赤い糸の先

丹葉 菟ニ

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やりたい事

今できること 16

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ジロリと 睨まれても居座ってしまったユージは慣れてるのかケロリとしてる。

「はぁー、この後 大変だよなぁ~、更に忙しくなるよ。今が束の間の休息になるなぁ~、イオリもアルベルトに頻繁に会えなくて少し寂しくなるけど我慢してね」

「まぁ~、そうなるでしょうね」

そりぁそうだろう。審議で判決が出たからといっても全てが終わった訳では無いだろう。後処理の書類だとか、いなくなった人の捜索、薬作りを手伝った人、殺人の手助けを手伝った人 、変色死体の検査もするんだろうな。様々やる事がある。

「おい!」

余計な事を言うなとユージを睨んでるけど 忙しくなる事は変わらない。

「大丈夫です。そうだ、たまに差し入れを持ってきてもいいですか?と、言っても たいしたものは出来ませんけど」

「・・・もちろん。でも、今はイオリも 陛下の手伝いで 何かの解読をしてると聞いてる。余り無理をして体調を崩すと私が心配だ」

一応アルにも父さんにも話してるけど 解読だけだから体力を使うわけではない。

「無理しないよ」

「そうか なら楽しみに待ってる」

「羨ましいなぁ~、婚約者からの差し入れ。俺も欲しいなぁー、差し入れ」

「ユージにも作ってくるよ」

「え!ホントに?嬉しいよありがとうイオリ」

またもやユージをジロリと睨んでるけどヘラっと笑ってやり過ごしてる。

「明日にでも 打診すればいいだろアイリーン嬢に。ジェルフラッティ伯爵の令嬢の侍女をしてる。私も一筆書いてやる、あちらは願っても無い申し入れだ 余程の事が無ければ断わられることも無い」

「??ユージの婚約の話なの?」

「そう!まだ打診状態だけど 心根が優しい子なんだ、もし 俺の婚約者になったら仲良くしてやって?!アイリーンって言って たまにド天然入るけど悪気は無くて 突っ走ってしまうけど 見てて飽きない子だから」

まだ婚約者でも無いけど よく知ってる人なんだろう。彼女の話をしてるユージは実に楽しそうだ。

「こんな時だこそ 明るい話が纏まると良いですね」

確かに 俺もそう思うので頷く。

「そうですね、神主様も願ってて下さい。そうしてくれたら、1日も早くいい返事が貰えそうです。では、私はコレで。アルベルト 後で報告書持ってくるよ、じゃ ごゆっくり」
 
「分かりました。良い返事が頂けるように祈っております」

「ありがとうございます。では、俺は仕事に戻ります」

爽やかに出ていくユージと入れ替わりに 若い端正な顔立ちの男性がワゴンを押して入って来た。

「おや、貴方はもしかしてドルージュ家のアラン様ですね。私の隣に居るのは 私の息子のイオリです」

「初めまして伊織です。よろしくお願いします」

父さんには知り合いが多いな。流石は神主様だ。

「イオリは私の婚約者で番だ。アランはわたしの秘書で身の回りの事もしてくれてる、コレからは顔を合わせる事も多くなると思うから覚えてて欲しい」

「アラン・ドルージュと申します。アルベルト様の侍者兼秘書としてご一緒に行動する事が多くありますので宜しくお願いします。ぜひアランと気軽にお呼び下さい」

「そうなんですね。こちらこそ宜しくお願いしますアラン。俺も気軽に伊織とお呼び下さい」

「そうさせていただきますイオリ様。冷める前にお茶をどうぞ」

「いただきます」

入れてもらったお茶を一口飲むとフルティーな甘さが疲れが洗い流される。
自分でもわからない間に かなり疲れてたようだ。

「美味しい」

「ありがとうございます、お口に合って良かったです」

アルも1口 飲むと俺の方に真剣な顔で向き合った。

「イオリ・・・その、一応 私の番だと世間に公表しないと行けないのだが」

発表してもいいかって話をしたいから連れてこられたんだ。

「う・・・ん。大丈夫」

あんな 場違いの場所で アルにあんなこと言っちゃったし、隠せないけど いざ 改まって聞かれると恥ずかしい。
でも、アルが俺ではない誰かに押し倒しておなじ男だから想像も逞しく あれやこれやと 想像してしまったら ふざけんな!って 頭に血が上ってしまったら 歯止めが効かずに どんな場所かも忘れてしまったのだ。

「あの、さ。・・・怒らないの?」

「怒る?誰を??」

「だって、場所も考えずに あんな・・」

大きな手が俺の頭を何度も撫でてくれて最後に手の甲でスルリと頬を撫でたアルは 柔和な顔に微笑んで怒ってないって分かった。

「イオリの告白で あの者達の自白が大勢の前で取れた。誰もイオリの行動を咎める者はいない。それに、私としては 大勢の前で私がどれ程イオリ愛してるか宣言出来て嬉しかった」

アルから目が離せない。だってアルの瞳は俺だけを写してるのがハッキリと見えるから。
ゆっくりと アルが近づくのが分かるけど目を綴じることも逸らすことしたくない。

「はい、そこまで。王都中に発表する前に宴と披露宴を開かないといけませんね。私も初めての事で 分からないことが多いので、ソフィア様のお力をお借りしたいと思います」

父さんの声で意識が猛ダッシュで戻って来ると脳と合体する。ここに父さんとアランがいた!!!!

なんてこった、なにかの型が外れまくるな今日は。もぅ恥ずかしさしかない。
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