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スローライフに不穏な足音

登録と騎士と

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秘書の方に説明を受ける。
個人のみで使う事を目的とした個人保有登録の為、利益を得る為のものとしないこと。
他人に教え、第3者からの利益を得てはならない。

ざっくりとした決め事だな。
要するに、売買をしてはならないって事だろ。
3点の作り方と食品の登録を済ませる。が、ココでもナイフを渡され 血を1滴タラリと落とすとピカっと光って登録完了。
呆気なく終わった。

後で知ったが、売買目的だとかなりの決め事を決めないといけなく、双方の折り合いを付けるために何日もかかるとか。
本当に 個人保有登録で良かった。

マリナドが、難しい顔で真向いに座ってるので 居づらい。

早々に出て行きたいのにクロムが待ってて下さいなどと 笑顔で 言ったために動けない。

「登録をした後で悪いけど、どうやって今回の調理法を思いついたの?」

当然の疑惑を今 聞くのかマリナド?遅くないか?こんな人に商業ギルドを任せて大丈夫なのか?まぁ~私には関係ないか。

「たまたまですよ」

「にしては詳しいわね。タンパクだのなんだのって、料理が出来るからって そこまで知らないわよ。研究者なの?」

「学びたいと思えば、何処でも学べますよ。全ては心構えが大切です。知らない事を知る為に恥を忍んで聞くのか、それとも知らないままにしとくかはその人次第でいくらでも変える事が出来ますから。私は無知をさらけ出して学んで来ました」

コレもアオトとの打ち合わせ通り、淀みなく言ってやりました。

「素晴らしい心構えですね。私もミホさんを見習いたいです」

本気で言ってます?クロムよ。  

「お願いがあるんですが、聞いて貰えますか」

やだなぁ~。聞く前にお断りしたい。ペテン師クロムのお願い事はろくな事なさそう。

「今回の登録食品を使った料理を是非食べさせて下さい。もちろん、何があっても私の自己責任としてですので、安心してください」

「食べさせてあげたいですけど、料理する場所が無いですから無理ですね。ごめんなさい」

「料理する場所ですか?私の家でよければ 使って下されば」

はぁー、嫌よ!なんで好き好んでペテン師の家に自ら乗り込まないと行けないのよ。
お断りだ!

「今日中にこの街を出ることはギルマスはご存知ですよね。料理をしてたら出れなくなりますのでお断りします」

「出て行くと言ってますが、何か急がないと行けない理由は?魔道具を求めてと 言われてしまえば確かに急ぎたいと思うでしょうが、魔道具作りマエストロと呼ばれる男がこの街に居ます。マエストロ以上に素晴らしい魔道具を作る者は私は知らない。マエストロ以上に素晴らしい魔道具を作る者が居るのであれば教えて貰えませんか」

急いで出ていくのは家に帰りたいからよ!
マエストロとかビストロとか関係無い、第一に冒険者の行動には制限がないのでしょ?
だったら私が何処に行くのも自由よね。

「断る。我々はここに今 居るのは騎士の到着を待ってるだけだ。事情聴取が終われば 即出て行く」

「アオトさんに頼んでないです。私はミホさんに頼んでます、ね ミホさん 是非ミホさんの作った物が食べたいのですが」

ねっ!って、なに? ねって。マリナド何?その期待の篭った目つきは!
料理してたら、街から 出れなくなるでしょう?

「宿も引き払ってますし ほんとに困ります」

「安心してください。宿は私が抑えてます。今日迄泊まってた部屋ですが」

マジか!

「ソレ 私も お願いしたかったのよ。チーズ、バター、生クリームを使った料理、是非 私にも食べさせて!!!」

イキナリ前のめりで出て来て頼まないで、怖いでしょ!ホラーは作り物だから見れるけど、現実はお断りよ。

「私がそこまでしないといけない理由は?」

「新しい食べ物が目の前にあるのよ。それがどんな物か、食べたいじゃない!
それ以外の理由なんてある?」

お~い。潔よすぎるだろマリナド。

やだよぉ~お家がとおのくよぉ~。
アオトさん、お口が引き攣ってますよ。
帰りたいと思えば思うほど 恋しくなる我が家、1度帰って また来た時に?とか でもいいかな。

ノックの音と共に、失礼します と入って来たのは 制服姿の 若い男性20代後半と渋めの40代のおじ様。
若い方はちょっと 男前かな。ジャーニー〇にいても 可笑しく無いだろ。
この位の年代って いいのよねぇ~。
恋愛にはならないから、キャーキャー言って やっぱりかっこいいよねぇ~。で済んでしまう。
擬似恋愛もしてる人は居るだろが、私の場合は、はぁ~かっこいいわね 。若ければ・・・の例えばの話に持っていけて、それなりの会話が若い子と成り立つから、自分の好みは要チェックなのだ。


