赤い糸の先

丹葉 菟ニ

文字の大きさ
上 下
176 / 192
上質な恋を

罰と禁止で 9

しおりを挟む
次の日にはポリ袋3杯分は入ったトウカチョウの殻が届けられた時にノットさんに、この殻を調べたいから今日の予定は何も入れないで欲しいと頼んだ。

テレビで見た知識しかないド素人。何かの番組で流れてたのを流し見てただけで正直不安はあるけど やらないよりはやってみようと思う。

「ウーンまずは茹でてみる?」

『確認だが、私に聞いてるのか?』

前に頼んでた、種類が違う木を10本と種類の違う布7枚と鉄と丈夫な布3枚、太い糸6種類 のり又は粘ってる物を準備してもらった大きなテーブルに並べながらテレビで流し見た手順を思い出しながら桔梗に聞いてみる。

『そうだよ。だって桔梗は俺の助手だから』

『母親から助手になったのか?それは出世したのか?それとも零落したのか?』

『零落って 俺が桔梗にそんな酷いこと思うわけない。ただ この場を楽しみたくてちょっとした言葉のアヤだよ。嫌な思いをさせてしまったならごめん。桔梗は俺のお母さんだよ。俺ね本当の両親に要らない子として捨てられたんだ。だから 自分の親ってのに凄く憧れ持ってて だから新しいこの世界で初めて桔梗を見た時に直ぐにお母さんにって、俺 何言ってんだろなんかめちゃくちゃな事言ってんなごめんな』

軽口で桔梗を傷つけてしまった。と焦ってか咄嗟に桔梗の首に抱き着いて 違うと言えば良いのに 幼い俺が出て来て情けなく色々と言い訳を言い始めてしまった。男がグジグジと言い訳せずにキッパリと謝れってじいちゃんに言われてきたのにな。親が関わるとそれが出来なくなる。捨てられるって どこかに傷が出来たまんまなんだろうな。乗り越えたって思ってても小さな俺がどこかで姿を現す。

『安心しろ。私は何処にも行かないしイオリを見捨てたりはしない。ずっと一緒だ だから泣くな』

頬を優しく舐めてくるれる桔梗にもう一度抱き着いて「ありがとう」と呟く。

「そんなふうに誰彼構わず抱き着いてる姿を見ると妬けるな」

いつの間にか部屋に来てたアルに驚いた。が、アルの言葉に思わず笑ってしまった。

「誰彼構わずって、桔梗は俺のお母さんだから ヤキモチなんて妬く必要無いんじゃない」

「グルゥゥゥ」

威嚇する声を出す桔梗に少し慌ててアルが俺の側に来て桔梗と向き合う様に腰を下ろした。

「すまない。ただイオリに抱き着かれてる桔梗が羨ましかっただけだ」

「ワフ」

柔らかい声を出した桔梗は少しニヤリと笑うとアルに甘えるように身体を擦りつけて窓辺に寝そべり大きな欠伸をすると目を閉じてしまった。

「で、イオリは何をし始めるつもりだ?」

かなり真剣な顔で聞いてくるアルが珍しくてマジマジと見てしまうが、なんか俺 変な事した?

「うーん、似てるんだよね繭に。繭ってのは蚕から取れるシルクの原料なんだけど。コレを一度解いて紡いでみようかな?って」

「そ、うなのか。その、解いて紡ぐ方法は分かってるのか」

明らかにホッとした的な顔をしてるアルベルトに?となるが今は自分の考えをそのまま話すことにした。

「うーん、確か 最初は乾燥させて、蒸して、掃除して、茹でて糸に?テレビで流し見ただけだからなぁ~、中途半端な知識しかないけど、なんか大丈夫な気がするんだよな。まずは コレ乾燥してるよな、だったら 最初っから茹でて見ようかな?って」

「そうなのか。ならば午前中だけだけど時間が取れたから手伝おう」

「本当にやった」

直ぐにルーシーさんが持ってきてくれた水やボウルや鍋をテーブルに置きアルの魔法を駆使してトウカチョウの抜け殻を糸にする実験を始めた。






トウカチョウの抜け殻は誰も知っていて、庭師や家を管理してる者なら目に付いた時には取り外し捨てる物だ。それに何故か興味を持ってしまった私の愛しいイオリ。抜け殻を集めてイオリの元に届けて欲しいとアランに頼んだ時もかなり複雑顔とも呆れ顔とも取れる表情を浮かべながらも了解と返事を返してくれた。

私もアランの気持ちもわかるが、イオリは他の星から転移してきと言っていた。となると色々な憶測が頭の中で渦巻く。その中でも1番現実になって欲しくないのもがある。あれやこれやが食べたいと言っていたイオリ。もしかして イオリがいた所はアレと似た物を食してたかもしれない。とてもじゃないが抜け殻を食べるなんて事は・・・ないと思いたいが、私の知らない所ならまさかの事態になりかねない。

明日は何をするか分からないが真意が分からなければ落ち着かないと、何とか時間を作りイオリの部屋に行くが中からの返事がなくドアを開ければ イオリが桔梗に抱きついる。テイムした獣でも話が出来ない事は誰でも知っているが、時々イオリと桔梗は言葉が通じ合ってるのではと思う。

イオリには誰彼構わず抱きついて欲しくなく注意したつもりが、上手く真意が伝わってない。

珍しくて桔梗からは威嚇されたが本気でされてる訳ではないと分かるが、謝ってた方が良さそうな雰囲気ではある。
私にも遠慮なく抱き着いて欲しいとイオリにも分かって貰える言葉を選びながら桔梗に謝った。思い込みではなく、極希にニヤリと笑う桔梗、よく出来たと褒められる様に一声鳴き私に擦り寄り窓辺に寝そべった。

