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Chapter1:「タイトルコール」
Part3:「タイトルコール、からの――」
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「――さて、ずっとじっとして居てもしょうがない。とりあえず行動開始と行くか」
現在可能な限りの状況掌握、対応策の考慮を終え。星宇宙はその場を立つ意思を言葉にして紡ぐ。
「あっ、星ちゃんマスター。一ついいカナっ?」
しかしそこで、モカが言葉を割り入れた。
「あたしたちはボイスキャラクターじゃん。だったらせっかくだし、実況しながら攻略を目指さないっ?」
「え?」
そんな唐突な提案に、星宇宙はまた怪訝な顔を返す。
「何を?……!、いや――」
モカのそれに、最初は異を唱えようとした星宇宙。
しかし、今の状況はTDWL5のプレイ経験のある視聴者が見ている状態だ。直接の助けは受けられなくとも、何らかのアドバイスでバックアップを受けられる可能性はある。
「やってみるか……?これは、どっちかというと生放送スタイルになっちゃうが――こうなった以上、パフォーマンス性を考えるまではしなくていいか――うん」
その有用性を鑑み。
同時に、当初の想定であるゲーム実況作成とはだいぶ指針がずれてしまうが、現状からそれはすでに些細なことと自分自身を説き。
決定の意思を込めた一言を零す星宇宙。
「そのアイディアで行こう――」
次には、モカに向けてその考えを受け入れる言葉を向けた。
――と言うわけで、打開策を探すために実況しながらの攻略をしていく事になったのだ。
――上空を大きな鷹が飛び抜けていく。
このゲームの序盤スタート時の演出だ。
「「――ザ・ダウンワールド・レジェンドⅤ――」」
それを一度見え上げると共に、星宇宙とモカは二人揃って。背後後方に浮かべた撮影用スクリーンをカメラ目線で見上げて、同時に通る声でタイトルコールを発した。
「日本語に訳すと《落ちた世界の伝説》だよ、〝路宵郷 もか〟です!」
「たぶんゲームの内容から訳すなら《荒廃した世界の冒険》とかだと思う、〝美惑 星宇宙〟です」
そして続けて、音声合成ソフトの開幕にはお約束としてよく見られる。それぞれの自己紹介の言葉を紡ぐ。
「さって!早速、星ちゃんマスターと一緒に冒険を進めて行きたいとおもうぜぃっ!」
「正直まだ色々納得できていないが、とりあえずそれ以外に指針が思いつかないので進んでいきます」
先のスタート地点より伸びる、木立に囲われる小道を進みながら。二人はMCでも務めるようにそんな言葉をそれぞれ紡ぐ。
《大変そうだけど少しワクワク》
《無理すんな》
《まだ信じられないけど、なんか心配……》
《俺もTSしたい》
《装 甲 列 車 ま だ で す か》
星宇宙が自身の横に常時投影させたコメントスクリーンには、反応コメントが流れスクロールしていく。
「不安だらけだけど、細心の注意を払っていくいかないかな」
「白状するとTS願望は俺自身はあったりしたんだよねー……」
「マッテマッテオチツイテ、装甲列車の話は書く止めたわけじゃないからマアオチツケヨ」
星宇宙は歩きながらも、その流れるコメントを可能な限り拾って返答していく。
《とりあえずメインクエ拾ってく感じですか?》
その流れで、これからの攻略指針に触れるコメントが新たに打ち込まれた。
「そのつもり。今の自分の状態もはっきりしないし、いきなりデカイ冒険はできないかなって」
それに解答を返す星宇宙。
TDWL5はかなり自由度の高いゲームだ。
スタートからいきなり最終ステージの最終ボスに挑む事も出来れば。一切の戦闘を回避しての口先やステルスを駆使した不殺プレイも可能だ。
しかし今の星宇宙自身がどういう状態なのかはっきりしない以上、あまりに無茶はできない。
もしかしたら今の身この世界ダメージや怪我の類が、本当の自身の身体に影響し。ゲームオーバー=自分の本当の体の死という最悪のシナリオの可能性も捨てきれないのだ。
しかしじっとしても居られない。
そこで結局取れる選択肢は、チュートリアルを兼ねるメインストーリーを最初から堅実に進めて行くという方法であったのだ。
《という事は、この後は……》
「そう、早速最初の戦闘がある」
次に打ち込まれたコメントに、それを続け答えるように星宇宙は言葉を発する。
星宇宙はすでにTDWL5を何度も何周もやり込んでおり、メインクエストの流れは熟知していた。
その記憶からすれば、今歩くこの木立を抜けた先で。NPCのキャラバンが小型モンスターの群れに襲われていて、それに介入する流れとなるはずなのだ。
「さぁテクテクテクテク歩いて行くとー?――」
そんな視聴者へのコメントの答える星宇宙の一方で。モカは元気な様子で言葉を発しつつ、意気揚々と少し先を歩み進んでいく。
星宇宙も少し急きそれを追いかけつつ。
二人は小道の少し向こうに見えていた、木立が終わり日が差している個所から。その向こうへ、開けた荒野へと踏み出た――
「――は?」
そこで真っ先に見えたものに、星宇宙は思わず呆けた声を上げてしまった。
広がったのは、開けた荒野。
その向こうの既に朽ちたかつての道路上には。襲われ窮地に陥ったようすの、馬車や古めかしいトラックが混在したキャラバン隊が見える。
そこまではいい、メインクエストの序盤通りだ。
