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伯爵令嬢、奮闘中《11》エンヴィレオ・ファザ
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しかし、そんなことを勘繰っている場合ではないし、興味もない。
クリム様が口に出さないのなら、それが正解なのだ。
「私は何をすればよろしいですか?」
その言葉にクリム様は、一瞬目を丸くしたが、すぐにいつもの冷静で思慮深い顔に戻っていた。
「……見てみろ。こんなに護衛がいるのに、誰も何も出来ない。それはなぜか」
私を試してるのか。
そんな口調だ。
「爆薬のせいでしょう。あれがあるために迂闊に近づけない。ほんの少し引火するだけで爆発しますから、銃も使えない。人質もいますし、全員ここから動けない」
これは正解だったのか、クリム様は大きく頷いた。
「では、この状況を打開する為に、もう少し情報を集めよう。奴らの話が聞けるところまで移動する」
「はい」
私達は中腰のまま、2つ向こうの大理石の柱まで移動した。
今まではテロリストの背中しか見えなかったが、今度は真正面からその姿が確認出来る。
どうやら、テロリストと交渉しているのは、陛下と殿下らしい。
「お前の言っていることが全くわからないのだが……」
陛下の声に、人質をとった男が言った。
「しらばくれるな。この国にいることはわかっている。彼を、差し出せ。それで、我々は引き揚げる」
抑揚のない声だ。
こういったタイプは、命を粗末に扱う。
「だから、そもそもそんな男は知らんと言っている!」
殿下がイライラしているな。
だが、それは良くないぞ。
交渉はもっと冷静に、だ。
もっとも、私も交渉など得意ではないが。
「そんなはずはない。話がわかる奴を連れて来い。そうでなければ、これに火をつける。全員で仲良く死ぬか?」
「ま、待て。一体誰を探しているんだ!!」
殿下は相手を宥めようと必死だ。
「………エンヴィレオ・ファザ。イライジャの皇太子」
エンヴィレオ・ファザ!?
死んだ皇太子を探しているのか!?
何故?
それに、どうしてここにいるなんて思うんだ?
私はクリム様に尋ねようと横を見た。
だが………その表情が、氷の彫像のように冷ややかなのを見て息を飲んだ。
クリム様は……何をお考えなのか。
この場面で、どうしてこんなにも冷静でいられるのか。
それが不思議でしょうがなかった。
「アンナ」
「は………はぃ………」
大きく返事をしようとして、慌てて口を押さえる。
危ない……考え事をしていてミスをするところだった。
「奴らが話したいのはこの私だ……少し話してくる」
「なっ!何でですか?では、私も行きます。どうか守らせて下さい!」
「ダメだ。これは私の仕事だ。君の仕事はまた別にある」
「別の仕事などありません。クリム様をお守りするのが、私の唯一の仕事です」
その他の仕事など、私はしたくない。
ここが爆発するなら、クリム様に覆い被さりお守りする。
他の誰が犠牲になろうとも……だ。
しかし、そんな私の思いは聞いてもらえなかった。
「アンナ。私は交渉をしに行くのだ。クラインのように武闘派ではないからな。上手く口でなんとかする」
「クリム様……でも……」
「いいか?私が注意を引き付ける。その間になんとか会場内のリリアンヌの元へ行き、君の子供たちを預かれ」
「こ?こども??」
なんてことをクリム様ーー!!
私に子供なんておりませんがっ!?
子供どころか、まっさらで新品の……あわわ……。
突然の私の百面相に、氷の彫像だったクリム様は笑いを堪えて口を覆った。
「……いっ……行けば……わかる……やるべきこともな………ふふっ……全く、緊張感がないな。お陰で楽になったよ。さて……」
クリム様はゆっくりと立ち上がった。
「どうしてもお一人で行かれるのですか!?」
「ああ………だが、君だけにわかるように合図を送ろう。私の仕草を良く見ておいてくれ。それで、全てが判ると思う。君なら必ず」
その信頼ともとれる言葉に、私は大きく頷いた。
そうだ、私ならわかる!
なんせ、私とクリム様は以心伝心だからな!
