん?なんだ、お前は………シルベーヌの供か?」
「はい。スピークルムと申します」
………………え?
……………『え?』
ローケンは偽名を使った。
他地区の審問官を王が知っているとは考えにくいけど、ガストが知っていたくらいだから、用心に越したことはない。
でも、よりによってスピークルムとは……。
従者も私もびっくりである。
「無礼な。供の分際でこの私に直接問いかけるなど……」
「あ!あの!……えっと……陛下?」
不穏な空気を悟った私は、珍しく気を利かせて口を挟んだ。
「どうした?シルベーヌ。言ってみよ」
王はさっと表情を変え、ニヤリと笑った。
「ローケ……スピークルムのお話、聞いて頂けませんか?どうか、この通りでございます」
出来るだけおねだりをする感じで頑張ってみたわ!
嫉妬メラメラ大作戦でこれが出来れば良かったけど、ここ一番で発揮出来たから良しよね?
「おお、勿論だ!シルベーヌの頼みならば何なりと。貴女は私の正妃になるのだからな」
はい?
その口約束、まだ有効だったんですか?
期限切れてたらいいのに。
私は心と裏腹に微笑み、それに王は気を良くした。
「スピークルム、申してみよ!」
「ありがとうございます。では……フォード公爵様とエレナ様はどちらに?」
その質問に、王の雰囲気が一瞬変わった。
「……………お前が気にすることではないと思うが?」
「申し訳ございません!陛下に謁見する折りに、大変お世話になったものですから……お礼をと思いまして」
「そうか。ふむ。だが、その必要はない。以上だ。下がるといい」
「あの、これからシルベーヌ様はどうされるのでしょうか?私も冥府の王に報告の義務がありますので」
「案ずるな。王宮の奥深くで大切に愛でる」
監禁ですね、知ってます。
「今宵私の妻になるのでな、冥府の王には無事に妃に迎えたと伝えるがいい」
「……………え?」
………………え?
……………『え?』
あっれ?ちょっとお待ち下さい?
そんなすぐに為しちゃうんでしょうか?
困るんですが!?
いや、全力で拒否したいんですが!?
「陛下、あの、挙式は?」
ローケンが珍しく慌てた。
そして、私も慌てているっ!!
何とかして、ローケン!!
「それは追い追いでよかろう」
良くない!!
追い追いって……それ、絶対する気ないでしょう!?
だけど、ここでローケンが粘ったら、変に疑われて投獄されたり、下手したら斬られたりするかも……。
それはまずいわ。
ナーデルで待つ騎士団に、状況を知らせる人がいなくなっちゃう。
「ロー……スピークルム、控えなさい。お前は帰ってちゃんと伝えないと……」
「シルベーヌ様……」
ローケンは不安そうな顔で私を見上げた。
自信たっぷりで冷静な彼からは想像も出来ないその表情に、私も事の重大さを感じている。
でも………今出来る、一番いい方法がこれなのよ。
「さぁ、もう下がりなさい。私は陛下とお話をしますから。ねぇ、陛下?」
「そうだな、美しい妻よ。さぁ」
王の差し出した手を取り、私はその横を歩き始めた。
ローケンの心配そうな視線が背中に突き刺さる。
でもね、ぼーっと見てる場合じゃないのよ!?
早く皆に知らせて来てーー!
連れ去られる寸前の私の後ろから、ローケンが王に尋ねる。
「うん?なんだ、お前は………シルベーヌの供か?」
「はい。スピークルムと申します」
………………え?
……………『え?』
ローケンは偽名を使った。
他地区の審問官を王が知っているとは考えにくいけど、ガストが知っていたくらいだから、用心に越したことはない。
でも、よりによってスピークルムとは……。
従者も私もびっくりである。
「無礼な。供の分際でこの私に直接問いかけるなど……」
「あ!あの!……えっと……陛下?」
不穏な空気を悟った私は、珍しく気を利かせて口を挟んだ。
「どうした?シルベーヌ。言ってみよ」
王はさっと表情を変え、ニヤリと笑った。
「ローケ……スピークルムのお話、聞いて頂けませんか?どうか、この通りでございます」
出来るだけおねだりをする感じで頑張ってみたわ!
嫉妬メラメラ大作戦でこれが出来れば良かったけど、ここ一番で発揮出来たから良しよね?
「おお、勿論だ!シルベーヌの頼みならば何なりと。貴女は私の正妃になるのだからな」
はい?
その口約束、まだ有効だったんですか?
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「スピークルム、申してみよ!」
「ありがとうございます。では……フォード公爵様とエレナ様はどちらに?」
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「そうか。ふむ。だが、その必要はない。以上だ。下がるといい」
「あの、これからシルベーヌ様はどうされるのでしょうか?私も冥府の王に報告の義務がありますので」
「案ずるな。王宮の奥深くで大切に愛でる」
監禁ですね、知ってます。
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………………え?
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あっれ?ちょっとお待ち下さい?
そんなすぐに為しちゃうんでしょうか?
困るんですが!?
いや、全力で拒否したいんですが!?
「陛下、あの、挙式は?」
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そして、私も慌てているっ!!
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「それは追い追いでよかろう」
良くない!!
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「シルベーヌ様……」
ローケンは不安そうな顔で私を見上げた。
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でも………今出来る、一番いい方法がこれなのよ。
「さぁ、もう下がりなさい。私は陛下とお話をしますから。ねぇ、陛下?」
「そうだな、美しい妻よ。さぁ」
王の差し出した手を取り、私はその横を歩き始めた。
ローケンの心配そうな視線が背中に突き刺さる。
でもね、ぼーっと見てる場合じゃないのよ!?
早く皆に知らせて来てーー!
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