逆に同年代位のはなんて聞かれたときは、回りには居ない タイプを答えるのがベストなのだ。
似たような人がいる場合、じゃ あの人は?
なんて 話になりかねないから。

若すぎるのも麗人は範疇に無いのだ。が、見た目渋めで 最高にタイプの40代!本気でタイプの人だ。
顔が紅くなりませんように。

ギルマスのクロムと騎士で話してるが、おじ様にチラ見されてしまった。
キャー  カッコよすぎるのも問題よね。

肘で私の脇腹をつつく アオトに「なに」って聞いたら、ブスくれた表情のアオト。

「失礼します、貴方がミホさんですね。私は第3騎士団の副隊長をしてますエルビス、と、同じく第3騎士団のザナットです」

エルビスさんね。
自分と隣に立つ男性を紹介してくれた。

ざっと アヴットの詳細を聞かされて 間違いかと質疑応答形式で話が進む。女将さんにも事情聴取を行ってたみたいで、私には形式での聞き取りのみで、あっという間に終わってしまった。
エルビスとも別れの時ね、儚い。
もう少し 好みの御顔を拝見しときたかったです。

「私の一存では決められませんが、アヴットは盗み見た事も認めてますし、真似て作りはしたが 完成も出来なかった事も有ります。彼の罰状は街の奉仕活動が言い渡されると思います」

余り 重くなさそうな罰状で良かった。

「はい、わかりました」

「最後に 気になる事が、完成手前まで 出来たなら無限だ、と おっしゃったそうですが、どうして真似をされてると分かっていながら放置しようとしたんでしょうか」

うっ!考えてもいなかった・・・どうしよう

「・・・物が乳製品なので 流通でもしたら、大惨事になってたかも知れませんが、彼は料理人です、作った物を味見しますよね。もし味がおかしければその場で気が付きます。食品が傷んでれば、彼は悲惨な目に合いますよね。私が作った物はとてもデリケートな食品なんです。真似たからと言って、そうそおに扱えるものではないんです。お手数をお掛けして申し訳ありません」

納得してくれました?

「そうなんですか。いや、大惨事になる前に分かって良かった。
にしても、滅多に口に出来ないものなんですね。とても興味深いです。ぜひ食べてみたいものですね」

エルビスさんの期待の篭った目つき!期待に応えたい!!

「申し訳無いが我々は今日中に街を離れる事になってる。期待に 応えられん。事情聴取も終わった事だ。ミホ 行くぞ」

私の腕を持ち上げて立たされてしまった。

「えっと・・・そうなんです。今日 この街を出るんです。
ご期待に添えず 申し訳ありません。
また この街に来た時に お時間があれば、私の手料理になりますが、是非ご馳走させて下さい。では 失礼します」

「待って!!私も 食べさせて下さい」

うわぁ!いきなり 出て来ないで。

「えぇ、マリナドさんも もしよろしかったらその時 ご一緒にどうぞ」

「では、いつ この街に戻って来るのか聞かせて下さい」

クロムよ!用意周到も程々にしてくれる?
その場の便宜って有るだろ。

「そうですね、コチラに戻って来ましたらお声をお掛けしますね」

「不確かな約束は要りません」

「クロム ギルドマスター、貴方はミホになにをさせたいんだ」

不機嫌のままに問うアオトに平然と笑を浮かべるギルマス。

「不確かなモノはどうしても確かめたい性格なんです。ミホさんは 良く分からない人ですよね。アオトさん貴方も、私の興味を引く人はなかなかいませんよ」

自慢げに返答するけど、そんな事 自慢にならない。

「褒められたものでは無いな。自分の自己満足で迷惑を被るのはゴメンだ」 

全くだ。

「自己満足と言われても 仕方ありませんね。でも、乳製品を使った料理を食べたいと言ったのは私だけでは無い。どうだろ、ここに居る者だけでも 試食をさせてもらえないだろうか」

試食会をしないと収まり付かないかな。
仕方ない。

「わかりました。試食会します。2週間後に戻ってきますから待ってて貰えますか」

「2週間後ね。私は待ってる」

マリナドのいい笑顔で返答すると 騎士の2名も 頷く、あとは クロムだけ。

「わかりました。2週間後にお待ちしております」

良かった。2週間後に来ないと行けないけど、とりあえず恋しい我が家に帰れる。

2週間後にと約束をして、商業ギルドを出た。

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