105 / 169
王都
105.いざ行かん、王宮へ
しおりを挟む
ローケンに手を引かれ、軋む階段をゆっくり降りていくと、窓から見えた男と目が合った。
彼は、降りてくる私を見て目を丸くした。
「おお、これは……なんという美しさ!旦那様も言っておりましたが、話で聞くよりずっと美しいですね」
「ありがとう」
私は鷹揚に答えておいた。
本来そういう性格ではないんだけど、より神秘性を高めるために必要らしいわ。
と、これはローケンの策だけど。
「シルベーヌ様、こちらフォード家の執事でルイ殿」
ローケンに紹介されたルイは優雅に挨拶をした。
「ご苦労ですね、ルイ。私はシルベーヌ・ニグロム・アルハガウン。宵闇の女神と呼ばれているわ」
私は少し仰け反りながら、出来るだけ尊大に見えるように頑張った!
だけど、仰け反り過ぎてふらつき、ローケンが慌てて支えるという一度目の失態を犯した……。
幸運なことに、頭を下げていたルイには見えてなくて、私の失態は帳消しになったけど。
「あ、ええと、それでルイ殿。これからの予定はどうなっているのかな?」
ローケンが取り繕うように尋ねた。
「はい、今から直接王宮へ、との指示を受けております。本日はすぐ謁見が叶うそうでございます」
「公爵令嬢エレナ様も一緒かな?」
「いえ……それが……」
「どうしました!?」
口ごもるルイにローケンが追求する。
その様子は、冷静さの見本のようなローケンにしては珍しく必死だった。
「一昨日から姿を見ていないのです。旦那様とともに王宮に参内してから、2人とも御屋敷の方にも帰っておりません。そんなこと今までなかったのですが……」
「一昨日から……そう……では、王宮にいるんですね?」
「だと思いますが……」
この様子だとルイにもよくわかってないのだと思う。
だけど、これはガストとローケンの策ではないのかしら?
先に潜入しているとか?
私はローケンの表情を盗み見たけど、そこからは何も読み取れなかった。
さっき、一瞬顔色を変えた彼は、もういつもの冷静さを取り戻している。
「わかりました。では、私達も王宮へ向かいましょう。シルベーヌ様、よろしいですね?」
「ええ。もちろん、行きましょう」
「では、どうぞこちらへ……」
ルイを先頭に、ローケン、そして私と並んで戸口を出た。
夕暮れの大通り、やはり人は疎らで寂しさは隠せない。
少し不安を感じたその時。
向かいの家屋、その斜め向こうからいくつもの視線を感じた。
チラッと確認すると、目に写ったのは煌めく銀髪。
ディランと騎士団の皆がいる!
顔はよく見えなかったけど、その効果は絶大で、私の不安は一気に解消された。
何も怖くない。
だって、皆は、必ず来てくれるから!
彼は、降りてくる私を見て目を丸くした。
「おお、これは……なんという美しさ!旦那様も言っておりましたが、話で聞くよりずっと美しいですね」
「ありがとう」
私は鷹揚に答えておいた。
本来そういう性格ではないんだけど、より神秘性を高めるために必要らしいわ。
と、これはローケンの策だけど。
「シルベーヌ様、こちらフォード家の執事でルイ殿」
ローケンに紹介されたルイは優雅に挨拶をした。
「ご苦労ですね、ルイ。私はシルベーヌ・ニグロム・アルハガウン。宵闇の女神と呼ばれているわ」
私は少し仰け反りながら、出来るだけ尊大に見えるように頑張った!
だけど、仰け反り過ぎてふらつき、ローケンが慌てて支えるという一度目の失態を犯した……。
幸運なことに、頭を下げていたルイには見えてなくて、私の失態は帳消しになったけど。
「あ、ええと、それでルイ殿。これからの予定はどうなっているのかな?」
ローケンが取り繕うように尋ねた。
「はい、今から直接王宮へ、との指示を受けております。本日はすぐ謁見が叶うそうでございます」
「公爵令嬢エレナ様も一緒かな?」
「いえ……それが……」
「どうしました!?」
口ごもるルイにローケンが追求する。
その様子は、冷静さの見本のようなローケンにしては珍しく必死だった。
「一昨日から姿を見ていないのです。旦那様とともに王宮に参内してから、2人とも御屋敷の方にも帰っておりません。そんなこと今までなかったのですが……」
「一昨日から……そう……では、王宮にいるんですね?」
「だと思いますが……」
この様子だとルイにもよくわかってないのだと思う。
だけど、これはガストとローケンの策ではないのかしら?
