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伯爵令嬢、奮闘中《18》ジークとリリアンヌ(ジーク)
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「そろそろ、お前も婚約者を定めねばなるまいな」
と陛下が言ったのは今から一ヶ月前のことだ。
軍部のクーデターの一件から暫く経ち、あのクリスタ・ルイスも母になるらしい。
そんな噂を耳にして、陛下は私のことを気遣ったのだろう。
確かに、私は彼女に結婚を申し込んだ。
その為に、国が大変なことになったのだが……まぁそのことは一旦忘れよう。
クリスタを愛していたのかどうか、それは今となっては良くわからない。
美しく、聡明で、家柄も申し分ない。王妃として過分なくらいの素質を持っている彼女しか、その役目に相応しくない、と思っていたのだ。
だが、母になるという話を聞いても、然程私の心は動かない。
陛下が気遣う程には、へこんでいないのだ。
きっと、淡い初恋が終わった。
それくらいのキズなのだろうな。
そう分析し、私は陛下の提案に頷いた。
陛下は、あまり社交が好きではない。
軍人故の性質からか、そういうものをあまり好まれないのだ。
その陛下の主催する舞踏晩餐会。
各国は私の相手選びなのだと勘づいたようで、すぐに出席の返事が帰ってきた。
大陸一といってもいいザナリアの正妃の座は、それほど美味しいのだろう。
近隣や遠方、小さな国からそこそこの国まで、私と年が近い姫君が来ることになった。
そして、当日。
陛下と私は、次から次へと挨拶に来る姫君達の相手に、ほとほと疲れきっていた。
ここぞとばかりに愛想を振り撒き、何やら胸焼けのするような甘い匂いを撒き散らす……。
頭痛がするし、若干吐き気もしてきた。
一旦退席しよう……と思ったその時だ。
「ボロミア国。リリアンヌ・アントーニ・ボロミア様でございます」
と、侍従が言った。
……ボロミアか。
強国だ。今我が国に対抗出来るのは、ボロミアしかない。
機械工学の最先端を行き、豊かな土地もある。
資源も豊富で、人口も多い。
だが、ボロミアが強国になり得たのは、あの天才ファビアンヌ・グリュッセルを正妃にしたからだ。
………グリュッセルか。
と、私は少し興味が沸いた。
あの家系のものならば、美しく、賢いのは当たり前。
それがどの程度のものなのか、見てやろう……そう、思ったのだ。
カーテンが開き中に招かれた一人の女。
薄桃色のドレスがフワリと揺れ、高く結い上げられた濃いブラウンの髪が動きに合わせて舞う。
「本日はお招き頂きましてありがとうございます。ボロミア国、代表として参りました、リリアンヌ・アントーニ・ボロミアでございます。フランツ陛下、ジークフリード殿下どうぞ宜しくお願い致します」
「うむ。遠い所をすまぬな。おお、そんなに畏まらずとも良い。さぁ、面を上げなさい」
陛下の声に、リリアンヌは顔を上げた。
「な!?」
思わず叫んだ私を、陛下とリリアンヌが見た。
「何だ!?どうしたのだ?」
「……いっ、いえ……」
なんということだ。
陛下は知っていたのか?
リリアンヌがクリスタに良く似ているということを。
キョトンとして、私を見る彼女は小動物のように可愛らしい。
は?可愛らしい?……何を思っているのだ、私は!
目は……薄いブルーなのだな。
髪はくせ毛か……柔らかそうだ。
肌など、陶器のよう………………はっ!!
私は……………何を??
どんどん深みに嵌まっていく妄想の中、私は、リリアンヌから目が離せなくなっていた。
「……それでは、下がらせて頂きます……」
彼女は目を伏せながら静かに言った。
「ちょっと!……あ、えーと……」
「ジーク、どうしたのだ?さっきからおかしいぞ?」
陛下の問いかけなど、もう聞いてはいられない。
私は、その時、何とかしてリリアンヌに近付きたくて、どうしようもなくなっていたのだから。
しかし。
どう言えば良いのか……?
今まで、こんなことはなかった。
クリスタの時だって、きちんと頭は回っていたのだ。
それが、どうだろう。
近付く方法など、考えれば百通りもあるはずなのに、ただの一つも思い浮かばないとは!!
「あの……」
「はい、殿下」
リリアンヌは目を伏せたまま、じっと私の言葉を待つ。
「……………………」
「……………………」
変な空気が流れる。
言葉をなくした頭の中は、空っぽだった。
そんな凡人と化した私に、陛下がある提案をした。
「……そうだ、ジーク。リリアンヌを最初のダンスに誘ってはどうかな?」
な!?
…………………………………………。
なんと、良い考え!!
陛下。いや、父上!ありがとう!!
「そうですね!!それは良い考えです!!リリアンヌ・アントーニ、どうか私と最初のダンスをお願いします」
「……喜んで」
ん?