しかしその向こうに見えたもの。
それは、おとぎ話のドラゴンを思い起こさせる、巨大な飛行爬虫類。
そんな巨大モンスターが、キャラバン隊を襲う光景であった――
現在可能な限りの状況掌握、対応策の考慮を終え。星宇宙はその場を立つ意思を言葉にして紡ぐ。
「あっ、星ちゃんマスター。一ついいカナっ?」
しかしそこで、モカが言葉を割り入れた。
「あたしたちはボイスキャラクターじゃん。だったらせっかくだし、実況しながら攻略を目指さないっ?」
「え?」
そんな唐突な提案に、星宇宙はまた怪訝な顔を返す。
「何を?……!、いや――」
モカのそれに、最初は異を唱えようとした星宇宙。
しかし、今の状況はTDWL5のプレイ経験のある視聴者が見ている状態だ。直接の助けは受けられなくとも、何らかのアドバイスでバックアップを受けられる可能性はある。
「やってみるか……?これは、どっちかというと生放送スタイルになっちゃうが――こうなった以上、パフォーマンス性を考えるまではしなくていいか――うん」
その有用性を鑑み。
同時に、当初の想定であるゲーム実況作成とはだいぶ指針がずれてしまうが、現状からそれはすでに些細なことと自分自身を説き。
決定の意思を込めた一言を零す星宇宙。
「そのアイディアで行こう――」
次には、モカに向けてその考えを受け入れる言葉を向けた。
――と言うわけで、打開策を探すために実況しながらの攻略をしていく事になったのだ。
――上空を大きな鷹が飛び抜けていく。
このゲームの序盤スタート時の演出だ。
「「――ザ・ダウンワールド・レジェンドⅤ――」」
それを一度見え上げると共に、星宇宙とモカは二人揃って。背後後方に浮かべた撮影用スクリーンをカメラ目線で見上げて、同時に通る声でタイトルコールを発した。
「日本語に訳すと《落ちた世界の伝説》だよ、〝路宵郷 もか〟です!」
「たぶんゲームの内容から訳すなら《荒廃した世界の冒険》とかだと思う、〝美惑 星宇宙〟です」
そして続けて、音声合成ソフトの開幕にはお約束としてよく見られる。それぞれの自己紹介の言葉を紡ぐ。
「さって!早速、星ちゃんマスターと一緒に冒険を進めて行きたいとおもうぜぃっ!」
「正直まだ色々納得できていないが、とりあえずそれ以外に指針が思いつかないので進んでいきます」
先のスタート地点より伸びる、木立に囲われる小道を進みながら。二人はMCでも務めるようにそんな言葉をそれぞれ紡ぐ。
《大変そうだけど少しワクワク》
《無理すんな》
《まだ信じられないけど、なんか心配……》
《俺もTSしたい》
《装 甲 列 車 ま だ で す か》
星宇宙が自身の横に常時投影させたコメントスクリーンには、反応コメントが流れスクロールしていく。
「不安だらけだけど、細心の注意を払っていくいかないかな」
「白状するとTS願望は俺自身はあったりしたんだよねー……」
「マッテマッテオチツイテ、装甲列車の話は書く止めたわけじゃないからマアオチツケヨ」
星宇宙は歩きながらも、その流れるコメントを可能な限り拾って返答していく。
《とりあえずメインクエ拾ってく感じですか?》
その流れで、これからの攻略指針に触れるコメントが新たに打ち込まれた。
「そのつもり。今の自分の状態もはっきりしないし、いきなりデカイ冒険はできないかなって」
それに解答を返す星宇宙。
TDWL5はかなり自由度の高いゲームだ。
スタートからいきなり最終ステージの最終ボスに挑む事も出来れば。一切の戦闘を回避しての口先やステルスを駆使した不殺プレイも可能だ。
しかし今の星宇宙自身がどういう状態なのかはっきりしない以上、あまりに無茶はできない。
もしかしたら今の身この世界ダメージや怪我の類が、本当の自身の身体に影響し。ゲームオーバー=自分の本当の体の死という最悪のシナリオの可能性も捨てきれないのだ。
しかしじっとしても居られない。
そこで結局取れる選択肢は、チュートリアルを兼ねるメインストーリーを最初から堅実に進めて行くという方法であったのだ。
《という事は、この後は……》
「そう、早速最初の戦闘がある」
次に打ち込まれたコメントに、それを続け答えるように星宇宙は言葉を発する。
星宇宙はすでにTDWL5を何度も何周もやり込んでおり、メインクエストの流れは熟知していた。
その記憶からすれば、今歩くこの木立を抜けた先で。NPCのキャラバンが小型モンスターの群れに襲われていて、それに介入する流れとなるはずなのだ。
「さぁテクテクテクテク歩いて行くとー?――」
そんな視聴者へのコメントの答える星宇宙の一方で。モカは元気な様子で言葉を発しつつ、意気揚々と少し先を歩み進んでいく。
星宇宙も少し急きそれを追いかけつつ。
二人は小道の少し向こうに見えていた、木立が終わり日が差している個所から。その向こうへ、開けた荒野へと踏み出た――
「――は?」
そこで真っ先に見えたものに、星宇宙は思わず呆けた声を上げてしまった。
広がったのは、開けた荒野。
その向こうの既に朽ちたかつての道路上には。襲われ窮地に陥ったようすの、馬車や古めかしいトラックが混在したキャラバン隊が見える。
そこまではいい、メインクエストの序盤通りだ。
しかしその向こうに見えたもの。
それは、おとぎ話のドラゴンを思い起こさせる、巨大な飛行爬虫類。
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