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ヴァーミリオン領

77.地獄に行った魂は

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「ラシュカの審判制度のこと、良く知らないんだけど……今の状態だと、エレナは罪に問われることはない……つまり病院や治療院送りになり罪を償うことはない、という認識はあってる?」

冥府で勉強した制度では、地上ではそう判断される国が多いと聞いたわ。
正気でないと判断された時は罪がまるごと帳消しになり、治療を優先させるって。
良いことと悪いことの区別が付かないから、罪に問わないなんておかしいと思うけど……。
私は専門家のローケンに確認をとった。

「合っています。自白はしましたが……正気ではないですから……」

ディランが辛そうな顔をして目を逸らした。
そして「だから、斬れば良かったんだ」と吐き捨てるように呟いた。

「わかったわ。それなら、やっぱり私の考えで行きましょう」

皆が、こちらを向いた。
ああ、ディラン以外ね。

「どうするんですか?」

フォーサイスが私に尋ねる。

「エレナの魂をここで奪う。そして、直接地獄の最下層、七獄へ送るわ。人の魂はね、本当は一度スピークルムのような魂呼びの鏡が漂白……ええと、記憶を消して真っ白にすることなんだけど……それをしてから、再生を待つの。だけど、罪人は先に裁かれる。冥鏡の判事と呼ばれる方にね。そして、どこかの地獄へ送られ罪を償うわ」

「ほう。冥府もこちらと同じ様な機構なのですね?興味深い」

ローケンがすごく食いついてきた。
職業柄かな?冥府のシステムに興味津々みたい。

「さっき聞いたら、七獄行きの魂ですって。皆が良ければハーミットに頼むけど?」

私はディランを見た。
彼はまだ不服そうな顔をしている。
これは、地獄(七獄)の説明も要りそうね。

「ねぇ、ディラン?前に七獄のこと、聞かない方がいいっていったわよね?」

「ああ」

「教えるわ。あそこは人であったときの痛みもそのままで、繰り返し死を追体験するの。犯した罪の死……騎士団を殺めた毒で……その苦痛を味わうわ。永遠によ。死んで生き返っても、その口にまた毒を放り込まれるの。そして、苦しみ死に、また毒を……」

顔をしかめる者もいた。
私はその者に言った。

「私が酷いことをしようとしているように見える?でもね、この世では理不尽なことがそのまま罷り通ることがある。罪を逃げ仰せ、そのまま一生を終える人もいる。そんなの卑怯でしょ?だから冥府のシステムはその救済のために出来ているのよ」

暫く沈黙が続いた。
間違っていたのかな?
私の考えは、地上の人には受け入れてもらえないものだったのかな?
そう思った時。
ディランが後ろから私を抱き締めた。

「シルベーヌ様。ありがとう。俺は、それでいい……みんなはどうだ?」

気付くと騎士団は真っ直ぐ私を見ていた。
ロビーもスレイもヒューゴもアッシュも。
もちろんクレバードやフォーサイスも。
そして、顔をしかめていた者も。
皆が、私を見て頷いていた。

最終確認は取れたわね。
私はスピークルムに向かって、再度話しかけた。

「もしもし?ハーミット??」

「……ハイハーイ!決まったかな?」

「ええ。お願いします」

「りょーかいっ!あ、そうだ、オプションも選ぶかい?」

「オ、オプション!?」

何ですかそれ?
私は初めて問われた言葉に面食らった。

「ごめん、初めてだったかな?あのね、さっき君たちが話し合っている間に、エレナの人生を見てみたんだ。それで、君たちの状況のおおよその見当はついたよ」

「それじゃあ……全部知っていると?」

ハーミットが、通信の向こうで胸を張った……ように見えた。

「おうさ!だから、オプションも必要かなって!エレナの空いた体に、模範囚の魂を入れて活用するといいよ」



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