鼻息の荒くなった私を見て、クリム様はふっと微笑んだ。
そして立ち上がり、長い足を大階段へ向かって一歩踏み出す。
その背中を見て、私も覚悟を決めた。
クリム様が口に出さないのなら、それが正解なのだ。
「私は何をすればよろしいですか?」
その言葉にクリム様は、一瞬目を丸くしたが、すぐにいつもの冷静で思慮深い顔に戻っていた。
「……見てみろ。こんなに護衛がいるのに、誰も何も出来ない。それはなぜか」
私を試してるのか。
そんな口調だ。
「爆薬のせいでしょう。あれがあるために迂闊に近づけない。ほんの少し引火するだけで爆発しますから、銃も使えない。人質もいますし、全員ここから動けない」
これは正解だったのか、クリム様は大きく頷いた。
「では、この状況を打開する為に、もう少し情報を集めよう。奴らの話が聞けるところまで移動する」
「はい」
私達は中腰のまま、2つ向こうの大理石の柱まで移動した。
今まではテロリストの背中しか見えなかったが、今度は真正面からその姿が確認出来る。
どうやら、テロリストと交渉しているのは、陛下と殿下らしい。
「お前の言っていることが全くわからないのだが……」
陛下の声に、人質をとった男が言った。
「しらばくれるな。この国にいることはわかっている。彼を、差し出せ。それで、我々は引き揚げる」
抑揚のない声だ。
こういったタイプは、命を粗末に扱う。
「だから、そもそもそんな男は知らんと言っている!」
殿下がイライラしているな。
だが、それは良くないぞ。
交渉はもっと冷静に、だ。
もっとも、私も交渉など得意ではないが。
「そんなはずはない。話がわかる奴を連れて来い。そうでなければ、これに火をつける。全員で仲良く死ぬか?」
「ま、待て。一体誰を探しているんだ!!」
殿下は相手を宥めようと必死だ。
「………エンヴィレオ・ファザ。イライジャの皇太子」
エンヴィレオ・ファザ!?
死んだ皇太子を探しているのか!?
何故?
それに、どうしてここにいるなんて思うんだ?
私はクリム様に尋ねようと横を見た。
だが………その表情が、氷の彫像のように冷ややかなのを見て息を飲んだ。
クリム様は……何をお考えなのか。
この場面で、どうしてこんなにも冷静でいられるのか。
それが不思議でしょうがなかった。
「アンナ」
「は………はぃ………」
大きく返事をしようとして、慌てて口を押さえる。
危ない……考え事をしていてミスをするところだった。
「奴らが話したいのはこの私だ……少し話してくる」
「なっ!何でですか?では、私も行きます。どうか守らせて下さい!」
「ダメだ。これは私の仕事だ。君の仕事はまた別にある」
「別の仕事などありません。クリム様をお守りするのが、私の唯一の仕事です」
その他の仕事など、私はしたくない。
ここが爆発するなら、クリム様に覆い被さりお守りする。
他の誰が犠牲になろうとも……だ。
しかし、そんな私の思いは聞いてもらえなかった。
「アンナ。私は交渉をしに行くのだ。クラインのように武闘派ではないからな。上手く口でなんとかする」
「クリム様……でも……」
「いいか?私が注意を引き付ける。その間になんとか会場内のリリアンヌの元へ行き、君の子供たちを預かれ」
「こ?こども??」
なんてことをクリム様ーー!!
私に子供なんておりませんがっ!?
子供どころか、まっさらで新品の……あわわ……。
突然の私の百面相に、氷の彫像だったクリム様は笑いを堪えて口を覆った。
「……いっ……行けば……わかる……やるべきこともな………ふふっ……全く、緊張感がないな。お陰で楽になったよ。さて……」
クリム様はゆっくりと立ち上がった。
「どうしてもお一人で行かれるのですか!?」
「ああ………だが、君だけにわかるように合図を送ろう。私の仕草を良く見ておいてくれ。それで、全てが判ると思う。君なら必ず」
その信頼ともとれる言葉に、私は大きく頷いた。
そうだ、私ならわかる!
なんせ、私とクリム様は以心伝心だからな!
鼻息の荒くなった私を見て、クリム様はふっと微笑んだ。
そして立ち上がり、長い足を大階段へ向かって一歩踏み出す。
その背中を見て、私も覚悟を決めた。
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