何か変な間があったが……。
まぁいい。
これで、きっかけは出来た。
と陛下が言ったのは今から一ヶ月前のことだ。
軍部のクーデターの一件から暫く経ち、あのクリスタ・ルイスも母になるらしい。
そんな噂を耳にして、陛下は私のことを気遣ったのだろう。
確かに、私は彼女に結婚を申し込んだ。
その為に、国が大変なことになったのだが……まぁそのことは一旦忘れよう。
クリスタを愛していたのかどうか、それは今となっては良くわからない。
美しく、聡明で、家柄も申し分ない。王妃として過分なくらいの素質を持っている彼女しか、その役目に相応しくない、と思っていたのだ。
だが、母になるという話を聞いても、然程私の心は動かない。
陛下が気遣う程には、へこんでいないのだ。
きっと、淡い初恋が終わった。
それくらいのキズなのだろうな。
そう分析し、私は陛下の提案に頷いた。
陛下は、あまり社交が好きではない。
軍人故の性質からか、そういうものをあまり好まれないのだ。
その陛下の主催する舞踏晩餐会。
各国は私の相手選びなのだと勘づいたようで、すぐに出席の返事が帰ってきた。
大陸一といってもいいザナリアの正妃の座は、それほど美味しいのだろう。
近隣や遠方、小さな国からそこそこの国まで、私と年が近い姫君が来ることになった。
そして、当日。
陛下と私は、次から次へと挨拶に来る姫君達の相手に、ほとほと疲れきっていた。
ここぞとばかりに愛想を振り撒き、何やら胸焼けのするような甘い匂いを撒き散らす……。
頭痛がするし、若干吐き気もしてきた。
一旦退席しよう……と思ったその時だ。
「ボロミア国。リリアンヌ・アントーニ・ボロミア様でございます」
と、侍従が言った。
……ボロミアか。
強国だ。今我が国に対抗出来るのは、ボロミアしかない。
機械工学の最先端を行き、豊かな土地もある。
資源も豊富で、人口も多い。
だが、ボロミアが強国になり得たのは、あの天才ファビアンヌ・グリュッセルを正妃にしたからだ。
………グリュッセルか。
と、私は少し興味が沸いた。
あの家系のものならば、美しく、賢いのは当たり前。
それがどの程度のものなのか、見てやろう……そう、思ったのだ。
カーテンが開き中に招かれた一人の女。
薄桃色のドレスがフワリと揺れ、高く結い上げられた濃いブラウンの髪が動きに合わせて舞う。
「本日はお招き頂きましてありがとうございます。ボロミア国、代表として参りました、リリアンヌ・アントーニ・ボロミアでございます。フランツ陛下、ジークフリード殿下どうぞ宜しくお願い致します」
「うむ。遠い所をすまぬな。おお、そんなに畏まらずとも良い。さぁ、面を上げなさい」
陛下の声に、リリアンヌは顔を上げた。
「な!?」
思わず叫んだ私を、陛下とリリアンヌが見た。
「何だ!?どうしたのだ?」
「……いっ、いえ……」
なんということだ。
陛下は知っていたのか?
リリアンヌがクリスタに良く似ているということを。
キョトンとして、私を見る彼女は小動物のように可愛らしい。
は?可愛らしい?……何を思っているのだ、私は!
目は……薄いブルーなのだな。
髪はくせ毛か……柔らかそうだ。
肌など、陶器のよう………………はっ!!
私は……………何を??
どんどん深みに嵌まっていく妄想の中、私は、リリアンヌから目が離せなくなっていた。
「……それでは、下がらせて頂きます……」
彼女は目を伏せながら静かに言った。
「ちょっと!……あ、えーと……」
「ジーク、どうしたのだ?さっきからおかしいぞ?」
陛下の問いかけなど、もう聞いてはいられない。
私は、その時、何とかしてリリアンヌに近付きたくて、どうしようもなくなっていたのだから。
しかし。
どう言えば良いのか……?
今まで、こんなことはなかった。
クリスタの時だって、きちんと頭は回っていたのだ。
それが、どうだろう。
近付く方法など、考えれば百通りもあるはずなのに、ただの一つも思い浮かばないとは!!
「あの……」
「はい、殿下」
リリアンヌは目を伏せたまま、じっと私の言葉を待つ。
「……………………」
「……………………」
変な空気が流れる。
言葉をなくした頭の中は、空っぽだった。
そんな凡人と化した私に、陛下がある提案をした。
「……そうだ、ジーク。リリアンヌを最初のダンスに誘ってはどうかな?」
な!?
…………………………………………。
なんと、良い考え!!
陛下。いや、父上!ありがとう!!
「そうですね!!それは良い考えです!!リリアンヌ・アントーニ、どうか私と最初のダンスをお願いします」
「……喜んで」
ん?
何か変な間があったが……。
まぁいい。
これで、きっかけは出来た。
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