赤い糸の先

丹葉 菟ニ

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上質な恋を

編み物 7

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ご婦人方の襲撃から7日が経った。約束の正式書類も出来たからと会う日を決めて貰ったり、お母さんと一緒に商会に代表に会う日を決めたりとあったけど、基本ゆったりと過ごせてる。2日に1回来てたのに 本格的に忙しいみたいで中々顔も出せなくなってるアル。でも、今日こそはと淡い期待を持ちながら編み物をしながら待ってる。

『そろそろ寝た方がいいぞ』

『もうちょっとで編み上げるから』

『そうか、なら編み上げたら寝ろ』

『・・・桔梗って 本当にお母さん見たい』

『私はイオリの母親だからな』

『・・・もう少し 待っててもいい』

『今日は月も星も見えない。それによく冷える、雪が降りそうだ。ベッドの中で編み物をするなら良いだろ』

『うん、ありがとう』

編み物と毛糸を持って、ベッドの中に足を突っ込み、枕を腰に当てては入った。その横に桔梗が軽やかに飛び乗って丸くなる。

『少しだけだぞ』

『うん』

片方を編み上げてもう片方を編み始める。編み棒に糸を絡ませ1本を抜きレッグウォーマーを編み始める。

どんなに編んでても今日は来ない事が分かってるの。でも、全く眠気が来ない。
今、編んでるのは頼まれたユージの分だ。ダブル父さんの分は編んで渡してる。

『そろそろ 寝らたどうだ』

顔だけを上げて注意して来る桔梗。百合を見ればベッドに入るまで毛繕いをしてたのに今ではグッスリ寝ている。

『うん・・・・』

『親の言うことは聞くものだ』

『分かった』

半分まで編んだ物をチェスボードの上の籠に乗せて横になり眼を閉じた。





横になっていても軽い眠気が来ては、フッ目が覚める。そんなことが何度目かの時は百合がいきなり鳴き始めた。

「ピュピュュピュピュュ」

隣で寝てた桔梗が飛び起きてベッドから下りると、テラスに向かって素早く動きカーテンをかき分けて立ち上がった。

元々がデカいから俺と余り変わらない身長にやっぱりデカイと感心してると『来るな!』と注意されてしまった。

『どうした?』

百合は百合で壁をじっと見てるし。
外を一頻り見て満足したのか、トコトコと 俺の側に戻ってきた桔梗。

『外を確かめたが何も無い。百合が寝ぼけて鳴いたみたいだ』

『なるほど、楽しい夢でも見たんだろうな』

『そうだな。さぁ、寝るぞ』

横になった俺の胸の上に片脚を乗せて、寝ろと言ってくる桔梗の言葉に眼を閉じた。

うつらうつらと微睡み漂いながら朝を迎えた。



いつも通り、朝起こしに来るルーシーさんが俺の顔を見た瞬間、眉を顰めた。

「イオリ様 よく眠れてないのでは?」

うわぁ、バレてる。さすがルーシーさんだな。

「いえ、寝れてますよ」

「目の下に薄らとクマが出来てます」

「そう?よく眠れてるけど」

「そうですか?」

まだ、疑わしい感じで見られてる。

「そうだよ、今日の午前中は父さんの授業があるから楽しみなんだ!ソレに お腹も空いてるし早くご飯にしようよ」

無理やり話を逸らして部屋から出ると桔梗と百合もついてくる。

「今日の朝ごはんは 何かな?」

「今日は寒いですから温かな雑炊にしたと仰ってましたよ」

「え?雑炊ですか 楽しみ」

雑炊か、アルの家で初めて食べたのが雑炊だったな。上品な味が口いっぱいに広がる雑炊の味は 懐かしさが蘇る。演習中のキャンプ場で出会、アルの番だって認めたくなくて、神様の勘違いだって訴えたけど取り消せなくて。いっぱい悩んだけど、今では 俺もアルを誰かに取られたくないって思えるから不思議だ。

アルを誰かになんて譲れない。今の俺の素直な気持ち。

「楽しみ」

「おはようございますイオリ。なにが楽しみなんですか?」

「父さん、おはようございます。今日の朝食 、温かい雑炊なんだって 楽しみ」

「今日は寒いですから、温かい雑炊は確かに楽しみですね」

「おはようございます。俺の特製雑炊はかなりの自信作だから楽しみにしといてくれ」

食堂から顔を出すローランさんはいつもいい笑顔で食堂で待っていてくれる。
裏戸の続く廊下から顔を出したバランさん。御者から簡単な庭の手入れとなんでも器用にこなしてくれるバランさん、馬のポニー、ヘレンに餌をやりに行っていたのだろ。

「おはようございます。旦那様 イオリ様、今朝は一段と冷えると思っていたら雪が降り始めましたよ」

「おや、本格的に寒くなり始めるのかも知れませんね」

「ええ、今年は少し早い気もしますね」

「今日は 温かい雑炊ですよ。それもローランさんの特製だそうです。バランさんも冷えた体を雑炊で温めて下さい」

かなり自信があるのかローランさんが力こぶを作ってガッツポーズを決めてる。

「それは楽しみですね」

「はぁ~、朝から温かい雑炊が食べれるのは嬉しいですね」

細かな枝を籠いっぱいに入れて運んでたサラさんも話に入って来て 食堂に移動する。

コレが我が家の日常風景になりつつある。ローランさんは元は孤児院で育ったから 全く抵抗がなかったけど、ノットさんルーシーさんバランさんサラさんは戸惑いながらだったが、今ではお客様が居ないのであれば、普通に接してる。きっと貴族らしくない風景だけど 俺は貴族では無いし、父さんも本当の家族になれたみたいで良いですね。と評価してる。

この空間だけでも、貴族らしくなくてもいいのではと勝手に思ってる。だって、俺は父さんの子供になったけど、いずれココを出ていく、その時に父さんが1人でご飯を食べてる姿なんて想像したくない。誰かがでは無く、ここに居る人達と ずっと一緒にご飯を食べて欲しいと願ってるから。







百合と桔梗


寝てる時も警戒は怠るな!父さんと母さんの言葉なんだよ。木の上で生活してても危険はいっぱい有るしね。

僕は優秀だからグッスリ寝てても不審なやつが近づいて来たらバッチリ分かる。

「ピュピュュピュピュュ」

「なんか怪しあ奴が居るよきーちゃん」
「なんだと?どこだ」

きーちゃんが窓から外を見るけど、僕には透視が有るからね。

「あんな奴見たことないよね?」
「さぁーな、鳥は鳥だ」

「怪しい」
「さぁー、散歩ついでに止まった可能性も有る」

「うーん、それなら問題無いけど」
「とにかく私たちが起きててはイオリが気にする 寝るぞ」
「そうだよね。いっちゃん あの男が居ないと寝れないみたいだしね」
「一言 多い」
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