先に潜入しているとか?
私はローケンの表情を盗み見たけど、そこからは何も読み取れなかった。
さっき、一瞬顔色を変えた彼は、もういつもの冷静さを取り戻している。
「わかりました。では、私達も王宮へ向かいましょう。シルベーヌ様、よろしいですね?」
「ええ。もちろん、行きましょう」
「では、どうぞこちらへ……」
ルイを先頭に、ローケン、そして私と並んで戸口を出た。
夕暮れの大通り、やはり人は疎らで寂しさは隠せない。
少し不安を感じたその時。
向かいの家屋、その斜め向こうからいくつもの視線を感じた。
チラッと確認すると、目に写ったのは煌めく銀髪。
ディランと騎士団の皆がいる!
顔はよく見えなかったけど、その効果は絶大で、私の不安は一気に解消された。
何も怖くない。
だって、皆は、必ず来てくれるから!
0
お気に入りに追加
2,685
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
美人すぎる姉ばかりの姉妹のモブ末っ子ですが、イケメン公爵令息は、私がお気に入りのようで。
天災
恋愛
美人な姉ばかりの姉妹の末っ子である私、イラノは、モブな性格である。
とある日、公爵令息の誕生日パーティーにて、私はとある事件に遭う!?
婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました
Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。
順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。
特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。
そんなアメリアに対し、オスカーは…
とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。
公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-
猫まんじゅう
恋愛
そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。
無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。
筈だったのです······が?
◆◇◆
「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」
拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」
溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない?
◆◇◆
安心保障のR15設定。
描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。
ゆるゆる設定のコメディ要素あり。
つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。
※妊娠に関する内容を含みます。
【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】
こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)
【完結】夫は王太子妃の愛人
紅位碧子 kurenaiaoko
恋愛
侯爵家長女であるローゼミリアは、侯爵家を継ぐはずだったのに、女ったらしの幼馴染みの公爵から求婚され、急遽結婚することになった。
しかし、持参金不要、式まで1ヶ月。
これは愛人多数?など訳ありの結婚に違いないと悟る。
案の定、初夜すら屋敷に戻らず、
3ヶ月以上も放置されーー。
そんな時に、驚きの手紙が届いた。
ーー公爵は、王太子妃と毎日ベッドを共にしている、と。
ローゼは、王宮に乗り込むのだがそこで驚きの光景を目撃してしまいーー。
*誤字脱字多数あるかと思います。
*初心者につき表現稚拙ですので温かく見守ってくださいませ
*ゆるふわ設定です
側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります。
とうや
恋愛
「私はシャーロットを妻にしようと思う。君は側妃になってくれ」
成婚の儀を迎える半年前。王太子セオドアは、15年も婚約者だったエマにそう言った。微笑んだままのエマ・シーグローブ公爵令嬢と、驚きの余り硬直する近衛騎士ケイレブ・シェパード。幼馴染だった3人の関係は、シャーロットという少女によって崩れた。
「側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります」
********************************************
ATTENTION
********************************************
*世界軸は『側近候補を外されて覚醒したら〜』あたりの、なんちゃってヨーロッパ風。魔法はあるけれど魔王もいないし神様も遠い存在。そんなご都合主義で設定うすうすの世界です。
*いつものような残酷な表現はありませんが、倫理観に難ありで軽い胸糞です。タグを良くご覧ください。
*R-15は保険です。
夫が隣国の王女と秘密の逢瀬を重ねているようです
hana
恋愛
小国アーヴェル王国。若き領主アレクシスと結婚を果たしたイザベルは、彼の不倫現場を目撃してしまう。相手は隣国の王女フローラで、もう何回も逢瀬を重ねているよう。イザベルはアレクシスを問い詰めるが、返ってきたのは「不倫なんてしていない」という言葉で……
あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます
おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」
そう書き残してエアリーはいなくなった……
緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。
そう思っていたのに。
エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて……
※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる