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スローライフに不穏な足音

嫁の話 2

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突進して来るの亀。
亀って 意外と足速かったのね!!

「こーむーすーめー!ワシのお嫁ちゃんを泣かすとはーーーー!許さんぞおーーー!!」

突進して来る亀が叫ぶ声が響く。
ちょっと、私 悪者扱いになってる!

私の前に降り立ったのコウキとユキナ

「もぉ~許さないよ!小娘じゃない!!ミホだよ」

コウキー!注意する点がそこか?!

「何を根拠にミホが泣かせたと言ってるのですか?」

流石はユキナ!的を得ている。
その間にも亀に体当たりして亀の突進を食い止めたアオト。
大きな獣が体当たりした為に 辺りにはドォンと音が響き渡り、枝で羽を休めてた鳥が一斉に飛び立った。

「全く、落ち着け!
嫁が泣いたからとミホのせいだとは限らん。嫁が勝手に泣いてしまったとは考えられんのか!?」

嫁が勝手に泣いたのは当たってるけど・・・

「ちょっとアオト!身体大丈夫なの?亀の甲羅って硬いのよ!!」
 
「我は大丈夫だ。亀の甲羅よりもミホが張った結界の方がまだ堅い」

亀の甲羅よりも私の結界の方が硬いとか、私は喜ぶべきなのか?

「・・・そう、大丈夫ならいいけど」

ひっくり返った亀ってどうやって起こすの?
短い手足をモタモタと動かしてるが無理だと分かると、ポンと人型になった亀がムクっと起き上がりズンズンと私の方に歩いて来ると、ビシッと人差し指を突きつけて来た。

「おい 小娘ミホ!ワシのお嫁ちゃんがなぜ泣いてしまったのだ!?」

イラッ!

「私は "おい"でも"小娘"でもありません!それに、私を指ささないで下さい。下品です!!ミホで結構なので、他の言葉を削除して頂けませんか、そうでないとお話できませんね」

「ぐぬぅぅぅ!!クラヤマ!!お嫁ちゃんを泣かせたのか?」

名前ではなく苗字で来たよ、よっぽど嫁が泣いた事が腹に据えかねたのね。

「旦那様、私が泣いてるのは嬉しくて泣いています。ミホを悪く思わないで下さい」

「うにぅ そうなのか?」

「ええ、そうなのです。私の母様を初めて褒めて下さったお友達です」

はい?私は いつ嫁と友達になったのだ?
首を傾げてると、3獣からの視線を感じて見てみると、あーあって感じで見られてる。
なぜだ?

「それに、旦那様はお気づきになってますよね、私にも僅かですが見えます。ミホはとても素敵ですよ」

「それは・・・わかっておるがワシが今 大事にしたいのは お嫁ちゃんだ」

うわぁ~、さっきとはまるで違い 勢いを無くした亀に唖然となる。その様子に慣れてるのか3獣達平然としてるが、うにぅってなんだ?
亀の鳴き声か?亀って鳴かないよね?

「誰が誰を大事にするかは自由。亀が嫁を大事にしたければそうすれば良い」

イヤイヤ 大仰に言ってるけどさ、旦那が嫁を大事にしたいのは当然なんだから敢えて念押ししてまで言わなくてもいいんじゃないアオト。

「そうですね。ミホには我々が付いてます、気になさらず思う存分 嫁の側についててあげてください」

「へぇ~、お嫁さんやるじゃん。流石は神子の血筋だよね」

勢いを無くした亀は嫁に寄り添って座ってしまた。
嫁の暗い昔話を聞いたけど、嫁は私に何の話をしたかったのか?それとも、ただ昔話を聞いて欲しかったのか?

答えを求めて 頭の中を整理するが、ただ 幼き日は肩身の狭い日々を送り、大人になり愛し合える相手が高貴な御方で更に精神的に追い詰められて旦那と逃げたが、逃げても ありもしない噂を流され人に会いたくないと金魚に姿を変えた嫁に代わり、嫁の自慢に至った旦那の話を聞かされただけだ。

フゥ~、わざわざ二人きりで話すことか?
この世界の方の考えることは、理解できない。
たったこれだけのために 私の貴重な時間を使ってまでここに来なのか?

解せぬ!!

「ねぇ、私に話って さっき話したので全てなの?」

「いえ、・・・そのぉ~・・・」

キョロキョロと辺りを見回し頬をピンクに染めた嫁は立ち上がり私の腕に自分の腕を絡めて歩き出す。
私 腕を組んで歩く趣味は無いわよ。
振り解こうと思えば出来るけど嫁の好きな様にさせてた。
後の亀が 「おっおっおっお嫁ちゃ~んお嫁ちゃ~ん」叫んでるけど無視だ。
余りにも執拗いのでチラリと見るとアオトとユキナに取り押さえられてる亀。

亀 ちょっとウザい。

「あの、なんと言えば・・・私の事をわかって欲しくて思い出したくない過去を話した上でお願いが・・・その、私とお友達になっては頂けないでしょうか!」

「お友達になるなら私の過去も話せと?」

「違います!私の過去を話したのは 私の事をちゃんと理解して欲しくて話した迄で、ミホの過去を話してほしいとは言ってません。
私は 今まで 友と呼べる方が居なかったので・・・ダメでしょうか」

はぁー、友達って こんな風に作るもんだったけ?
友達も居なかった嫁にはわからないか、育った環境もなんだか想像出来るし 嫁には多少なりとも同情する所はあるけど、だからって・・・でもなぁ、引きこもって金魚になってた嫁がやっと外に出てきたのに 私がココで断ったら また逆戻りになっても目覚めが悪いし。

「条件があるけどいいかしら」

「条件とは」

「貴方の自慢をする亀の暴走をちゃんと止めること。あれは、本当に迷惑よ。
貴方がちゃんと止めるって約束してくれるなら、お友達になってあげても良いわよ」

フワリと抱きつかれたが引きはがすことが出来なかった。

蚊の鳴くような声で「ありがとうございます」囁く声と 震えてる腕。
この嫁は亀に愛されていたが、心のどこかで寂しさを抱えてたのかもしれない。

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