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Chapter1:「タイトルコール」

Part5:「ファーストクエスト、決着――」

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 L-39を小脇に抱えるように構え下げて、星宇宙は地上を駆ける。巨大な得物を抱えているというのに、その足はまるで飛んでいるように軽かった。
 元々TDWL5のプレイヤーキャラクターは、ゲームシステムの都合もあるが初期状態から中々に人間離れしたスペックを持つ。
 そのシステムとキャラ特性の恩恵を惜しげもなく使いつつ、星宇宙はできる限りの速度で地上を走り抜け。ついに襲われているNPCキャラバンの元へとたどり着いた。

 向こう間近に見えるは、雄たけびを上げて翼を振るい打ち、爪を牙を剥くベヒモス級モンスター――ダウンユニヴ・ディノサウルス。
 そして手前には、必死に襲い来たベヒモス級モンスターと戦うキャラバンの人々。中には傷ついた人や、隠れ怯える女子供キャラの姿も見える。
 それらはどれも、画面越しにゲームをプレイしていたときよりも遥かにリアルに鮮明に、生々しく見え。星宇宙の顔を無意識に険しくさせる。

 そんな苦い顔を作りつつ。星宇宙は地面を蹴って一際大きく飛び、そして戦うキャラバンの人々の中へ、割る様に降り立った。

「えっ!?」
「な、何!?」

 唐突に場に踏み込んで来た星宇宙の存在に、キャラバン隊の人々は戦いながらも驚きの声を上げた。
 彼ら彼女らの手中にある得物は、いずれも弓矢やクロスボウなどの手製の武器や。良くて旧式な上に劣化の見えるライフル銃など。
 ベヒモス級のモンスターを相手取るには苦しいものがほとんどだ。
 
「な、誰だっ!?」

 そのキャラバン隊の人々の内、星宇宙の一番近くにいた狩猟銃装備の女が、驚きながら訪ねる言葉を寄越す。

「さがって――ッ!」

 しかし星宇宙はそれに解答はせずに、要請の張り上げ声で答え。
 次の瞬間には下げ構えていたL-39の引き金を引いた。

 ――ドンッ!――と。

 鋼鉄をぶつけたような衝撃の音が響き、感覚が星宇宙に伝わり。
 L-39はその銃身銃口から20mm弾を撃ちだした。
 本来なら体にダメージを負い、吹っ飛び引っくり返るまでの射撃の衝撃。しかしゲームの使用特性が助け、星宇宙はその華奢な身体で衝撃を見事受け止め殺し、踏ん張って見せた。

 そして同じ瞬間に、撃ち放たれた20mm弾は――ダウンユニヴ・ディノサウルス(以降、ダウンディノ)の胴、腹のど真ん中を直撃していた。

 その巨体をわずかにノックバックさせる姿を見せ――しかし次にはダウンディノは、その顎をかっぴらいて怒りの咆哮を上げた。

「ッぅ……!――どチートのこれ(L-39)でも、一撃じゃ無理か……ッ!」

 星宇宙はその咆哮を浴びて、少し身を竦ませて。そしてあまりに強靭なダウンディノの体を前に、そう言葉を零す。
 方やその直後。ダウンディノはその巨大な翼でこちらを打つ企みだろう、大きく身を振るう前動作を見せ。次にはそれを眼下の星宇宙に向けて打ち振るい放とうとした。
 しかし――

 ドドドドドッ――と。

 側方向こうより何か連続的な破裂音が響き。
 同時にダウンディノが横殴りに打たれ体勢を崩し、怯む姿を見せたのはその瞬間だ。

「ッ!」

 星宇宙はその現象の正体に思い当たる節があり。ハッ、と側方の向こうへ視線を向けて送る。
 少し離れた向こうにある緩やかな丘、その斜面上に見えたのは、遠目にもわかる他ならぬモカの姿。
 斜面を利用してスライディングに似た姿勢を取る様子を見せるモカ。
 その腕には、何かくすんだ黒色の長い物体が腰だめで構えられている――それは、機関銃だ。

 ――MG34。
 かつてドイツで開発生産された、汎用機関銃。
 それが、モカの腕に構えられ。そしてその射撃が、今しがたにダウンディノを襲った打撃現象の正体であった。

「MG34!モカの初期装備にあったのか!」

 そのモカの姿と手中にあるMG34を見て、気付きの声を上げる星宇宙。
 そのMG34の武器アイテムは、またMODにより導入されたもの。それがモカのインベントリに初期装備として入っていたようだ。

「星ちゃんっ!今だよっ!」
「ッ!――」

 そのモカから発し上げ寄越される、促す声。
 それに星宇宙はまたハッと気づいて、ダウンディノの方向へと視線を戻す。
 そして同時に間髪入れずに、腕中のL-39の引き金に再び力を込めた。

 ――再びの、鈍くも凄まじい衝撃と射撃音が響き。
 そして打ち出された20mm弾は、ダウンディノの胸部に直撃。大穴を開けた。

「―――――……!!」

 ダウンディノから上がったのは、苦しみの表現する絶叫。そしてしかしそれは力なく途切れ掻き消えた。
 それは明らかな断末魔。
 直後に、ダウンディノはその巨体をぐらりと倒し。そして鈍く大きな音を立てて地面に落ち沈み、盛大に土埃を上げた。

「――……やった……」

 その姿を前に、漠然とながらも確証を得て、人声を零す星宇宙。

「……やった?……やったぞっ!」
「ダウンディノを倒した!」
「すごい、信じられない!」

 そして瞬間、周りから上がったのはキャラバンの人たちの歓喜の声の数々。

《うおおおおっ!》
《やった!倒した!》
《ひやひやしたー……!》

 そして同時に常時投影させていたコメント欄にも。それまでコメントを忘れて状況に見入っていた視聴者の皆の、歓喜などのコメントが流れ打ち込まれた。

「……銃火器MOD作者の皆さん、ありがとう……!そしてDWAのMOD作者さん、なんかゴメンなさい……」

 そんな中、星宇宙は。
 危機的状況を乗り越えるカギとなった銃火器MODの作者の方々への、感謝の念を零し。
 そして同時にDWAのMODの作者さんに、うまくは言えないが何か申し訳ない所を感じてしまい。謝罪の言葉を同時に零した。

「星ちゃんっ!大丈夫!?」

 そんな所へ、モカが引き続きその腕中にMG34を下げ構えながら。星宇宙の元へと駆け寄って来た。
 その顔には驚きと心配のそれが混じっている。

「あぁ、俺は全然大丈夫――それよりモカ、援護ありがとう。すごくナイスなタイミングだった」

 それに返し。同時にモカの援護のへの感謝の言葉を向ける。

「ううん、運よく間に合っただけだよ……武器があたしの装備にも入ってたおかげだし。それに星ちゃんと違って、すぐに飛び出していけなかったし……」

 しかしそれにモカは、逆に少し申し訳なさそうな言葉を返す。

「何を言ってる。それなら向こう見ずな俺を、咄嗟の機転でうまくカバーしてくれたってコトじゃないか?どうあれうまく決着を付けられたんだ、誇ってくれよっ」

 それに向けてしかし星宇宙は、少し意識して悪戯っぽく揶揄うような笑みを作り。
 そして拳をモカの前へと翳す。

「星ちゃんっ――うんっ!」

 それにモカもその顔にニカと笑みを取り戻し。自身も拳を翳し。

「ファーストクエスト――」
「――完了っ」

 星宇宙とモカの二人は、互いの拳をまたコツンとぶつけあった。
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