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ムーンバレー地方
3.廃屋の館
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スピークルムの案内で歩を進め、迷うことなく屋敷に辿り着いた。
辿り着いたけど……ごめん、もう帰りたい。
眼前の屋敷……いや、あばら家は蔦が生い茂り、その勢いで押し潰されそうである。
元は立派な建物であったことが伺えるが、今は傾き、壁は崩れ落ち、とても人が住める場所ではない。
「困ったわね……このままじゃ野宿だわ」
『ご飯、ご飯、ご飯……デス』
スピークルムが早く屋敷に入ろうと前のめりになり、私の首もひっぱられる。
「うるさいわね。私だってお腹すいてるのよ!あなたのご飯の前に、この状況をなんとか出来るか考えなさい。それからじゃないとご飯は無しよ!!」
『んなー!!デス……了解しました……気は進みませんが……考えるのデス』
「そうして頂戴」
スピークルムは、クルクルと回転し始めた。
魂呼びの鏡、これは『種族名』なんだけど、彼らは思考中に回転する。
どうしてかは、本人(本鏡?)にもわからないそうよ。
ただ、回りたくなるんですって。
そうして、暫く回り続けたスピークルムは、ぱあっと七色に発光すると、ピタリと動きを止めた。
どうやら答えが出たらしい。
「で?どうすればいいの?」
『建て直すのデス』
「建て直す!?今から?ちょっと、どれだけ時間がかかると思ってるのよ!しかも、誰が建て直すのよ!?」
どう考えても、建て直すという方法は無理。
まず解体して、解体ゴミを撤去して、新しい資材を持ってきて、組み立てる。
…………バカなの??
私しかいないのに、どうすんのよ!!
出来上がる頃にはもうおばーさんだわ!
『誰が……?ああ、私を使えばいいのデスよー。高名な建築家の魂、呼びましょ、デス!』
「……呼んで、それから?建築家だけじゃどうにもならないでしょ?実働出来る労力は?」
『………やれやれ、シルベーヌ様の頭はからっぽデスか?……あわわ……』
スピークルムは己の浅慮を悔いたらしいがもう遅い。
私は彼の体を真横に持ち、少し力を加えた。
ピキッ、と軽い音が響いて、スピークルムは泣いて懇願した。
『シルベーヌ様はー、お美しいぃーー!そして、お利口であられーるぅー!助けてくださーい、デース!』
「ふん!さっさとお言いなさい!」
私はスピークルムを首にかけ直し、人差し指でピンと弾く。
すると、彼は鏡を潤ませながら、元気良くこう言った。
『生きのいい死体に魂を入れるのデス!!』
辿り着いたけど……ごめん、もう帰りたい。
眼前の屋敷……いや、あばら家は蔦が生い茂り、その勢いで押し潰されそうである。
元は立派な建物であったことが伺えるが、今は傾き、壁は崩れ落ち、とても人が住める場所ではない。
「困ったわね……このままじゃ野宿だわ」
『ご飯、ご飯、ご飯……デス』
スピークルムが早く屋敷に入ろうと前のめりになり、私の首もひっぱられる。
「うるさいわね。私だってお腹すいてるのよ!あなたのご飯の前に、この状況をなんとか出来るか考えなさい。それからじゃないとご飯は無しよ!!」
『んなー!!デス……了解しました……気は進みませんが……考えるのデス』
「そうして頂戴」
スピークルムは、クルクルと回転し始めた。
魂呼びの鏡、これは『種族名』なんだけど、彼らは思考中に回転する。
どうしてかは、本人(本鏡?)にもわからないそうよ。
ただ、回りたくなるんですって。
そうして、暫く回り続けたスピークルムは、ぱあっと七色に発光すると、ピタリと動きを止めた。
どうやら答えが出たらしい。
「で?どうすればいいの?」
『建て直すのデス』
「建て直す!?今から?ちょっと、どれだけ時間がかかると思ってるのよ!しかも、誰が建て直すのよ!?」
どう考えても、建て直すという方法は無理。
まず解体して、解体ゴミを撤去して、新しい資材を持ってきて、組み立てる。
…………バカなの??
私しかいないのに、どうすんのよ!!
出来上がる頃にはもうおばーさんだわ!
『誰が……?ああ、私を使えばいいのデスよー。高名な建築家の魂、呼びましょ、デス!』
「……呼んで、それから?建築家だけじゃどうにもならないでしょ?実働出来る労力は?」
『………やれやれ、シルベーヌ様の頭はからっぽデスか?……あわわ……』
スピークルムは己の浅慮を悔いたらしいがもう遅い。
私は彼の体を真横に持ち、少し力を加えた。
ピキッ、と軽い音が響いて、スピークルムは泣いて懇願した。
『シルベーヌ様はー、お美しいぃーー!そして、お利口であられーるぅー!助けてくださーい、デース!』
「ふん!さっさとお言いなさい!」
私はスピークルムを首にかけ直し、人差し指でピンと弾く。
すると、彼は鏡を潤ませながら、元気良くこう言った。
『生きのいい死体に魂を入れるのデス!!』
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