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ムーンバレー地方
50.轟く咆哮!いざヴァーミリオンへ!
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騎士団はそれぞれの馬に乗り、廃村前で綺麗に整列した。
そしてサクリスと側近も、国境の検問所から、自身の馬を持って来させその横に並んでいる。
私は………と言えば、おわかりでしょうが、ディランの前にすっぽりと挟まっている。
大きなドミニオンは、ガリガリな私が乗ってもびくともせず、反対に『任せておけ!』と言うように、ヒヒンッと力強く嘶いた。
「それではいいか!これより我ら騎士団、ヴァーミリオン領へ帰還する!!」
ディランが大きな声で叫んだ。
その声は、誰もいない廃村に響き良く通った。
スピークルムの言う通り、まぁ、そうね……少し、カッコいいかもね?
と、私が思ったその時。
「わかっているとは思うが、一番優先されるのは、シルベーヌ様の安全である!いかなる時も、シルベーヌ様第一で動くようにっ!!」
………そこまで、しなくていいわ。
子供じゃあるまいし……。
「うぉーー!!シルベーヌ様のためにーーー!!!」
「シルベーヌ様のためにーー!!!」
騎士団は大声でシルベーヌ連呼した。
それはもしかしたら、ナシリスの国境警備兵にも聞こえていたかもしれない、そんな咆哮である。
もうっ!恥ずかしい!
叫ぶんじゃありません!
「さぁ、しっかり俺に掴まって。ヴァーミリオンまで駆け抜ける!!」
「う、うんっ!」
ギュッと、ディランの服を掴むと、ゆっくりとそれをはずされ背中に導かれる。
え?と思ったのも束の間、勢い良く走り出したドミニオンの速さに、息をするのも忘れてしまった。
人生初の乗馬は、景色など楽しんでいる余裕などなかった。
夜に比べて昼間の視力には自信がなく、相変わらず眩しい光には目が霞むこともある。
それに加えて、この速度。
私の目には良くわからない歪んだ景色が走馬灯のように過ぎ去っていくだけだった。
「日差しが強くなってきた。フードを深く被って。大丈夫か?辛くないか?」
「う、うん。大丈夫」
景色の見えない私は、ただひらすらディランを見ていた。
ええと、その、特別な感情とか、思いとかじゃなくて、彼しか見るところがなかったからよ?
誰に言い訳をしてるのかわからなくなって、そっと目を伏せると、上からまたディランの声がした。
「早く見てもらいたい……俺の生まれ育った場所を……ヴァーミリオンを……」
「ラシュカ一番の賑わいなんでしょう??楽しみね!きっと、珍しいものとか美味しいものがたくさんあるわよね!」
珍しいもの、美味しいもの。
これが私の一番の楽しみだ。
あ、でも。
遊びに行くんじゃないから、羽目ははずせないわね。
もっと大事な作戦もあるし、心してかからないと!!
「この時期、毎年恒例の大きな祭りがあるんだ。みんな仮面を付けて町に繰り出し、踊ったり歌ったり食べたり飲んだりする。今年はそれにシルベーヌ様と出掛けようと考えている。どうだろうか?」
ああっ!
「心してかからないと!」と気合いをいれた私の決意をどうしてくれる!?
祭りですって!?踊ったり、歌ったり、食べたり、飲んだりですって!!
そんなの………そんなの………
「行くに決まっているわっ!」
間髪入れず、私は答えた。
やる気満々で鼻息が荒い私を見て、ディランはハハッと豪快に笑った。
「ああ、今年の祭りは凄く楽しみだ!こんなにワクワクするのは、小さい頃以来だ」
そう言ってドミニオンを駆るディランは、子供のような顔をしていた。
騎士団は、一路、ヴァーミリオン領へ走る。
太陽は西に少し傾いたところだ。
それが、大きく傾き、一番星が見え始めた時……巨大な城壁が目の前に現れた。
そしてサクリスと側近も、国境の検問所から、自身の馬を持って来させその横に並んでいる。
私は………と言えば、おわかりでしょうが、ディランの前にすっぽりと挟まっている。
大きなドミニオンは、ガリガリな私が乗ってもびくともせず、反対に『任せておけ!』と言うように、ヒヒンッと力強く嘶いた。
「それではいいか!これより我ら騎士団、ヴァーミリオン領へ帰還する!!」
ディランが大きな声で叫んだ。
その声は、誰もいない廃村に響き良く通った。
スピークルムの言う通り、まぁ、そうね……少し、カッコいいかもね?
と、私が思ったその時。
「わかっているとは思うが、一番優先されるのは、シルベーヌ様の安全である!いかなる時も、シルベーヌ様第一で動くようにっ!!」
………そこまで、しなくていいわ。
子供じゃあるまいし……。
「うぉーー!!シルベーヌ様のためにーーー!!!」
「シルベーヌ様のためにーー!!!」
騎士団は大声でシルベーヌ連呼した。
それはもしかしたら、ナシリスの国境警備兵にも聞こえていたかもしれない、そんな咆哮である。
もうっ!恥ずかしい!
叫ぶんじゃありません!
「さぁ、しっかり俺に掴まって。ヴァーミリオンまで駆け抜ける!!」
「う、うんっ!」
ギュッと、ディランの服を掴むと、ゆっくりとそれをはずされ背中に導かれる。
え?と思ったのも束の間、勢い良く走り出したドミニオンの速さに、息をするのも忘れてしまった。
人生初の乗馬は、景色など楽しんでいる余裕などなかった。
夜に比べて昼間の視力には自信がなく、相変わらず眩しい光には目が霞むこともある。
それに加えて、この速度。
私の目には良くわからない歪んだ景色が走馬灯のように過ぎ去っていくだけだった。
「日差しが強くなってきた。フードを深く被って。大丈夫か?辛くないか?」
「う、うん。大丈夫」
景色の見えない私は、ただひらすらディランを見ていた。
ええと、その、特別な感情とか、思いとかじゃなくて、彼しか見るところがなかったからよ?
誰に言い訳をしてるのかわからなくなって、そっと目を伏せると、上からまたディランの声がした。
「早く見てもらいたい……俺の生まれ育った場所を……ヴァーミリオンを……」
「ラシュカ一番の賑わいなんでしょう??楽しみね!きっと、珍しいものとか美味しいものがたくさんあるわよね!」
珍しいもの、美味しいもの。
これが私の一番の楽しみだ。
あ、でも。
遊びに行くんじゃないから、羽目ははずせないわね。
もっと大事な作戦もあるし、心してかからないと!!
「この時期、毎年恒例の大きな祭りがあるんだ。みんな仮面を付けて町に繰り出し、踊ったり歌ったり食べたり飲んだりする。今年はそれにシルベーヌ様と出掛けようと考えている。どうだろうか?」
ああっ!
「心してかからないと!」と気合いをいれた私の決意をどうしてくれる!?
祭りですって!?踊ったり、歌ったり、食べたり、飲んだりですって!!
そんなの………そんなの………
「行くに決まっているわっ!」
間髪入れず、私は答えた。
やる気満々で鼻息が荒い私を見て、ディランはハハッと豪快に笑った。
「ああ、今年の祭りは凄く楽しみだ!こんなにワクワクするのは、小さい頃以来だ」
そう言ってドミニオンを駆るディランは、子供のような顔をしていた。
騎士団は、一路、ヴァーミリオン領へ走る。
太陽は西に少し傾いたところだ。
それが、大きく傾き、一番星が見え始めた時……巨大な城壁が目の前に現れた。
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