呆気に取られてるイオリに今日は何をするのだと聞く。もしも私の最悪な結果としたらどうやって止めるべきか1番の悩みどころだ。

イオリに聞けば悩みながらも殻から糸として紡ぎたいと言い出した。最悪な答えではなかったが、この殻から糸に?
それは誰も考え付かなかった事だ。今更良く見なくても 細い繊維で覆われた殻だが乾けば硬くなり爪を立てても繊維を崩すのは無理な事だし、下手に触れば薄く手を切ってしまうこともある。
僅かな怪我もして欲しくは無いが、知らない単語を口にしながらも真剣に悩みながらも楽しそうにしてるイオリを止めるべきではないと判断し僅かな時間しか取れなかったが手伝う事にした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

便利過ぎるドラ〇エ仕様は、俺だけだったみたいです~森の精霊さんに転生した元オッサンは、異世界パフパフ道を極める

飼猫タマ
ファンタジー
ある日気付いたら、森の精霊さんに転生していた。 そして、何故か、俺だけドラ〇エ仕様。 ドラ〇エ仕様って、メッチャ便利。 転職しまくって、俺TUEEEしちゃうのだ。精霊なのに格闘家。精霊なのに鍛冶師。精霊なのに侍。精霊なのに魔王に転職。ハチャメチャな森の精霊さん。見た目は女の子なのに心はオッサン。しかもオッパイ星人。ドラ〇エ名物オッパイパフパフが三度の飯より大好物。体は精霊体の性感帯。そんな森の精霊さんのハートフルパフパフモフモフスローライフファンタジー。 ん?パフパフだけじゃなくて、モフモフも? 精霊さんには、四天王の蜘蛛(アラクネ)とか、犬(フェンリル)とか、ネコ(ベビモス)とか、青い鳥(鳳凰)とかのモフモフのお友達もいるんです!

主人公の兄になったなんて知らない

さつき
BL
レインは知らない弟があるゲームの主人公だったという事を レインは知らないゲームでは自分が登場しなかった事を レインは知らない自分が神に愛されている事を 表紙イラストは マサキさんの「キミの世界メーカー」で作成してお借りしています⬇ https://picrew.me/image_maker/54346

どうやら生まれる世界を間違えた~異世界で人生やり直し?~

黒飴細工
BL
京 凛太郎は突然異世界に飛ばされたと思ったら、そこで出会った超絶イケメンに「この世界は本来、君が生まれるべき世界だ」と言われ……?どうやら生まれる世界を間違えたらしい。幼い頃よりあまりいい人生を歩んでこれなかった凛太郎は心機一転。人生やり直し、自分探しの旅に出てみることに。しかし、次から次に出会う人々は一癖も二癖もある人物ばかり、それが見た目が良いほど変わった人物が多いのだから困りもの。「でたよ!ファンタジー!」が口癖になってしまう凛太郎がこれまでと違った濃ゆい人生を送っていくことに。 ※こちらの作品第10回BL小説大賞にエントリーしてます。応援していただけましたら幸いです。 ※こちらの作品は小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+にも投稿しております。

タイは若いうちに行け

フロイライン
BL
修学旅行でタイを訪れた高校生の酒井翔太は、信じられないような災難に巻き込まれ、絶望の淵に叩き落とされる…

新緑の少年

東城
BL
大雨の中、車で帰宅中の主人公は道に倒れている少年を発見する。 家に連れて帰り事情を聞くと、少年は母親を刺したと言う。 警察に連絡し同伴で県警に行くが、少年の身の上話に同情し主人公は少年を一時的に引き取ることに。 悪い子ではなく複雑な家庭環境で追い詰められての犯行だった。 日々の生活の中で交流を深める二人だが、ちょっとしたトラブルに見舞われてしまう。 少年と関わるうちに恋心のような慈愛のような不思議な感情に戸惑う主人公。 少年は主人公に対して、保護者のような気持ちを抱いていた。 ハッピーエンドの物語。

ヒロイン不在の異世界ハーレム

藤雪たすく
BL
男にからまれていた女の子を助けに入っただけなのに……手違いで異世界へ飛ばされてしまった。 神様からの謝罪のスキルは別の勇者へ授けた後の残り物。 飛ばされたのは神がいなくなった混沌の世界。 ハーレムもチート無双も期待薄な世界で俺は幸せを掴めるのか?

無自覚美少年のチート劇~ぼくってそんなにスゴいんですか??~

白ねこ
BL
ぼくはクラスメイトにも、先生にも、親にも嫌われていて、暴言や暴力は当たり前、ご飯もろくに与えられない日々を過ごしていた。 そんなぼくは気づいたら神さま(仮)の部屋にいて、呆気なく死んでしまったことを告げられる。そして、どういうわけかその神さま(仮)から異世界転生をしないかと提案をされて―――!? 前世は嫌われもの。今世は愛されもの。 自己評価が低すぎる無自覚チート美少年、爆誕!!! **************** というようなものを書こうと思っています。 初めて書くので誤字脱字はもちろんのこと、文章構成ミスや設定崩壊など、至らぬ点がありすぎると思いますがその都度指摘していただけると幸いです。 暇なときにちょっと書く程度の不定期更新となりますので、更新速度は物凄く遅いと思います。予めご了承ください。 なんの予告もなしに突然連載休止になってしまうかもしれません。 この物語はBL作品となっておりますので、そういうことが苦手な方は本作はおすすめいたしません。 R15は保険です。

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

処理中です...