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スローライフに不穏な足音

サバナァンの宿

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アオトの転移で 移動をすませてサバナァン近くまで来た。
やっぱり門を通らないと行けないらしい。
門は冒険者プレートですんなり通れた。

「いらっしゃい」「いらっしゃい 」
パズルフィと違い 門を向けると大通りが奥に抜けてその両隣の店からは呼び込みの声がかかり 活気溢れる街並みになってる。

「凄いね」

「パズルフィには劣るが 活気があるのはコチラの方が確かだ」

「色々と見て歩きたいでしょうが、先に宿を決めないと困りますよ。花の泉宿が評判がいいらしいですよ」

ユキナの案内のままに大通りから外れ細い道を進み 本当にこんな所に宿があるのか不安なった頃に看板が見えた。

「こんにちは」

声をかけると 振り返った女性の腕の中には幼子が抱かれていた。

「いらっしゃいませ。ようこそ花の泉宿へ」

ニコッと笑う若い女性は幼子を抱いたままペコリと頭を下げた。

「大部屋を一部屋と一人部屋を2泊頼みたいが 部屋は空いてるか」

「ええ、空いてます。レビン お客様よ」

入ってきたドアから籠を抱えて入ってきた若い男性をレビンと呼び 明るい声を出す女性。

「 いらっしゃいませ。ようこそ リビリィお部屋に案内して」

幼子をレビンに預け部屋に案内してくれるリビリィについて行き部屋に入った。
清潔感あるベッドにシーツは花柄で可愛らしい 木の木目が美しい机と椅子。真白な壁に掛かってるガラス細工を使ったステンドグラスの小さな飾りが美しく飾られてる。
出窓には鉢植えが飾られてピンクの可愛い花を咲かせてた。

部屋は可愛く落ち着ける部屋だ。

アオト達の部屋を見に行って見ると、4人部屋は傘の腰かけ宿と同じ様にベッドとソファーとテーブルが置かれてるが、ベッドの横に小さなチェストが置かれて 窓際には植木鉢が置かれている。

そして窓の上部にステンドグラスを吊るしている。
風が吹き込むと 小さな鈴がついてるのか チリンチリンと音を奏で 耳に心地よい音色に落ち着く空間になる。

「素敵部屋ね。気に入ったわ」

「ええ、素敵な場所ですね」

明日はアオトとコウキが冒険者ギルドに行き薬草を課金してその間 私とユキナは手触りのいい生地を探す事にした。

夕飯が出来たからと呼ばれ食堂に下がれば 幼稚園児位の女の子がパンの籠を持って現れた。

「いらっしゃいませ どうぞ」

拙いながらも一生懸命にお手伝いをする姿は微笑ましい。

「ありがとうございます。お名前は」

「リューイだよ。パパの料理は世界一美味しいからほっぺた落ちちゃうから気をつけてね」

「あらあら、それは大変。ほっぺた落ちちゃったら リューイちゃん助けてね」

女の子とクスクスと笑っていると料理を持ってリビリィとレビンが現れた。
幼子の姿がないのに心配になった。

「あの、赤ちゃんは」

「ベリルは母が見てくれてますので大丈夫ですよ。それよりも 冷めない内にどうぞ召し上がって下さい」

「いただきます」

大きく切った肉を煮込んだ料理と 野菜を香辛料で炒めたもの さっぱりとしたスープ

肉はホロホロと骨から外れて 噛むと口の中でジュワッと肉の旨みが広がる。
野菜は香辛料が聞いて パンとよく合う。
パンと挟むとカレーパンに近い。
そして スープがよく合う。
リューイの言う通り この世界で1番と言ってもいいだろ料理の腕前だ。

「リューイのパパは確かに世界一の料理人だね。すごいよ どれも 美味しい」


パパを褒められて嬉しいのだろ いい笑顔をした所でリビリィに呼ばれて走っていく。

「いいお子様ですね」

「ありがとうございます」

「この料理も最高なのに お客が私達だけってのは可笑しくないですか?」

「・・・立地が良くなかったんでしょ。私は料理には自信があったので 料理さえ美味ければ客が集まると思ってたんですが、いざオープンさせると・・・なかなか難しいものですね」

「オープンして何年になりますか?」

「オープンして7年になります」

「この料理を食べてもらえないのはもったいないですね。隠れ家的名店になりうるのに。目玉になる料理はありますか」

「目玉になる料理ですか?」

「ええ、部屋も申し分無い 落ち着いた部屋に
美味しい料理。お客様に気に入って貰える要素は十分あります。あとは集客に繋がる目玉が欲しいですね」

「えっと、例えばどの様な料理ですか?」

「そうですね、例えば この肉料理。何時間も煮込んで旨みが増して口の中で旨みが広がる。最高の1品ですが、肉料理なんてどこでも真似して出来そうですね。・・・デザートが出てきた事 無かったですよね。他との格差を付ける為にデザートをお出しするサービスはどうですか?」

見通しが甘かったもの確かにあるし、宣伝して来なかったのだろう。
料理もなかなかの腕前だ、ぜひ 長続きして欲しいが、今の状態もギリギリを保っているのだろ事は想像出来る。

「デザートですか?それはどんな料理なのでしょう?」

デザート自体無いのか。
驚いてたら ガバッと深く頭を下げるレビンに驚いてると。

「お願いします。俺には家族がいる。家族を守る為にも この宿にお客さんを増やしたいが俺一人の力では限界があるのも分かってた。どうか 俺に力を貸してください」

私もこの宿にお客さんが私達だけってのも納得行かなかったし、不思議だったのよね。
余計な質問しすぎたのもこの宿をこのままにして置くのも もったいないと思っていたからだ。

「いいわよ。でも、まずはご飯を食べさせて。話はそれからでいい?」

「はい!!ゆっくり味わって下さい」

頭を下げて調理場に戻るレビンを見送って声をかけてくる3人。

「ミホ~ 本気なの?デザート何を教えるの?」

「この宿は落ち着きがあっていいが、本気で協力するのか?」

「私は賛成ですね。妖精達も喜んでますし。私も協力しますよ」

一斉に喋んないでくれる?聖徳太子じゃぁ 無いんだから。

「デザートね。調理場を覗いて見ないとどうにも言えないけど 旬の果物とかを使えればって思ってる。それに、この料理だけでも集客の架け橋になるのよ。美味しいでしょ」

「確かにこの肉料理は美味いと感じた」

「美味しいよね~お肉トロトロで美味しいよね~」

「肉料理もですが、この野菜炒めパンと良くあって美味しいですよね」

3人が認めたとなると この料理は合格だろ。
もう一度 来たいと思わせるには十分だけど、あともう1歩、なにかが足りない。
門からもギルドからも遠いこの宿は 料理が美味いだけでは客足が伸びない。
ならば この宿ならでわの ここでしか味わえない何かが無いと客が振り向きもしないってことだ。
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